スウェーデンの家具メーカー「IKEA(イケア)」本社はこのほど、店舗を展開するすべての国でECサイトを展開すると発表した。店舗販売にこだわり、ネット通販に消極的だった数少ないメーカーが、世界的なEC展開に乗り出した。
日本でも以前からネット通販を開始する予定とされていたが、詳細の時期は不明だった。現在、イケアの日本向けホームページには、商品や価格などが掲載されているが、ネットから購入できる機能はない。イケアの店舗ごとの在庫状況を確認でき、購入は店舗でするというもので、商品カタログに在庫確認機能を加えたようなページとなっている。
同ページでは、屋外家具・食卓・デスク・クッキングなど、場面に応じて商品が分類され、目的の商品を検索しやすく構成されている。ショッピングにリストにお気に入り商品を登録できるほか、複数の商品画像を確認できるなど、通販サイトのようなページ構成になっている。ここまで機能が充実しているなら、サイトから購入できればすべてが完結するのだが、サイト利用者は商品購入のために店舗に出向かなければならない。
国内のイケア店舗は、港北(横浜市)・三郷(埼玉県三郷市)・神戸・仙台・船橋(千葉県船橋市)・鶴浜(大阪市)・福岡新宮・立川(東京都立川市)の8店舗。首都圏に4店舗、仙台・大阪・神戸・福岡の各都市に1店舗という販売網では、全国をカバーできているとは言い難く、近くに店舗がない利用者は遠方から出向かなればならない。また、記者も経験があるのだが、休日は凄まじいまでの混雑ぶりで、昨年8月の日曜日に立川店に訪れた際には、レジで2時間以上も待たされた。利便性向上だけでなく、店舗での混雑緩和のためにも、ネット通販にかかる期待は大きい。
イケア・ジャパンは、ネット通販をしてこなかった理由として、「これまではお店に来てほしい、というのが会社の方針だった」と話した。また、「今後はネット通販をやっていく方向に変わってきている。どこかの段階で、必ず日本でもネットショッピングを開始する予定で、今はその準備段階」としている。
イケアは店舗が倉庫機能を持ち、店舗での商品のピックアップと会計、家具の組み立てなどを購入者がすることで経費を大幅に削減し、品質やデザイン性に優れる商品を低価格で提供してきた。ネット通販を開始する場合、倉庫でのピックアップ・梱包・発送などの新たな作業が発生してくる。各店舗との在庫調整も必要だろう。サイトのリニューアルも含め、通販サイトの展開には新たな仕組や、さまざまな作業が必要となるが、流通業のオムニチャネル化が世界的に進んでいるなかで、イケアもその流れには逆らえなくなったようだ。
また、ネット通販開始を機に、現在2製品しかない組立の動画を増やすと、利用者は助かるだろう。スマホにも対応すれば、スマホの動画を見ながら組み立て作業をすることも可能となる。ネット通販を開始し、マーケティングを強化すれば、家具をネットで購入している層を呼び込めるなど、さまざまなメリットもある。ネット通販の開始時期は未定だが、すでにネット通販を開始している国もあり、確実にその時期は近づいている。
(山本剛資)