教会の高い天井は、天から降り注ぐ音で、聴衆を神秘的な雰囲気に誘う。音楽を楽しむことは、単に音を聴くだけでなく、場の空気を感じることでもある。教会でサラウンド収録された女声ボーカルを聴いたとき、その美しさを感じるだけでなく、音楽が奏でられるその場に立ち会ったような感覚が芽生えた。
1月21日、新レーベル“HD Impression”楽曲の先行独占配信がe-onkyo musicで開始された。サラウンド再生にフォーカスを当てた楽曲の提供をコンセプトに、レコーディングエンジニアの阿部哲也氏が立ち上げたレーベルとなる。
サラウンド録音に注力した新進レーベル
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camomile Best Audio |
阿部氏は過去にLe Coupleの藤田恵美が歌う『camomile Best Audio』『ココロの食卓 〜おかえり愛しき詩たち〜』や、HYPSの『CHAOTIC PLANET』(限定盤)のサラウンド録音を手がけた人物だ。特にcamomile Best Audioは、ソニーでAVアンプなどの開発を手がけた金井隆氏がサウンドクオリティーアドバイザーと参加。金井氏の開発ルーム(試聴室)で生まれた高音質のSACDとしてオーディオファンにも高い支持を得た。
配信の第1弾では、女声3人ユニット・みくりやクワイアの『La Preghiera』、植草ひろみ・早川りさこの『Song of the Heart』、高木里代子の『Salone』など3作品をリリース。
いずれもWAVとFLACの24bit/96kHz(ステレオ)に加え、DSD5.6MHz、WAVとFLACとDolby HDによる96kHz/24bit(5.1chサラウンド)版を用意。豊かな空間を感じるサウンドが体験できる。
さらにレーベルはポニーキャニオンとなるが、阿部氏が手がけた、たなかりかの『Flowers for Blossom』(PCCY-50071)の配信も始まっている。CD同時発売で、こちらもハイレゾ版・マルチチャンネル版をe-onkyo musicで購入してダウンロードできる。CD版と聞き比べて音質の違いを確かめることが可能だ。
オンキヨーの試聴室で、一般向け機器を使った音決め
これらの音源は、サラウンド再生という特徴に加えてもうひとつ、家庭用として販売されている音響機器を使って制作されている点も特徴だ。ミキシング・マスタリングの作業には、東京にあるオンキヨーの試聴室を利用。
ここに音楽制作ソフトインストールしたMacintoshなど必要な機材を持ち込み、試聴室に設置されているオンキヨー製のAVアンプやサブウーファー、B&W 801シリーズなどを使って最終的な音決めをしている。録音にはProTools、ミキシングにはDigital Performerを使用している。
編集部はその作業現場にお邪魔して、レーベル設立の背景やステレオとサラウンドの違いを聞き比べられた。