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財務データでわかる! 会社のリストラシグナル

シャープ黒字化の「なぜ」が示す企業の選択

2014年06月24日 07時00分更新

文● 福田悦朋/アスキークラウド編集委員

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基幹事業が赤字になれば、企業にとっては存亡の危機。売れる資産は、可能な限り売り払い、削れるモノはすべて削って命をつなごうとする。働く側にとって大切なのは、リストラの兆候や規模感をすばやく察知することだ。

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リストラの危険度は意外とシンプルな計算式で出せる。まずは、会社の赤字額(純損失額)を社員の平均人件費で割る。すると、会社の赤字を帳消しにするために必要な「想定人員削減数」が求められ、それを全社員数で割ると赤字帳消しのために従業員の何割をカットしなければならないかがわかる。

この割合は、リストラの緊急性を示す値であり、「リストラ深刻度」と呼べるもの。赤字解消のために会社がどう動くかを察知するための指標でもある。

例えば、求めた数値が10%近辺に達しているならば危うい。2012年度に約1000億円の赤字を出したNECは、従業者1万人の削減に踏み切った。1万人の人件費を合計すると、およそ1000億円。1万人は当時の全従業者の「9%」に相当する。言い換えれば、NECのリストラ深刻度は9%だったわけだ。

アスキークラウド編集部が、従業員500人以上の国内上場/非上場企業1971社の財務データを調べたところ、深刻度が10%を超える企業が90社を超えていた。これらはすべて人員削減に動く可能性がある。さらに、深刻度の点でワースト20にランクされた会社は、深刻度が60%超。こうなると人員削減だけでは赤字解消は不可能だ。各社は資産の切り売りをはじめ、さまざまな手段を併せて講じている。そんなリストラ効果で、ワースト20社のうち12社が2013年度で黒字化を達成。例えばワースト20社にランクされた1社、シャープの2012年度の純損失は5400億円超(2011年度の純損失は3700億円超)だった。しかし、早期退職プランの遂行や年間500億円を超えていた宣伝広告費のカットなどで、2013年度には約116億円の黒字を捻出している。

赤字解消の背後で断行される会社のリストラ。それがいつ、どんなかたちで起きるかは、従業員には知らされない。だからこそ、チェックは必要だ。「リストラ深刻度の高い会社で何が起きたのか」「同じことが、自分の会社で起きる可能性はないのか」──アスキークラウド2014年8月号の特集「日本のイノベーション企業ランキング」では、国内3284社の財務データに基づいて、本誌独自の視点から企業の現在を分析している。


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