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変形するアップルストア!? 新デザインの旗艦店ユニオンスクエア店で色々聞いてきた

2016年06月15日 10時07分更新

文● イトー / Tamotsu Ito

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 WWDC2016開催に合わせて、5月にオープンしたばかりの新デザインのアップルストアがプレス向けに取材公開。デザインと、これまでのアップルストアとは異なるコミュニケーション設計のコンセプトなどを聞いてきた。

アップルストア ユニオンスクエア店。この角度から見ると、建物の右側面が見える。アップルロゴがあるのはこの一角だけ。イメージ的にはiPadのスペースグレイのような質感。

別の角度から。こちらから見ると、もはや電気屋にも見えない。恐ろしくデザインにこだわった(そしてお金のかかった)建物であることだけは一目でわかる。

 サンフランシスコのアップルストアは、そもそもユニオンスクエアから南に数分南に下ったBART(地下鉄)のパウエルストリート駅前にあり、そこが移転する形で、ユニオンスクエアのすぐ脇にオープンしたという経緯がある。市内のド真ん中に位置するため、WWDC取材やサンフランシスコ滞在のたびに足を運んだ思い出深い店舗だ。
 この旧サンフランシスコ店はiPhoneがまだ影も形もなかった2004年にオープン。以来、12年の間に2000万人の来客があったという。ちなみにアップルストアは全世界18ヵ国に480店舗あり、そのうち60パーセントがアメリカ国内のストアである。アップルストアという組織は思ったより巨大で、全従業員は6万人もいるらしい。 

 アメリカに旅行や出張経験がある人は知ってるかもしれませんが、観光地の近くの大きなショッピングモールに行くと、かなり高確率でアップルストアがある。日本のように特定の場所にしかない、という印象はない。

 ユニオンスクエア店は最新のアップルストアのデザインが取り入れられ、トレードマークのロゴが見えないため離れてみると何かのブティックのように見える。ちなみにロゴがどこにあるかというと、外壁の側面にある。同様のデザインは中国のアップルストアを含め世界に4店舗存在する。今後、新しく検索されるストアは基本的にこのデザインフィロソフィーを基調にしていくという。

 外観の特徴は、何といってもロの字型のボックスの両側面を巨大なガラス壁で塞いだデザインだ。どれくらい巨大かというと、ガラス壁の高さは最大の場所で42フィート(12.8m)。しかもこのガラス壁は、実は巨大な可動壁なので、どちらかと言えば巨大で重厚なガラス戸(!)なのであり、変形するアップルストアなのだった。

 一年を通して雨天が少ないカリフォルニアの気候を存分に取り入れ、屋外と屋内の境界をおぼろげにして、中と外がわからないような空間演出を狙っている。
 訪問時は天気が良かったため、実際にガラス壁が自動ドアのようにゆっくりと開くところ見ることができた。 

2Fからの写真。ゆっくりとドアが開いていく。

フルオープンになるとこんな風に。開かない部分も透明なガラスがはまっているので、まるで壁がないかのように見える。

 こうした室内外の境界を取り除く演出には、室内に置かれた背の高い観葉植物も一役買っているという。ガラス壁を開け放つと、室内には優雅にカリフォルニアの乾いた風が通り抜ける。街路樹のように背の高い観葉植物が風に揺られる様子を見ていると、建物というより公園みたいなのだ。

 ちなみにこの観葉植物(名前を聞くのを忘れてしまった)は、太陽光を十分に取り入れられるとはいえ屋内であっても、枯れない植物を選んだそう。植木鉢(というには大きいが)はアップルとデザイン会社共同によるオリジナルのデザインで、よく見ると、屋内用、屋外用がある。屋内用は座って椅子代わりにできるよう、レザー素材を張ってある。

アップルとデザイン会社の共同デザインの鉢。ある意味、アップル製品といえますね。売り物じゃありませんが。

見慣れたアップルストア的な陳列にも細かな工夫

 陳列はパッと見、いわゆるアップルストア!という雰囲気の陳列だけど、よくよく聞くと従来の店舗とは少しずつ違う。まず、トレードマークの木製の長テーブルは、従来のモミジからスペシャルオークの変更されている。デザインも変更されていてジーニアスバー改めジーニアスグローブにある机には、デザインされた電源タップもついている。

ストア店内。見慣れた木目の長テーブルだが、よく見るとデザインが違っている。また、奥の壁面にあるケースカバーの陳列も日本でよく見るものではなく、すべて開封した製品そのものの展示。触って質感や光沢感が確かめられる。

1Fを別の角度から。右の歩道を見ると、オリジナルの植木鉢の屋外使用が置いてある。

 陳列に関しては、よく見ると開封した状態で、実物を見て触ってわかる展示になっている。アップルストアにはアップル製品とその周辺サービスのショーケースという側面もあるので、今までは触れなかったものも来客に試してもらえるように、という考えだという。陳列商品は概ね3ヵ月ごとに見直され、たとえばiPhoneやiPadのケースなんかは、季節を考慮した色合いのセレクトをしていると言っていた。

 2Fの半分はワークショップができる大きなスペース、もう半分はジーニアスグローブと、商品陳列棚という配置だ。
 ワークショップ用スペース側の壁面には10mはあろうかという巨大なLEDビデオウォールが設置されていた。ビデオウォールはただの派手なデジタルサイネージではなくて、ワークショップの時にはここにiPadの画面などを表示して"見える化"しながら習熟を深めていくような使い方をするんだとか。
 また、iPad Proのアップルペンシル機能を使って、手元のiPad Proで描いた絵をリアルタイムにビデオウォールに反映させる、テクノロジーとライブアートを組み合わせたようなイベントもやっている。
新デザインのアップルストアにはビデオウォールが基本的にセットされるそうなので、日本で新たな旗艦店がオープンするようなことがあれば、この巨大なウォールもやってくるということになる。 

iPhoneが並んでいる壁面ポスターのようなものがビデオウォール。実際には何枚もの静止画が一定時間で切り替わったり、動画が流れたりする。

再生可能エネルギーで運営するグリーンアップルの取り組み

 ユニオンスクエア店の特徴のひとつに、最新のグリーンアップルの取り組みによる、100%再生エネルギーによる運営がある。
 天井に巨大な太陽光発電パネルを設置して、電力は基本的に自家発電で賄うほか、壁を開いて外気を取り入れることで、室温を省電力に低く保つことができる、また、床下には床暖房のような水チューブが敷かれていて、大理石風の素材を通して室内を冷却したり、また逆に温めたりできる。ちなみに床材は、クパチーノ近郊に建設中のアップル"UFOみたいな円盤型"新キャンパスにも採用されるものと同じだとか。
 それにしてもこれほど巨大な店舗が、特に買電をせずに運営できているというのは素直に驚きだ。 

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