FacebookやTwitterへの投稿は、Webサイトに置いたコンテンツへの誘導が目的のことがあります。しかし、Instagramは「SNS」といっても、公開する写真は「コンテンツ」そのものです。Instagramでは、良質なコンテンツ=写真を用意して、1つ1つの投稿でファンの支持を得る必要があります。投稿するコンテンツの質が悪ければ、提供する商品やサービスの魅力を伝えられないばかりか、長い時間をかけて構築してきたブランドの世界観を壊しかねません。
そこで今回は、企業やブランドの世界観を表現し、商品の魅力を伝えるのに役立つ写真撮影のポイントを、国内外の人気アカウントの傾向から解説します。
1.写真のトーンを一定に保つ
Instagramのアカウントでブランドの統一された世界観を表現するには、写真のトーン(色調、明度と彩度)をそろえることが大切です。Instagramのユーザーは、そのアカウントをフォローするかどうかを、ホーム画面を見て判断します。ホーム画面で見た写真のトーンがばらばらだと、ブランドイメージとのギャップが生まれ、ユーザーに違和感を与えてしまうでしょう。 例えば、「東京ディズニーリゾート」の公式アカウント(@tokyodisneyresort_official)は、テーマパーク内の風景を中心に、ファンタスティックな写真を投稿しています。写真の投稿テーマをしっかり定め、守るだけでなく(連載第2回を参照)、トーンをそろえることで、企業理念である「夢と感動」の世界観を表現しているのです。
一方、アメリカのインテリアショップ「west elm」(@westelm)の公式アカウントも、写真のトーンをきちんとそろえているアカウントの好例です。west elmのアカウントは、家具や食器などを被写体とした写真を多く投稿しています。彩度をやや抑えた落ち着いたトーンを基本としながらも、色味のある写真をときどき差し挟むことで、アクセントのあるホーム画面を構成しています。
フィルターを活用しよう
トーンをそろえるには、Instagramのフィルター機能を使うのがもっとも手軽です。フィルターを上手に使うと、アカウントの世界観を簡単に統一できるうえに、専門的な技術なしに、写真のクオリティをアップさせたり、おしゃれな雰囲気を出したりできます。
例えば、前に挙げた「東京ディズニーリゾート」のアカウントは、白みがかったセピア調のトーンの写真が多く、ノスタルジックで暖かみのある雰囲気に統一されています。また、スッキリしたシンプルな写真との印象を受ける「west elm」の投稿は、彩度を抑え、ビンテージ調になるように加工されています。
このように、特定のフィルターを使うことで、写真のトーンに統一感を持たせ、ブランドに合ったアカウントの雰囲気を作れるのです。
人気はセピアフィルター
Instagramには豊富なフィルターが用意されていますが、中でも人気なのが、 写真を暖かみのあるセピア調に調整するフィルターです。デジタルマーケティング分析ツールを手がけるTrackMavenの調査によると、「Hefe」や「Lo-Fi」といったフィルターを使うと、平均よりも5%以上よい反応が得られるとわかっています。
次の画面は、フィルターを適用する前の状態の写真です。
例えば、「Lo-Fi」「Mayfair」のフィルターをかけると次のように加工されます。
モノトーンを効果的に使う
フィルターを使ってトーンをそろえたアカウント構成の中に、異なるトーンの写真を意図的にバランスよく混ぜると、ホーム画面にアクセントを加えられます。例えば、モノトーンのフィルターでは、写真のコントラストが強調され、全体の印象が引き締まって雰囲気のある写真になります。
モノトーン系のフィルターでは、中心が白く明るくなり、柔らかい雰囲気が出る「WILLOW」フィルターや、被写体がくっきり際立つ「Inkwell」フィルターといったフィルターがよく使われています。
ただし、フィルターの過剰な使用は、写真のディテールが失われてしまうことにもつながります。適用前後の写真を見比べながら、調整していきましょう。
2.マンネリ化しない「アングル」を意識する
トーンだけでなく、写真の「構図」にも気を付けてみましょう。いつも似たような構図だとマンネリ化して面白くないので、ちょっと違ったアングルを意識してみてください。
例えば、「colerise」さん(https://www.instagram.com/colerise/)は、建物をごく低い位置から見上げているようなアングルや、被写体と目線を合わせたものなど、ユニークな写真を投稿しています。
低い位置からであれば被写体の大きさや高さが強調されますし、被写体と目線を合わせると表情をよくとらえた、イキイキとした写真に仕上がります。遠くからの写真が多ければ、被写体に近づいてアップにしてみたり、少しカメラを傾けてみたり、被写体の真上や真下から撮ったりと、アングルを少し変えるだけでも新鮮さを出せるでしょう。
