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ウルトラハイパフォーマンスをうたう最上位ワークステーション

内部を空けると進化が見える、ThinkStation P700/P900

2014年11月06日 15時59分更新

文● ASCII.jp編集部

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 レノボ・ジャパンは11月6日、ワークステーション「ThinkStation P」シリーズの新製品「ThinkStation P700」と「ThninkStation P900」を発表した。既存のP300/P500の上位モデルとなる。

ThinkStation P900

ThinkStation P700

上部と底部にとってがついて移動が容易なほか、突起がないためスペース効率も高い。USB端子などのシルク部分は白色LEDで点灯し、わかりやすい。

 2機種のうち特にP900は“ウルトラハイパフォーマンス”をうたう新領域の開拓を狙った製品。「競合も含めてカバーできなかった高い拡張性を持つほか、4Kや6Kの動画編集、医療系画像データを撮りだめられる大容量のストレージ、1万件2TBをゆうに超えるような地震の観測データを扱えるメモリー容量などに対応できる拡張性を持つ」という。

 CPUはHaswell世代のXeon(Xeon E5-2600 v3シリーズ)を2Wayで搭載可能。DDR4メモリーを同社としてはじめて採用したほか、新世代のQuadroシリーズを採用することでコストを維持しつつ、高い性能を得られる点もアピールした。ツールレスで各パーツを交換できる“モジュラーデザインコンセプト”の筐体に、新世代の冷却機構“エアーバッフル”を取り入れている。

ケーブルなどがエアフローを阻害する要因にもなりえた従来機種に対し、P700/P900ではモジュール化し、よりスムースなエアフローを確立している。

高い拡張性が売りだ。ビデオカードはNVIDIAの最新Quadroシリーズが選択できる。

個性的なエアフローやモジュール化された内部構造

Think製品事業部でエンタープライズ製品のプロダクトマネージャーを担当する高木孝之氏。

 Think製品事業部でエンタープライズ製品のプロダクトマネージャーを担当する高木孝之氏は、ThinkStation開発思想について語りつつ、新製品を紹介した。

 ワークステーションの利点を考えたときに重要なポイントが2点あるとする。ひとつは“事業の継続性”もうひとつが“長時間快適に作業できる”点だ。前者に関しては、故障率の低減、堅牢性、熱からの保護などが重要。故障時の復旧を検討して保守容易性が求められる。後者についてはアプリケーションを含めた総合的なパフォーマンスはもちろんだが、静穏性、そして最適な構成を適切なコストで柔軟に選べる点が重要だという。

 Thinkブランドということで、堅牢性に関しては、特に配慮している。ThinkPadなどでおなじみの拷問テストを実施。品質面でも導入後1~3年目の平均故障率で他社を上回る成果を上げているという。

各要素に対して、レノボが実施しているテスト一覧。

故障率のグラフ

温度の比較

 冷却性能というと、一般的にはCPUの効率的な冷却に関心が向かいがちだが、熱に弱いのはCPUだけではない。HDDの発熱を抑えることも重要で、「将来何億円の価値を生むようなデータを守ることが重要」と高木氏も話す。過去のThinkStationシリーズでは、HDD周りの温度では競合に対して5~8℃低く、寿命も長く維持できるという結果が出ているという。

内部はモジュラー型の構造。ブラインドコネクトHDDと呼ばれるカセット式に着脱できるドライブベイを備える。

写真左がエアーバッフル。2基並んだCPUを冷却する際、前側にあるCPUの熱が後ろ側のCPUにかからないよう、風流を分けるために用いるカバーだ。

 また最適化したクーリング設計を考える上で、静穏性と冷却効率も表裏一体の関係にあるとした。これはシステムが冷えていればファンの回転数を上げなくて済むという点を考えれば、一目瞭然である。

冷却や静穏性に対するこれまでの取り組み。

 ThinkStationでは、2008年の最初の製品から、静穏/冷却の2点にこだわってきた。たとえば防振ゴムの採用、2009年のEシリーズ以降の大型ファンを低速駆動する静穏性の追求などだ。これはエントリークラスのP300でも継承されている。異なる周波数の振動も吸収できる特殊な形状のゴム脚(レノボではネコ脚などと呼ぶ)、直径の大きなファンを使用し、24dBと静かな動作音などはその反映と言える。

