このページの本文へ

シェアされる動画を作るための日本人への7つの提案

2015年11月18日 16時00分更新

文●Web Professional編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
本文印刷

動画配信プラットフォーム企業・アンルーリーが、東京都千代田区にある英国大使館で開催した日本法人設立と日本市場向けに調整された同社の中核技術SharaRankの説明会では、動画広告の勝ちパターンに欠かせないノウハウが多く語られた。

会場には広告業界をはじめ、さまざまな分野の有力者が集まった。挨拶に立った駐日英国大使館のエスター・ウイリアムズ一等書記官(貿易担当)は、「イギリスは伝統を重んじる国であると同時に、イノベーションの国でもあります。(ロンドン・テックシティ生まれの)アンルーリーには期待しています」と述べた。

来日したUnrulyのスコット・ボタン共同CEO兼創業者は日本進出の理由を「日本は世界第3位の経済規模がありますが、人口比で見ると動画広告費はイギリスよりずっと少なく、伸び代が大きい」と説明した。

Unrulyのスコット・ボタン共同CEO兼創業者

ただし、動画広告にも課題はある。

「ダブルクリックの資料によると、デジタル広告のCTRは2002年の2.4%から2015年には0.2%にまで下がりました。飛行機事故が起きたとき、生き残る可能性のほうが475倍も、クリックされる確率よりも高いのです。とはいえ、動画広告にも問題はあります。テレビ広告からへの移行が進んでいますが、61%の動画広告は実際には視聴されていません。だから、ユーザーが実際に見て、シェアされる動画を作ることが重要なのです」

デジタル広告のクリック率は飛行機事故で助かる確率の475分の1

では、どうすれば動画はシェアされるのだろうか。同社のイアン・フォレスター インサイトディレクターは、日本の動画シェアの状況を調べるため、2013年10月からと2014年10月からの1年間ずつ、企業別の動画シェア率を集計した。2年連続でトップだったのが日清食品だ。

Unrulyのイアン・フォレスター インサイトディレクター

日清食品の「サムライ in ブラジル」のビュー数は2013年10月からの1年間で約898万回、シェア数は約28万、シェア率は約3.1%。個々の動画別に見ても同期間ではシェア数トップの動画だ。

2014年10月からの1年間でシェア数トップだったのはコカ・コーラの「クリスマスは大切な人のスマイルが見たいのう♪」(現在、当該動画はYouTube上にはなく、Facebook上で視聴できる)だ。同期間のビュー数は約228万回、シェア数は約4万、シェア率は約1.7%だ。

どちらの動画も優れているからこそ多くシェアされ、視聴回数も多いが、日清食品の動画は、コカ・コーラの動画よりも約7倍シェアされ、約4倍再生された。この違いこそ、シェアされる動画の威力だ。

大企業の動画広告は、テレビに強い広告代理店のクリエイティブチームが、テレビのノウハウをネット動画向けにアレンジすることなく制作される傾向がある。タレントを起用し、お決まりの挿入歌できらびやかな印象の映像を演出し、マーケティングメッセージを抽象的に伝える15秒、30秒の映像が出来上がる。広告キャンペーンの効果指標は、テレビ広告で使われるGRP(Gross Rating Point:視聴率×広告表示回数)の類推で、再生回数が使われることが多く、シェア数は参考値扱いのことがまだ多い。

しかし、動画広告で先行する海外の主流は、巧妙なストーリーで共感を生み出す数分間の動画で、YouTubeやFacebookでシェアが再生産されるストーリーになっている。

動画広告のシェアは初めの数日間に集中する。この期間に再生回数を最大化するには、シェアによって認知を拡大するのが手っ取り早い。シェアされることに集中すれば、再生回数は結果として多くなることが分かっているので、海外の動画広告は再生回数ではなく、シェア数をKPIにする。アンルーリーのSharaRankは、この考え方をさらにすすめて、シェアのされやすさ、わき起こる感情、ブランド想起などを含めて指標化したものだ、となれば、動画広告への影響力は絶大だ。

