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フィンランド生まれの「The Dibidogs」

子供の落書き、親がアニメ化で大ヒット

2014年06月18日 16時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)/アスキークラウド編集部

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 ちょっとワイルドな赤毛の子犬、ロッキー。彼はボーン・シティ(骨の町)と呼ばれるイヌの惑星に住んでおり、消えたプリンセスを探して、未知の地へと冒険に出かける。

 The Dibidogs(ディビドッグス)は、フィンランドの元教師でFuturecode代表のJim Solatie(ジム・ソラティエ)さんと、彼の家族が作るアニメシリーズだ。2010年に放映を開始、フィンランドを始め、中国を含む世界28カ国で放映されており、フィンランド大手新聞社ヘルシンキ・サノマによれば視聴者はのべ5000万人。

 ディビドッグスの主人公は、ジムさんの子供が10歳のころ、旅行中に描いていたイヌの落書きだ。子供たちの創造性をより高めたいという意志から、ストーリーや設定はすべて子供たちから寄せられるアイデアを採用した。不思議な名前の由来も意味はなく、「なんだか面白い言葉だから」。

 「子供が考えたお話には、大人から押し付けられるのとは違う賢さがある。大人としては何が面白いのかよく分からないようなアイデアにも、子供たちは夢中になるんです」とジムさん。

Nicedogs

The Dibidogs

 ディビドッグスはいま、6歳以上の子供たちが自分で短編アニメを作れるアプリも用意している。

 タブレットで原作そのままのCGキャラクターを操り、やはり原作そのままの舞台で好きな演技をさせられる。タップやスワイプでカメラを自由に操作し、イヌたちの声優として声を吹き込み、完成したアニメはYouTubeなどにアップロードできる。さらに優秀な作品は、テレビでも放映される。

 「すでにテレビ番組でなじんでいるキャラクターを使うことで、子供たちは自信を持ってクリエイティブな映像を作れるようになります。現在のバージョンは出来合いの舞台から選ぶだけですが、秋に完成するアプリでは、舞台も自分で作れるようになるんですよ」(ジムさん)

Niceguy

Futurecode代表Jim Solatie

現在、子供が短編アニメを作れるアプリを開発中。アプリ開発環境はUnity

 ディビドッグスは2013年、フィンランドで優れた子供番組に与えられるHULDA(フーダ)賞を獲得。ぬいぐるみのようなキャラクター商品を作るかたわら、ディビスクールという関連会社を設立し、ディビドッグスを使った2~6歳児向けの英語教材アプリも開発した。ディビスクールの代表アヌ・グットン(Anu Guttorm)さんは「幼少期の言語教育は、将来の成功や自己実現につながります」と教材の意義を説明する。

 「プログラムはフィンランド国家教育委員会から協力を受けています。キャラもかわいいし、子供たちもやる気が出ます。なぜ先生や子供たちがディビスクールを選ぶかといえば、さまざまな国の子供たちと質の高いコンテンツを作れるから。ディビドッグスで子供たちがストーリーを作るのと同じように、アプリも子供たちから厳しい反応をもらっています。『つまんない!』と言われることも普通にあるんですよ」(アヌさん)

 フィンランドの学校では現在、従来型の学校教育に加えて、創造力やコミュニケーション能力、課題解決能力など経験的な知恵をいかに教えていくかが課題のひとつ。フィンランド政府にとって、ディビドッグスは21世紀型のフィンランド教育をあらわす、かわいい宣伝塔なのだ。

 「実は、ディビドッグスに出てくる『キング・ドッグ』は、フィンランド大統領の飼い犬とおなじ種類なんです。(大統領の飼い犬)レンヌが、ディビドッグスのオフィシャルプロモーターのようなものなんですよ」(同)


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