京都大学などの研究グループは7月1日、これまで混ざり合わないと言われていたポリマーを、多孔性物質を用いることにより完全に混合する手法を開発したと発表した。
合成物質として一般なプラスチックやナイロン、生体でタンパク質などは分子量が非常に大きなポリマー材料として、各種産業だけでなく自然界でもさまざまな場所で利用されている。プラスチックなど石油系ポリマー材料の場合、強度や温度、化学反応性などの新たな特性を得るため複数のポリマーを混ぜ合わせる方法があるが、ほとんどのポリマーは数ミクロン程度の大きさで固まってしまい相分離が生じる。なお、これは統計熱力学的に証明されており、高分子材料の溶液中のふるまいを表すフローリー・ハギンズ理論は、その業績によりノーベル賞を授与されている。
京都大学、九州大学、東北大学の研究グループは、0.75ナノメートルという極小の孔が開いた多孔性金属錯体(PCP)に着目、PCPの孔の中で複数のポリマーを混ぜ合わせた。孔の中の極小空間という系では速度論的に反応が進み、フローリー・ハギンズ理論は適用されないという。反応後は化学反応でPCPを除去することでポリマーブレンドのみを取り出すことができる。
実験では、これまで絶対に混じり合わないとされていたポリスチレン(PS)とポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用い、完全に混合した物質を得ることができた。材質的にも熱分解耐性が向上していることが認められるなど、熱耐性や強度などのプラスチックの特性を大幅に向上できる可能性を持つ。
この手法はさまざまなポリマーの組み合わせに適用できると考えられることから、プラスチック材料を品質や特性を自在に改良し、自動車産業から電子機器、スポーツ用品、医療や食品などあらゆる産業への利用が期待できるという。
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