動画のシェア数が伸びるのは最初の数日間の傾向が強まっている

実際、日清食品が完全に日本人向けに日本人がシェアする感情に訴えたのに対して、コカ・コーラは挿入歌こそAIの『ハピネス』を使っているが、ほぼ全世界で共通の動画素材を使っており、この違いがシェア数、視聴回数の差を生んだ、というのがフォレスター氏の見解だ。

「日本人の感情反応は世界平均よりも約3倍強く、シェアする可能性は高いにもかかわらず、シェアするモチベーションは世界平均の約6分の1しかなく、最低水準。日本の動画広告は、日本人向けに作らなければ成功しない」

アンルーリーのShareRankは、動画の「視聴されやすさ」を事前に計測することで、動画の制作段階でプロットや訴求ポイントを変更したり、配信先ターゲットをもっとも反応が強い層に絞り込んだりすることにも使える。フォレスター氏が以下にあげる7点は、ShareRankの採用でより効果的になるが、普遍的な法則でもある。

1.シェアされやすい動画は、最後まで視聴され、再シェアを生み、ライバルを打ち負かせる
Create sharable hero content to gain cut-through versus competitors.

動画はシェアされることで再生回数を爆発的に増やせる。そもそも再生されればよいという考え方を改め、いかに最後まで視聴し続けるか、シェアする動機をどう用意するかに気を遣ったほうが、結果的に再生回数が伸び、競合が悔しがる。

SharaRankは動画がもたらす感情に注目し、シェアを指標化した

2.シェアの伸びは最初の数時間で決まる
Support sharable hero content with paid views to drive shares.

動画の再生回数は初めの数時間で勢いがほぼ定まり、数日間しか勢いは持続しない。想定した再生回数に届くまで広告費を使い続けるよりも、初めの数時間、数日間に広告費を集中投下したほうがずっと効率的である。

3.動画に感情的に反応する層に配信するのが効率的である
Identify the subgroup of your target audience with whom the video will emotionally resonate most strongly and focus distribution on them.

ユーザーにはそれぞれ個性がある。動画が訴える感情表現にもっとも強く反応する層を見極め、広告を配信したほうが費用対効果は高くなる。

4.海外本社制作の動画を使い回さず、日本人向けに作れ
Create content specifically for Japan - repurposing global videos does not work in Japan.

海外と日本人では、強く反応する感情、シェアする動機が異なる。本社が全世界の市場で汎用的に使えると考えて制作した動画も、日本国内では通用しないことがある。日本人向けに動画を作った方がシェアを生みやすく、視聴回数も伸びやすい。

5.滅多にシェアしない日本人がシェアするときの動機に注目せよ
Be aware that eliciting social motivations is hard in Japan, with the unique Japanese culture perhaps a barrier to sharing - focus on those that Japanese are most likely to feel: Opinion Seeking, Shared Passion and Social Utility.

日本人は諸外国に比べて動画をシェアしない傾向にある。しかし、他の意見を聞きたい、同じ興味関心を持つ人にシェアしたい、といった動機に注目すれば、シェアされやすい動画にできる。

6.ブランドメッセージが伝わりやすい感情を意識せよ
When creating content, select the psychological responses that best communicate your brand message and brand vales, and evoke these as intensely as possible in your target audience.

ブランドメッセージを映像として表現し、しかもシェアされるには、楽しい、面白いといった感情のうち、どれが自社のメッセージにふさわしいかを検討しなければならない。

7.動画でブランドを想起するか、購入意向が高まるか確認せよ
Focus on brand integralness and consider branding early in the video to drive brand recall and purchase intent.

シェアされれば視聴回数が増える。しかし、動画広告の本当の目的は、企業のメッセージを消費者に伝えることだ。感動もシェアされる動機もあるが、ブランドの印象は残らなかった、では意味がない。クリエイティブの出来に集中してしまい、肝心のことが忘れられていないか確認しよう。

動画広告は企業の取り組みに差が出やすい分野だ。アンルーリーのようにシェアを科学的にとらえ、指標として制作前から助言してくれるサービスは他に例がない、といってもいいだろう。日本語での問い合わせは、メールで受け付けている。

Web Professionalトップへ

この記事の編集者は以下の記事をオススメしています