東京大学では、学生や教職員が利用するPCや各種サービス一式を教育用計算機システム(ECCS)と呼んでおり、これを4年一度リプレースしています。2016年度はその更新時期にあたり、今回も入札の結果、クライアントマシンにはMacが選ばれました。東大では、2004年以来3期12年に渡ってMacが導入されてきましたが、、今回(ECCS2016)もこれが継承されたことで4年後の2020年3月(2019年度)までは引き続きMacが使われることになります。このあたりは、前回の取材記事で詳しく紹介しているので、文末に張ったリンクから関連記事をチェックしてください。
東大での取材で個人的にかなり気になったのが、もう変態といっていいほど特殊なMac。電源ボタンを押してもすんなりとOS Xが起動するわけではありません。Macハードウェア上で、UEFI(Unified Extensible Firmware Interface)がMacの起動プロセスを制御し、その上で「vThrii Seamless Provisioning」というハイパーバイザー型の仮想化システムが、さらにその上でOS XやWindowsが稼働するという仕組みになっています。今回は、この仕組みを詳しく知るために、開発元であるイーゲルに取材に行ってきました。
変態Macはこうしてできている!
このvThriiがまずスゴイのは、その起動スピード。vThriiが組み込まれたマシンは、初回起動時にはOSはローカルストレージに入っておらず、サーバーからOSの起動に必要なデータを含むブートイメージをダウンロードする仕組みです。こう書くと結構な時間がかかると思ってしまいますが、実際に開発元のイーゲルでデモを見せてもらったところ、50秒程度でサーバーからのブートイメージのダウンロードとOS Xの起動処理を済ませて、いつものOS XのFinder画面が現れました。なお、サーバーから一度読み込まれたブートイメージはローカルストレージに保存されるため、2回目以降は起動時間が15秒程度と超高速になります。通常の起動プロセスではないにもかかわらず、ローカルストレージがハードディスクだった数年前のMacよりも確実に高速かと思います。
もちろん、この高速起動を実現する環境を構築するには、vThrii以外の設備投資が必要です。数百台のマシンを稼働させるなら、クライアントマシンのネットワーク環境はギガビットイーサネット、サーバー側は10ギガビットイーサネット相当が必要になります。イーゲルによると、クライアントマシンのストレージもボトルネックになるので、ローカルストレージもSSDが望ましいそうです。実際に東大に納入されていたiMacは4Kでない普通のiMacでしたが、標準構成ではハードディスクである内蔵ストレージをSSDに変更していました。この変更には、OSの起動時間を短縮する狙いもあったようですね。