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30年ぶりに新発見された量子暗号通信の新手法が早くも実証

NTT、新たな量子暗号通信の実験に世界で初めて成功

2015年09月16日 15時15分更新

文● 行正和義 編集/ASCII.jp

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RRDPS方式(総当たり差動位相シフト方式)による通信のしくみ

 日本電信電話(NTT)は9月14日、新たな量子暗号方式「RRDPS方式(総当たり差動位相シフト方式)」による通信実験に成功したと発表した。

 量子暗号通信としては、現在のところQKD(量子鍵配送)という手法が利用されている。QKD方式では量子的重ね合わせ状態にある光子を送信し、通信が盗聴された場合には量子状態が変化することから盗聴の有無を検出できる。

QKD(量子鍵配送)方式

 QKD方式はすでに実用レベルの技術になっているが、信号が減衰するとノイズと受信した量子状態の壊れをが区別できなくなり、長い伝送距離には向いていなかった。

RRDPS方式(総当たり差動位相シフト方式)は位相とパルス幅、つまりケーキの切り分け方を受信者が選ぶようなもの

 RRDPS方式は、送信側で情報をランダムに位相変調したパルスとして送る。受信側はそのパルスを調べ、位相差を検出した時刻と遅延時間を送信者に(通常通信で)通知する。位相差(パルス幅)は受信者が検出してはじめて量子状態が確定し、1bit分のデータが送信できることになる。盗聴しても受信者と同じパルス幅を偶然選ばない限り傍受データは意味をなさず、また受信者側が通知したパルス幅を知っていても量子力学的に同じデータを復号できるわけではない。

盗聴(傍受)しても正規受信者がどう読み取ったのかが判らなければ盗聴者には復号できない

 NTT物性科学基礎研究所と東京大学大学院工学系研究科では、このRRDPS方式に基づいた誤り率監視の不要なQKDの実験を行なった。2GHzクロックのパルスが出力される低出力レーザーを利用することでパルス1回あたりの平均光子数は1つ以下(光子が検出されるかどうかは不確定となる)。4種類の長さの光ファイバーに通す(位相幅4)前にランダムに経路を選択することで遅延幅を変化させている。

実験では長さの異なる光ファイバーを用いているが、量子状態を保存したまま遅延する機器も存在しており、将来的に実用化される可能性は高そうだ 

 実験の結果、RRDPS方式で30kmの長さの光ファイバーを通しても安全に鍵配送が可能ということを確かめたほか、減衰器を経由させることで伝送による損失があったとしても誤り率はさほど大きくないという。今回の実験では遅延時間は4通りという制限があるが、遅延時間の数を増やすことで伝送距離・ビットレート向上が見込める。今後性能向上を図り新量子暗号通信として開発を進めるとしている。

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