ではブームを創出するにはどうすればいいのか。金田氏は「商品開発はプロダクト・アウト型だと自己満足になりがち。20~30代後半の主婦層をターゲットにしている商品が多いこともあり、この層の生活・行動を意識して新たな商品を開発しています」と語る。
同社の具体的な開発手法は、まず一般の主婦やその友人などで構成する「商品開発委員会」の情報収集から始まる。10数人で構成されるこの委員会は、週1回程度、定期的に集まって情報交換をしたり、開発中の商品に対する意見・アドバイスなどをする。一般の主婦でも役割を持つと流行に敏感になり、やりがいを感じて優秀なリサーチャーになるという。そういった一般的な主婦の身近にある情報から、数々のヒット商品が生まれているのだ。
ネットでは「写真1枚ですべて語る」ことが重要
同社は直販ではなく卸業がメインで、カタログ、テレビ、ネットなどの通販媒体で商品を展開しているため、それぞれの通販媒体に精通している。
現在商品を販売している通販媒体の構成比は、カタログ通販が減少し、テレビやネットの比重が高くなっているという。金田氏は「通販では類似商品がすぐ出てくる傾向があり、商品の寿命が短くなってきています。そうなると、スピードが重要になります」と語る。カタログ通販の場合、カタログへの掲載が決まってから半年後に掲載されることもあり、その間は商品が販売されない。そうなると、販売されるまでの販売機会を失うだけでなく、新たに別の類似商品や低価格商品が市場に出回り、商品の優位性が薄れてしまうこともあるという。
スピードで言えば、インターネット通販は圧倒的に有利。打ち合わせした当日に、商品を販売していた通販サイトもあったという。金田氏は今後もネット通販の比重が増えていくと見ている。
ネット通販での販売がうまくいく秘訣として同氏は、「写真1枚ですべてを語る」ことを挙げた。「名刺サイズ程度の画像+テキスト一言」で、商品力を表現することができれば、売れる確率は上がるという。ECモールや通販サイトでは、他の商品に埋もれてしまうこともあり、写真1枚の表現力が重要になってくる。
低価格競争に巻き込まれない戦略を
ECモールなどでは、簡単に商品の価格比較ができるようになった。これはネット通販の成長の一因である反面、価格競争が激化して利益が薄くなり、メーカーや通販企業にとって悩みの種となっている。1社が極端に価格を下げると、その価格に引っ張られて、全体が安くなる傾向がある。金田氏は格安商品が流通する要因はさまざまあり、そのうち最も多いのは「集客要因」とした。これはスーパーや家電量販店のチラシに掲載される目玉商品と似ている。チラシに掲載する目玉商品は赤字覚悟の値段で提供し、この商品目当てで集客した人に、他の商品を買ってもらうことで利益を得る。目玉商品はある意味広告宣伝のようなもの。そこで利益は必要ない。しかし、その店にとって利益が必要ないその商品の価格に、他社が対抗心を燃やして競争を挑んでしまう。
流通店舗で起きているこの情況は、ネット通販でも同じ。あるECモールが集客・会員登録を目的に、利益を度外視した低価格で人気商品を販売したとする。その商品はそのECモールにとって利益が必要ない商品なのに、他のECモールなどが価格で対抗し、低価格競争が始まる。
金田氏は付加価値のある商品開発やブランド化戦略を取り、こうした低価格競争に巻き込まれないようにしている。これは前述のトレンド創出にも当てはまることだ。集客以外にも、単純に在庫処分を目的とした格安販売など、低価格商品が流通する理由はさまざまだ。通販サイト側は、安易に他社の値下げに追従するのではなく、なぜその商品が安く売られているのかを考えることも必要だろう。
了
(山本剛資)