仏モンペリエ大学の研究グループは、アコヤ貝などの真珠を作る貝が殻の中で真珠を回していることを実験で確認した。
これは7月15日に英王立学術論文誌フィロソフィカル・トランザクションズに公開された研究。真珠は殻の中に入った異物と外套膜により真珠層(炭酸カルシウム)が積層されて形成される。その完璧な球形は核の表面に単に真珠層が重ねられるのではなく、内部で回転しながら形成されると考えられていたが、これまで実際に確かめられていなかった。
研究グループはIFREMER(フランス海洋研究所)の支援を受け、真珠の養殖施設において磁石を仕込んだ真珠核を用い、養殖業者の協力で複数のアコヤ貝に移植、周囲に磁気センサーを設置した状態で飼育した。その結果、平均して4時間43分で1回転していることが確認された。
さらに研究では回転軸自体の回転具合も調べ、回転軸に大きな偏りがないものは完全な円形にならない異型真珠(バロック玉)になることも確認している。研究グループでは、真珠の形成という自然(と養殖技術)プロセスの一部を初めて明らかにできたとこととともに、バイオミネライゼーション(生物が作る無機物構造)のプロセスを研究する手法のひとつとなりうるとしている。
バイオミネライゼーションは骨や貝殻などナノ構造を持ち、人工素材よりもはるかに軽くて丈夫なものもあり、工業的応用の可能性もある分野として注目されている。なお、論文はクリエイティブコモンズ4.0において公開されている(著者:Yannick Gueguen, Yann Czorlich, Max Mastail, Bruno Le Tohic, Didier Defay, Pierre Lyonnard, Damien Marigliano, Jean-Pierre Gauthier, Hubert Bari, Cedrik Lo, Sébastien Chabrier, Gilles Le Moullac、DOI: 10.1098/rsos.150144)。