9月10日に発表された「iPhone 6s」「iPhone 6s Plus」。「唯一変わったのはそのすべて」とのキャッチが付けられ、押下の深さを感知する「3D Touch」と、指先に押した感触を与える「Taptic Engine」。4Kビデオ撮影などなど、新機能が多数搭載されましたが、素材にも注目したいです。
iPhone 6s公式ページの「デザイン」の項目を見ると「筐体には、航空宇宙産業で使われているものと同じグレードである7000シリーズアルミニウムの新しいアロイを採用しています」とあります。この「7000シリーズのアルミニウム」とは一体何ものでしょうか?
アルミ合金の決まり
アルミ合金は「A+4ケタの数字」でアルミニウムに何を混ぜた合金なのかが表現されます。JIS規格では主に「X000番台」と呼ばれます。たとえば、何も混ざっていない純アルミニウムは1000番台。アルミニウムに胴を混ぜた合金が2000番台、アルミニウムにマグネシウムを混ぜた合金は5000番台です。
実際には、アルミニウムと、それ以外の金属の比率や、規定外の金属の含有率などに応じて、3003、5056といった具合に表現されます。5000番台はすべてアルミニウムとマグネシウムのみで構成されているというわけではなく、ほかの金属も0.X以下程度の割合で含有しており、この含有率に応じて3ケタまでの数字が変動する仕組みです。
7000はアルミニウム、亜鉛、マグネシウムの合金!
そして7000番台は「アルミニウム亜鉛マグネシウム合金」と、「アルミニウム亜鉛マグネシウム銅合金」を表します。「超々ジュラルミン」の名称で知られる「A7075」やスキー用具をはじめとするスポーツ用品などに利用される「A7178」がこの7000番台にあたります。
7000番台のアルミ合金はアルミ合金の中でも特に高い強度を持ち、航空機や鉄道、宇宙産業、産業用のロボットなどにも利用されます。ただ、非常に硬度が高い分加工が難しく、加工コストが高くなる傾向にあるそうです。ちなみにアップルでは「7000番台」というだけで、その中のどんな合金を使っているのかは公表していませんが、Apple Watchの公式ページを見ると、「私たちは7000シリーズアルミニウムのアロイを作りました」との記載があり、工業用に一般的に流通している合金ではなく、オリジナルの7000番台のアルミ合金を作ったとも読めますが、詳細は謎です。
iPhone 6と6 Plusが発売されたときは「曲がる」「折れる」など散々話題になったため、新しいiPhoneでアップルが素材の強度を高めてきた点には、「もう言わせないぞ」という意図が見える気もします。いずれにせよ、「宇宙産業でも使われる金属でできたスマートフォン」というだけで、なんとなく持っていてうれしい気分になれそうです。理工学系の方には釈迦に説法になってしまったかもしれませんが、新しいiPhoneの購入を検討している方は、参考にしてください。