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ドコモのツートップ戦略は市場に逆行している

2013年06月06日 07時00分更新

文● 盛田 諒/アスキークラウド編集部

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 先月、ドコモの新商品発表会で掲げられた「ツートップ」宣言(関連記事)。つまるところ世界市場で勝負をしているソニーとサムスンの高級機を拡販する戦略だが、国内市場はむしろ一般人向けの普及機を求めているのではないかと思えてしまう。

 2012年、国内で売れたスマートフォンは、1位がアップル(1066万台)、2位が富士通(387万台)、3位がソニーモバイル(363万台)の順番だった(MM総研調べ)。

 富士通が健闘したのは、初心者向けから上級者向け、女性向けから高齢者向けまで、とにかく種類を増やしたため。いわば全方位戦略をとったことがシェア獲得につながった。特に好調だったのは、使いやすさを売りにした、シニアねらいの「らくらくスマホ」だ。

ソフトバンク初のシニア向け「シンプルスマホ」

 その動きに競合も刺激され、今春、ソフトバンクはシャープ製の「シンプルスマホ」、KDDIは京セラ製の「URBANO(アルバーノ)」をそれぞれシニア・初心者向けに展開する。

 ソフトバンクは普通のケータイから乗り換えても違和感がないように「電話」「ホーム」「メール」のボタンを残した。KDDIは初心者向けの「エントリーホーム」というホーム画面を用意し、慣れたら通常のメニューにステップアップできるようになっている。

 若者やマニアから、高齢者や女性など一般へ――顧客層が拡大するに連れて、それぞれの層でだんだんと顧客が育っていく。

 これと同じことが起きたのが「山ガール」現象だ。

 男性向けの需要が飽和していた登山・アウトドア市場は、女性顧客が入ったことでにわかに活性化した。初めはファッションスタイルとしてスカートのように手軽な登山用品が売れているだけだったが、市場が伸びるにつれ、女性顧客の求めるレベルは上がった。

 ステップアップ需要が伸びたことで、現在はひざをサポートする機能性タイツや、山小屋泊用の大容量ザックなど、本格的な登山用品が売れ筋になっているという。

 日本のスマートフォン市場を振り返れば、シニアにあたる60~80代はトランジスタや無線装置に親しんできた電機世代のベテランだ。いっぱしの登山家となってきた山ガールのように、シニアが普及機から高級機へステップアップするのびしろは十分にある。

 たしかに世界市場を見れば、中国の富裕層を中心に、売れ筋の商品が高級志向にシフトしているかもしれない。市場から雑草のように増えてきた商品を摘み、利益を生みそうな商品を優遇したくなる気持ちも分かる。だが、それよりも、国内でようやく伸びてきた顧客の芽をしっかり育てる意思を掲げた方がスマートだったのではないだろうか。

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