ハニカム構造のメッシュはThinkStationのトレードマーク。実はここにも秘密が。

ラックマウントなど横置きも想定して、ThinkStationのロゴも着脱できる。

 トレードマークと言える、フロントの“ハニカム”型メッシュも、冷却性能に一役買っている。一般的な丸い穴より空気の流量が増えることに加え、奥行きの深い筒状にし、内側をすぼめることで、ベンチレーション効果を生み、より風速を早く空気を取り込めるからだ。HDDの保護という点では、コントローラーチップなどを搭載した基板部分を向かい合わせて設置するベイを採用。フロントから取り入れた空気を上下に振り分けて、故障の原因になりやすい基板部分に効率よく風が当たるよう工夫している。これらをE20~P300までのエントリー機種にも備えている点が同社のこだわりだという。

 従来機種の“Tri-Channelクーリング”機構は、発熱の多いCPU、GPU、HDDを上部・中部・底部に置く構造。P700/P900シリーズではこれをさらに進めた。他社は多数のファンで強制的に冷却するアプローチも多いが、今回の製品では、直冷エアバッフルと呼ばれる、2基のCPUの空気の流れを制御するパーツを入れ、片方のCPUに当てた熱風がもう一方のCPUに当たることで冷却効率が落ちないよう配慮している。競合が10個程度使用している、システムファン(ケースファン)も3個のみに減らしているため、ノイズも最小限に抑えられる。

ケーブルレスでHDDを着脱できる“ブラインドコネクトHDD”。写真右のアダプターに2.5インチHDDであれば2台、3.5インチHDDであれば1台を収納できる。

HDDはカートリッジに収納し、簡単に着脱できる。

電源は特注品。こちらも簡単に着脱が可能だ。

電源の仕様一覧。

 内部パーツは、ケースに収め、ツールレスで各部が交換できる仕組みになっている。はずせる箇所に関しては赤い線で示すなどわかりやすさも重視している。

モジュールの取り外し方法なども図示されておりわかりやすい。

 CPUのヒートシンクはネジで固定されているが、ファンやマザーボードまでツールレスではずせるベンダーはないのではないかと高木氏は話す。

 特徴的なのは“ブラインドコネクトHDD”というストレージ収納ケースで、HDDをカセット式にしてケーブルなしで本体に装着できる。1個のケースには2.5型のSSDであれば2台、3.5型のHDDであれば1台を収納可能で、最大10本のストレージを本体に内蔵できる。電源ユニットに関してもツールレスで交換できるが、P700と既存機種P500は同一の電源ユニットを使用するため、交換して利用することも可能だという。

 このほか薄型の光学ドライブと各種I/Oを統合した5インチベイユニット“FLEXベイ”や、メザニンスロットを装備し、PCI Expressスロットを消費せずに機能拡張できる“FLEXモジュール”なども利用できる。

 FLEXモジュールとしては、RAIDアダプターやSATAやUSB端子を持つ内部結線用カード(テープドライブなどを活用したいユーザー向け)、M.2 SSD対応のアダプターなどを接続できる。

 特にSSDに関してはインターフェースがボトルネックになっているため、SATA/SASより1レーンの速度でも上回る、PCIeに注目しており、x4で高速なSSD接続を可能とした。

FLEXベイとFLEXモジュールの解説スライド

オプションとして提供するビデオカードやアダプター類

レノボのコアビジネスにとって、ワークステーションは重要

Think製品事業部の部長の中西 和彦氏

 Think製品事業部の部長の中西 和彦氏は、PCワークステーションに注力する背景を説明した。同社は法人向け(Think)と個人向け(Lenovo、Miix、Horizon、Yogaなど)の2種類の製品を展開している。このうちThinkブランドでは、ThinkPad、ThinkCentre、ThinkServerといったブランドを展開。その中でワークステーションのブランドがThinkStationとなる。

 レノボは現在、成長を牽引するカテゴリーとして「PC+」を重視する戦略をとっている。一方、PCは守り、すなわちコアビジネスとしてマーケットリーダーのポジションを確保し、堅実な成長を目指している。ThinkStationは守りの領域に属するが、同社の注力分野でもある。

 その理由はPCワークステーションはPC技術の最先端にあり、新たな技術を積極的に投入でき、市場での受容を検証できるため。またPCに対する確固たる意見を持った顧客が対象であり、的確なフィードバックを得られる。そして収益性が高く、研究開発の再投資ができる点などがその理由だ。

レノボにおけるPCワークステーションの位置づけと、シェアの推移。

 ThinkStationの市場シェアに関しては、2008年のブランド立ち上げ時の2.4%から6年で、10.8%(2014年第2四半期)へと二桁の成長を遂げたという(全世界、デスクトップに限る)。日本においては具体的な数字は提示されなかったが、「成長度合いは世界市場と大きくは乖離していない」という。

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