日本通信は22日、事業戦略発表会として、総務省「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」にて議論された内容に関連し、同社の戦略の説明が行なわれた。
総務省のタスクフォースは
「MVNO規制緩和第2弾」
前述のタスクフォースについては主に携帯料金の低料金化に注目が集まったが、実際にはMVNOにとって大きな変化をともなう内容が含まれている。これを同社代表取締役社長 福田尚久氏は「一言で言えば、MVNO規制緩和第2弾」と表現する。
日本通信は2007年にNTTドコモにレイヤー2接続の申し入れを行なった。しかし、なかなかその要望が受け入れてもらえない中で、総務大臣裁定で決着(これがMVNO規制緩和第1弾)。また月額980円のSIMをいち早く提供するなど、格安SIMの普及に一役買ったことを自負する。
一方で同社は2007年の段階から、法人利用やM2M、マルチネットワークによる利用促進を狙っており、格安SIMはあくまでショーケース的なものとしての要素があるという。それに加えて現在では、格安SIMに多数の企業が参入して価格競争が激しくなっており、「サービス多様化競争」へと戦略の移行を狙っている。
その際に障害となるのが「接続料算定問題」「技術的制約」の2つなのだが、今回のタスクフォースで解消の方向が見えてきたという。
まず接続料問題は、接続料の算定方法の透明化と届出が求められるようになった。接続料が低下することももちろんだが、「しっかりと中身のある形になるのではないか」(福田氏)と期待する。
無線専用線を提供する黒子になるためには
不可欠なHLR/HSSの開放
それよりも大きな影響があると福田氏が考えるのが「技術的制約問題」の解消だ。特にHLR/HSSと呼ばれる、SIMの契約や位置情報を管理するためのシステムが「開放を促進すべき機能」としての扱いで、まずは事業者間の話し合いからのスタートとはいえ、開放が進められる。
HLR/HSSの開放が行なわれると、MVNO側が独自にSIMを発行できるようになるほか、他ネットワークや海外キャリアのネットワークと組み合わせるなど、より自由なサービス設計が可能になる。そして日本通信は無線専用線を提供する事業者として、他のMVNOやメーカー、金融機関などにモバイルソリューションを提供する黒子に徹する(同社では「MSEnabler」という造語でその役割を表現する)ことを目指す。
同時にMSEnablerとしての事業展開には、HLS/HSSを持つことで可能になるサービス多様化が不可欠だとする。たとえば個人向けサービスでは音声通話。主要キャリアのサービスは音声定額がほぼセットになった状態だ。データ通信ではMVNOも主要キャリアに対して競争力を持つが、音声サービスが絡むとそうでなくなるため、「MVNOが今以上に伸ばすためには必要な要素」であり、実際に他MVNOからも期待されているという。
HLR/HSS開放については、同社は数年前から申し入れていたことであり、本来であれば事業者間でビジネスベースの交渉で進むべきだったのが、「総務省による規制緩和という形で開放されたことは残念」と語る。もっともこれにより、日本通信が創業以来目指していた方向性が実現可能になる。それはニュースリリースにも現われており、「爆発的な経済創出効果を生み出します」と大きな期待を示した。
2015年度の業績は大幅な下方修正
なお、日本通信は同日、2016年3月期の連結業績予想を修正している。2015年4月時点での予想は売上高68億3000万円、経常利益は10億9000万円だったが、今回の修正でそれぞれ43億1000万円、マイナス15億2500万円と大きな下方修正となった。
これについて同社では、MVNO業界が格安SIM市場に集中し、期待したサービス多様化が進展しなかった点。また、VAIO Phoneを完売するのに必要な在庫評価減などを理由として挙げている。