また、被写体を中心からずらしたり、背景をうまくぼかしたりしてみると、上級者が撮った写真に近づきます。例えば風景写真であれば、夕日をただ撮るのではなく、「湖面に映った夕日」を画面の中心に据えるなどの工夫ができるでしょう。
アカウントのホーム画面で見たときの印象も忘れずにチェックして、面白みのあるアングルで撮ってみましょう。
3.メッセージを盛り込む
決まった被写体をただ撮るのではなく、1枚の写真の中に意識的に盛り込みたいメッセージを考えて撮ることで、多くの人の共感を得る写真になります。
東京ディズニーリゾートのアカウントには、次のような写真があります。パークの中をキャラクターが歩いている写真で、キャプションには「The beginning of a perfect day! 今日も楽しい一日がはじまりそうだね♪」とあります。
誰もいない、静寂に包まれた朝のテーマパークを捉えた貴重な1枚ですが、この写真を見たファンは、「これから1日を楽しく過ごしていこう」「ディズニーのキャラクターたちのように仲良く過ごそう」といったメッセージを読み取れるでしょう。
この例のように、伝えたいメッセージを込めたキャプションを先に考えておくと、どんな写真を撮るべきか考えやすくなります。実際には、被写体やバックの背景と内容、撮影する時間帯を組み合わせて表現するとよいでしょう。
例えば食器の写真であれば、皿に載せる料理、背景にする家具、一緒に映り込ませる小道具などによって、メッセージを表現できます。投稿する前にも、意図したメッセージが写真から感じられるか考えてみましょう。
4.自然光を使いこなす
自然光を使ったり、光の当たり具合を変えたりすることで、世界観やテーマをうまく表現できます。例えば、「withhearts」さん(https://www.instagram.com/withhearts/)は、自然光をうまく使った、優しい雰囲気の写真が多く投稿されています。
1枚だけでなく、どの写真も全体的に柔らかい雰囲気で統一されています。自然光を利用する際は、写真を撮る時間が重要です。正午近くの直射日光はまぶしさがきついので、写真の中の自然な色を吹き飛ばしてしまいます。withheartsさんのような優しい風合いの写真を撮るには、朝と夕方のタイミングの、柔らかい光を利用します。雲には光を和らげる効果があるので、撮影時の天気と相談しながら上手に利用してください。
ゴールデンアワーを狙う
日の出直前や日暮れ前の時間は、日光がもっとも暖かく柔らかくなることから、「ゴールデンアワー」「マジックアワー」と呼ばれています。写真を撮るのに最適な時間とされ、次のような雰囲気の写真が撮れます。
位置情報からゴールデンアワーを計算して教えてくれるサイトやアプリもありますので、うまく撮影できるタイミングを計画してもよいでしょう。
5.商品写真は「企画」ありき
Instagramはアートな側面が強いSNSなので、カタログ写真をそのまま投稿するとユーザーに敬遠されてしまうことがあります。そこで、商品写真を投稿するときは、商品を上手に使った印象的な写真を企画してみてください。
例えば化粧品ブランド「Benefit」のアカウントでは、商品のあるおしゃれでキュートな光景を中心に投稿し、ファンから多くの反応を集めることに成功しています。
少しの工夫で魅力をアップ
同様に、化粧品を題材にすると、ただまっすぐ並べるのではなく、斜めにしてみたり円を描くように置いてみたりと、少し工夫するだけでも、商品の魅力が伝わる写真になります。
以下の写真は、化粧品ブランド「NARS」の公式アカウントです。
また、小物類を添えることで、より洗練され、雰囲気のある写真にできます。例えばお菓子や花をそばに置く、グラスに被写体を入れてみるといった具合に、小物類を使うとより印象的な写真にできるので、試してみてください。
以下は「インテグレート」の公式アカウントの写真です。
意外性のある商品写真を企画する
ファンにとってはすでに見慣れた商品であっても、意外性のある企画によって注目を集め、反応を得られます。例えば、化粧品の写真であれば、以下のようなものが考えられます。
●「化粧品パッケージbefore/after」
何も施されていない化粧品のパッケージと、かわいくラインストーンなどでデコレーションしたパッケージの写真を並べて、before/afterとして紹介する。
●「動物と一緒に撮る」
化粧品のボトルを動物の上に乗せたり、ボトルと一緒に動物を撮影したりする。
●「もしもこれが化粧品だったら…」
有名絵画や写真の人物に似せた細工を化粧品で表現してみたり、イラスト内の人物のメイクや服の色と化粧品をリンクさせてみたりする。
※
企画写真は人目を引きやすい反面、あまり奇抜すぎたり、俗っぽさ、ありふれた雰囲気が押し出されたりしていると、ブランドの世界観を破壊し、ファンに敬遠されてしまうこともあります。ユーザーが「おもしろい!」と感じ、思わず「いいね!」したくなるような写真を意識しましょう。