お洋服が好きだ。ショップで好きな服を見つけると衝動がおさえられなくなり、7~8万円のお金をぽんぽん出してしまう。しかし、いざ家に帰って自分の姿を鏡で見たとき「えっダサい……」と思ってしまうことがある。この絶望感たるや、壮絶なものがある。共感してくれる人がいたらうれしい。
ダサく見える理由は往々にして「サイズ」にある。
自分の体にぴったり合った服を着て、しゃんとした姿勢をしていれば、デザインがどんなにやばくても、色の組み合わせが絶望的でも、生地感がめちゃくちゃチープでも、ふしぎと「そういうおしゃれ」に見えるのだ。そして逆もまた。わかっちゃいるけどやめられないのだ。植木等なのだ。
全身15ヵ所のサイズを無料採寸
渋谷に23日オープンする「LaFabric(ラファブリック)」は、わたしをダサ地獄から救い出すお店だ。オーダーシャツやオーダースーツを作る初心者向けのショップで、最初はプロが無料で全身15ヵ所のサイズを採寸してくれる。
首まわり、肩幅、二の腕、袖丈、手首まわり、着丈、バスト、ウエスト──要はわたしの「サイズ」を正確に知ることで、自分を覆うぴったりの「ケース」を買えるようになるというわけ。気軽にお願いできるのが便利だ。
ラファブリックはもともとオンライン専業のテーラーブランドだ。今までの仕立屋とちがって、店を持たず、サイトで直接オーダーというのが強みだった。複数の契約先工場を抱えることで、値段も比較的安めにあげられている。
しかし、やっぱりオンラインでは生地感がわからない。コート・スーツ・シャツ・ネクタイ・ポケットチーフ・ジーンズなどの生地あるいは完成品を見られるようにするため、渋谷に店を出すことにしたというストーリーだ。
もちろん店員もいるので「面接に着ていく服がない」「友だちの結婚式に着ていく服がない」「ちゃんとした店に行くときの服がない」といった悩みの相談にも乗ってくれる。わたしは店員と話をするのが苦手だが、ありがたい。
身の丈にあった服を買うのはかっこいい
ラファブリックのデザインはとてもシンプルなので、モードなお買いものは望めない。代わりに「これくらいは持っていないとね」の服をぴったりサイズでそろえられる。案外若い子でなくても持ってないものはあるものだ。
大量生産・大量消費の時代、わたしたちは「S・M・L」でお買いものをする。ブランドはそれぞれ客層に合わせてサイズ感を作るため、たとえデザインや生地感やシルエットが好みでも、自分に合っているかどうかはわからない。
流行に合わせて大量生産された商品をシーズンごとに買っては捨ててをくりかえす時代。その前には、仕立屋に注文を出して「自分だけの一着」をつくり、それを繕いながら長ーく着続けるという時代があったはず。
最近はユニクロもオーダーシャツを始めたし、ナノ・ユニバースというブランドはなんと3Dスキャナーを使って採寸をしているそうだ。いろいろな技術進化でオーダーメイドがやりやすくなったいま、本当の意味で「身の丈にあった服を買うのがかっこいい」という時代がきているのかも。