「Fire Phone」でスマホ市場に参入したAmazonだが、ローンチから1年少し、どうやら市場から撤退もありうる雲行きだ。米紙がFireスマートフォンを開発するラボの人員削減を報じている。
ちなみに7月の「Prime Day」では、SIMフリー版が159ドルで販売されたとか。現在Amazonの米国サイトでは「現在販売できません」となっている。
Amazon.com上でもすでに購入できなくなっている |
ハイスペックを低価格で実現した「Fire」
Fireスマートフォンは2014年6月に発表されたAmazon初のスマートフォンだ(関連記事)。CEOのJeff Bezos氏自らが発表したもので、センサー技術を利用した独自の3D表示システム「Dynamic Perspective」、カメラやマイクからの情報をもとにAmazonでショッピングができる「Firefly」、顧客サービスの「Mayday」など、かなり高スペックな特徴を盛り込んでいた。
OSは同社のタブレット「Kindle Fire」でおなじみのAndroidベースの「Fire OS」だ。アプリではFireタブレットで提供しているアプリストア「Amazon Appstore」を利用する。音楽は「Amazon Store」、電子書籍は「Kindle Books」、動画は「Amazon Instant Video」があり、5GBのクラウドストレージを無料でバンドルする。
このほか、2.2GHz動作のクアッドコアプロセッサとAdreno 330グラフィック、13メガカメラ、4.7型のHD液晶、LTE対応、NFCサポートなど、ハイエンドといえるスペックを備えつつ、Amazonらしく低価格(発表時、キャリア2年契約付きで199ドル~)で提供した。米国でローンチ後、同年秋には英国やドイツなどでも発売された。
Fire、Echoを開発したハードウェアラボ
”Lab126”が再編!?
小売業がスマートフォンを作る――それ自体は、Androidとデバイス価格低下により、簡単に携帯電話が作れてしまう時代になったことを象徴しているように思う。だがスマホは製造することは簡単でも、ビジネスとして成功させることは非常に難しい。
Amazonは他のインターネット企業と比べると、短期的利益にとらわれずに長期的な事業戦略に基づき製品展開をしていると言われることが多い。電子書籍の「Kindle」、Kindle Fireなどのハードウェア製品はその好例だ。そのKindle、Kindel Fire、Fire PhoneなどのAmazonのハードウェア製品を送り出してきたのが、同社がシリコンバレーに持つラボ「Lab126」だ。そのLab126の縮小を、Wall Street Journalが8月末に報じた。
Lab126は2014年だけでFireスマホ、音声コマンドと人工知能(AI)を利用した家庭用デジタルアシスタント「Echo」など、合わせて10以上のハードウェア製品を送り出したという。記事によると、今回いくつかのハードウェアプロジェクトを打ち切るとのことあわせてAmazonでデバイス担当技術責任者を務めたJon McCormack氏が7月にGoogleに移籍したことにもふれている。McCormack氏は以前にもYahoo!に転職したが、デバイス担当CTOとしてAmazonに復帰、それから数ヵ月で再び離職となった。
Amazonの人工知能入りスピーカー「Echo」 |
AmazonはFire Phoneの販売台数を公開しておらず、爆発的に売れたという話や記事はなかったことからも、実績は低かったのだろうと予想できる。
(次ページでは、「Fire Phoneはなぜ売れなかったのか」)
この連載の記事
-
第342回
スマホ
AR/VRの長すぎる黎明期 「Apple Vision Pro」登場から6ヵ月、2024年Q1は市場はマイナス成長 -
第341回
スマホ
世界で広がる学校でスマホを禁止する動き スマホを使わない時間を子供が持つことに意味がある? -
第340回
スマホ
対米関係悪化後も米国のトップ大学や研究機関に支援を続けるファーウェイの巧みな戦略 -
第339回
スマホ
ビールのハイネケンが“退屈”な折りたたみケータイを提供 Z世代のレトロブームでケータイが人気になる!? -
第338回
スマホ
ファーウェイはクラウドとスマホが好調で大幅利益増と中国国内で復活の状況 -
第337回
スマホ
米司法省、アップルを独禁法違反の疑いで提訴 その中身を整理する -
第336回
スマホ
Nokiaブランドのスマホは今後も出される! バービーとのコラボケータイ、モジュール型などに拡大するHMD -
第335回
スマホ
ファーウェイスマホが中国で好調、次期HarmonyOSではAndroid互換がなくなる!? -
第334回
スマホ
Nokiaのスマホはどうなる!? HMD Globalが自社ブランドのスマホを展開か -
第333回
スマホ
アップルがApp Storeで外部決済サービスを利用可能に ただし手数料は27% -
第332回
スマホ
米国で特許侵害クロ判定で一時は米国で販売停止のApple Watch、修正は認められるか? - この連載の一覧へ