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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 第6回

iPhone 6s の4Kビデオはマジックのタネを見破るか?

2015年11月04日 17時00分更新

文● 前田知洋

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(記事の最後に『iPhone 6sの4Kビデオ機能はマジックを見破れるか?』の4K動画があります!)

マジシャンの指の速さ

 「マジシャンって、指先がすごくよく動く」と思っている人はいないでしょうか…。

 昔々、マジシャンはプレスト・ディジテイター( prestidigitator )と呼ばれていたことがあります。この単語を分解すると「素早い(presto)」「指先(digit)」「人(tor)」。つまり「指先の素早い人」。おそらく、ラテン語かと…。ちなみにアスキーでお馴染みの「デジタル」という言葉の語源も「指(digit)」から。コンピュータがなかった頃は、指を折って足し算や引き算をしていたことのなごりです。日本でも「お客様の目が速いか、奇術師の手が速いか、ご覧あれ!」なんてマジシャンが紹介されていた時代もあったので、「マジシャン=指先が速く動く」は世界共通の認識かもしれません。

 ところが、指や手などを目にも留まらぬ速さで動かすのは、人間には、ほぼ不可能なこと。マジシャンは観客の目をスピードで騙しているわけではなく、どちらかといえば、指先を繊細に使ったり、観客の注目するタイミングを意図的にずらしたりして、不思議を生み出します。

ライバル出現!「マジシャンvs iPhone 6s」

 そんなマジシャンに強烈なライバルが出現しました。それは、4Kビデオ。ただし、いまのところ、ファイルサイズや放送設備の問題などもあり「4Kビデオの普及は、未来のこと…」と、筆者はポジティブ・シンキングしてました。マジシャンの本来のお客様は人間の目ですし…。

 ところが、先日登場したiPhone 6sに4Kビデオ撮影機能が搭載。たぶんもう皆様はご存知だと思います。それも、iPhoneの4K動画は、3,840ピクセル×2,160ピクセル。ひえぇ~~っ!!恐ろしげなスペックです。

 そこで、ちらりと実験的にiPhone 6s で、自分のマジックを4K撮影してみたら…。ガビ~ン!!! 手元がアップになると、マジシャンの指紋までもがうっすらと見るほどの解像度です。(キャプチャー画像では、動画圧縮のせいで、手が荒れて見えますが、本物はスベスベなので心配しないでね(笑)。

キャプチャーでも、この解像度。写真じゃありません。4K恐るべし!(クリックで拡大)

 とりあえず、気合を入れて、仕事用のシャツに着替え、プロ用の照明を使ってサクッと撮影。全部で10カットくらいビデオ撮影しました。

涙の結果に…、iPhone 6sに惨敗

 結果から先に申し上げますと、10シーン全てNGカット…。全敗です。普通に見れば、気がつかないかもしれませんが、スロー再生したり、何度もコマ送りをすると、ところどころ、チラリズム的な怪しいフレームが…。

 たとえば、スプリングと呼ばれる両手にカードを飛ばすテクでは、肉眼では気がつきませんが観客のサインしたカードがどの辺にあるのかわかってしまいます。とりあえず仕事用のシャツは着ましたが、パイロットフィルムなので、爪の手入れが手抜きなのも恥ずかしー!

肉眼ではわからないが、4Kのスロー再生だとカードの場所がまるわかりです…。(クリックで拡大)

 他のマジシャンに「ネタバレ!」って、怒られてもいけないので、ちょっとだけ画像をリタッチしました。実験映像なので、許してチョンマゲ!

 泣きながら、さらに追加の撮影をして編集。6時間かけて、50秒ほどの動画が完成!勝率なら、20戦3勝くらいでしょうか…(涙)。

 4Kビデオの編集は、10月13日に公開された、iMovie 10.1を使用。iMac 27inch Retina上でおこないました。やっぱり、4Kビデオはキレイなぶん、データ量も膨大。50秒ほどの動画で2.1Gバイト(Apple ProRes コーデック)でした。

 しばらく前に、テレビ番組が、SD放送からHD放送に変わったときもそうでしたが、マジックのテクニックやアイテムなど、4K収録用に再構成しないとネタバレの可能性が大!マジックの秘密だけでなく、シャツのほつれ糸なども、ものすごく気になります。4K番組が始まったら、女性の出演者のメイクなども大変に。いまからパニック状態が目に浮かびます。たぶん、4K対応のハイテク化粧品が登場したらバカ売れするはず。そういえば、以前、NHKで地上波がSD放送、衛星波がHD放送だった頃、メイク室でSD放送用の化粧品とHD放送用が別々だったことを思い出しました。

 たぶん、もうひとつの課題は、4Kビデオ用のストレージ。大容量で安定していて安価、次世代ストレージの登場、もしくは画期的な圧縮方式が登場するまで、マスメディアの4K採用まだまだ時間がかるかもしれません。

 よーし!4K放送設備がテレビ局や各家庭に普及するまでに、頑張って特訓だー!!(涙)

 下は記事と連動する『iPhone 6sの4Kビデオ機能はマジックを見破れるか?』4Kビデオ(2160p)。解像度が粗いときは、コントロールバーの歯車をクリックしてね。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。現在、ビジスパからメルマガ「なかマジ - Nakamagi 3.0 -」、「Magical Marketing - ソシアルスキル養成講座 -」を配信中。

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