ハイレゾ収録のサラウンド音源にこだわる新進レーベルHD Impression。その第3弾配信が、先週からe-onkyo musicで始まっている。納品直前、制作作業を進めるHD Impressionの代表・阿部哲也氏のお話を聞きながら、オンキヨーの試聴室でそのサウンドを確かめることができたのでその様子を紹介する。
『IL regalo』
みくりあクワイア
ダウンロード:「e-onkyo」「e-onkyo」(HPL)
ステレオ版:2500円(WAV/FLAC)
サラウンド版:3000円(WAV/FLAC/DSD)
HPL版:3000円
『Sound of the Sky』
植草ひろみ, 早川りさこ
ダウンロード:「e-onkyo」「e-onkyo」(HPL)
ステレオ版:2500円(WAV/FLAC)
サラウンド版:3000円(WAV/FLAC/DSD)
HPL版:3000円
『竹ノオト』
BamgBoom!
ダウンロード:「e-onkyo」「e-onkyo」(HPL)
ステレオ版:2500円(WAV/FLAC)
サラウンド版:3000円(WAV/FLAC/DSD)
HPL版:3000円
同じ場所、同じ演奏者でも録り方次第で、異なる印象に
HD Impressionのサラウンド音源は、第1弾から新譜がリリースされるたびに試聴させてもらっている。今回も、同じ試聴室、ほぼ同じ機材での再生だが、音源を聴くと、従来の音源よりも音の厚みと存在感が増した印象があった。
例えば第1弾の楽曲にも含まれていた、みくりあクワイアの音源。収録場所は同じ港区の教会とのことだが、記憶とは、低域の音離れの良さや明瞭感などがずいぶんと違う。そして重心が低くしっかりと鳴る印象だ。また3名いるボーカルの立ち位置といったものもより明確で目の前に音像がくっきりと浮かび上がる。
最初はスピーカーのセッティングなどが影響しているのではないかと思ったが、阿部さんに聞くと「試聴室のセッティング自体に変更はない」とのこと。強いて言うなら、「録音の回数を重ねることで、自分自身のマイキング・スキルがより一層上がった成果が出ているのではないか」というのだ。
「身の回りでも歩きながら、ものに近づいたり離れたりすると音色の違いを感じるじゃないですか。それと同じで、ここだと思った場所を耳で聞いて決め、高さを合わせるんです」と阿部さんは言う。フォーカスの合った音などと表現されることが多いが、確かにマイキングによって音に差が出るのだと実感できる。第1弾と第3弾の音源から、こうした違いを聴き比べてみるのも面白いかもしれない。
録音機材もMacBook AirにI/Fをつなぎ直接録音する簡素なもの。ケーブルや電源などについては気を使っているが、ハイレゾ時代になってよりストレートに録音することの重要性を意識するようになったそうだ。
最後に頼りになるのは、やはり自分の耳だけ
一方で「そこ(マイク位置の設定)に理屈はなくて、頼りになるのは自分の耳だけ」とも言う。
マイクの位置を決める際に、取りうる複数の選択肢からどれを選ぶかで悩むこともあるという。フォーカスが合ってれば常にいいというわけではなく、音楽の性格に合わせて、多少雑然としても敢えて残響を残したり、より演奏者に近付き、リアルさを出すなど試行錯誤の結果が録音として残る。
「私の場合、1階席の2番目とか3番目の距離感を選ぶことが多いですね。割と近い位置にマイクを置きます。8本マイクを使うこともあって、後方の音も取れるので。フォーカス、つまりどこに何がいるかというのが明確にわかる。その上で楽器の大きさだったり、人の気配を感じるような録音を目指していますね」
マイクについては「録音ごとに、いろいろ変えてはいるけれどもほぼ決まってきた」とのこと。
考え方としては右耳と左耳の2点を軸に、前2本、後ろ2本、上に2本、下に2本の合計8本のマイクを使うのが基本になる。マイクの種類はアルバムのシリーズの中ではほぼ同じ種類にしているが、実験を兼ねてスタンダードなDPAやNEUMANN製のコンデンサーマイクを中心にしつつ、いろいろと変更し、試行錯誤しているとのこと。マイク位置については、1本なら話は簡単だが、2本、3本と数が増えてくるほど位相差の問題に突き当たる。HD Impressionの収録では8本もあるので苦労するのだろうなと思う。