このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 次へ

みなさん、ここはひとつ音ではなく、かっこよさにお金を出しましょう

見た目超最高、JC-120のBluetoothスピーカーは完成度高い

2016年02月28日 12時00分更新

文● 四本淑三

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

自宅に置きたくなる初めてのジャズコ

 そうです、JC-01は高いんです。

 まず、JC-01と同じ2万円台前半で買えるBluetoothスピーカーといえば、BOSEの「SoundLink Mini」が盤石の人気を誇っており、同価格帯でまともに戦える製品はありません。もう、はっきりと言いましょう。再生能力はJC-01よりSoundLink Miniの方が格段に上です。特に低域の吐出量は全然かなわない。

 そしてJC-01の187×69×97mm/650gという大きさ、重さで比べると、Ankerの「プレミアムステレオスピーカー Bluetooth 4.0」の210×60×60mm/617gと大体一緒。こちらは堂々10×10Wの出力で、まさしく安価な6000円で買えてしまいます。

 いまポータブルBluetoothスピーカーは上をBOSEで抑えられ、下は5000円前後の低価格製品が攻め上げている状態。音質では太刀打ちできず、コストパフォーマンスでも勝負できない。これで多くのBluetoothスピーカーが敗れ去っていったわけです。

 となると、JC-01の置かれたポジションというのは、ジャズコそっくりのルックス以外に見出し得ません。この価格の半分以上はその見た目に払うお金と考えていいです。

 ただ、楽器メーカーの作るオーディオ製品なのに、それでいいのかと言われたら、確かにどうなんだろうとも思うわけで、ちょっと冷静になって、なぜ私はJC-01の見た目にアガってしまうのかを考えてみました。

 実は、JC-120を個人で所有している人というのは、けっこう珍しいわけです。120Wという出力やサイズは一般家庭には大きすぎる。それにリハスタやライブハウスならどこでも普通に置いてあるので、自分で持っている意味がない。経時変化の少ないアンプなので、どこのJC-120も大体同じ音で鳴る。

 それこそがJC-120が業界スタンダードになった理由なのですが、ゆえに個人の物欲からは切り離されてしまった。ないと絶対に困るけど、自分で持っている意味がないという点では、電車や飛行機に近いもの。おそらくは、それがJC-120という存在です。

 だから、こうして小さくなって机の上にやって来られると、とてつもなく可愛らしく見えてしまう。電車や飛行機に所有欲はわかなくても、ミニチュアならホイホイ買ってしまうような心理が、どうもこのJC-01には働いているように思えます。

 もうひとつの理由は、長年築かれた製品イメージでしょう。実はマーシャルもBluetoothスピーカーを作っています。JC-120と並んで有名なギターアンプを作っているイギリスのメーカーです。

 マーシャルが主力とするギターアンプは真空管で、こちらはJC-120と違い、ボリュームを上げた分だけ歪みます。スピーカーの特性もけっこうドンシャリ。オーディオ的には全然好ましくないわけですが、音がカッコ良ければそれでいいんです。かくいう私も、ギターを弾くならマーシャル派です。

 ただ、それがアダというか、マーシャルのBluetoothスピーカーが音質的に劣っているはずもないのに、マイナス方向にイメージが作用してしまうわけです。その点、クリーンと空間系エフェクトで売ってきた、JCシリーズの方が有利。そこを併せて、JC-01の商品企画は完璧です。

 ここはひとつ、見た目にお金を払いましょう。音のいい安いスピーカーならほかにいくらでもあります。

 欲を言えば、コーラスの替わりにサラウンド回路を内蔵して音場が広がるとか、アンプシミュレータを内蔵して練習用アンプとして使えたりするような仕掛けがあると、なお良かったのですが、それは次回作として期待することにしましょう。

取材協力

スタジオ:Studio Flight
住所:東京都府中市緑町1-13-8 ホワイトハウス1F
電話:042-333-7151
営業:平日10:00~0:00/土日祝9:00~0:00

詳細はウェブサイトにて



著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ

■関連サイト

前へ 1 2 3 4 次へ

カテゴリートップへ

週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中