消費者庁は、2012年秋のKDDIのウェブサイトやカタログにおける、au「4G LTE」のエリアについての表記が、景品表示法に違反する行為だとして措置命令を行なった。KDDIはこの件に関して、お詫びの文章を公開するとともに、社長を始め関係責任者を減俸処分にしたと発表している。
今回の問題の背景として、auのAndroidスマートフォンとiPhone 5(およびiPad miniと第4世代iPad)では、au「4G LTE」で利用できる周波数帯に違いがあることが挙げられる。au「4G LTE」は、800MHz/1.5GHz/2.1GHzの各周波数帯でサービスが提供されているが、Androidスマートフォンでは800MHz/1.5GHz、iPhone 5では2.1GHzのみ利用できる(夏モデルからはAndroidスマホも2.1GHz帯を含む3周波数帯に対応)。
このうち最もサービスが充実しているのが800MHzだ。KDDIは早い段階から800MHzの「4G LTE」に取り組んでいたため、大半のエリアが下り最大75Mbpsの速度に対応し、カバー率も高いレベルに達する一方、iPhone 5で利用可能な2.1GHzの「4G LTE」では、多くの基地局が下り最大37.5Mbpsにとどまり、カバー率でも劣る状態にあったと見られている。
にも関わらず、iPhone 5の紹介ページに掲載されている「4G LTE」のバナーをクリックした際に表示されるページで、
「受信時最大75Mbps、送信時最大25Mbpsの光ファイバーなみのスピードで快適データ通信!!」
「サービス開始時より全国主要都市をカバー。2012年度末には実人口カバー率約96%に一気にエリア拡大。広いエリアで使える。」
「4G LTEエリアは政令指定都市を中心全国主要都市部をカバー。一気にエリア拡大しています。」
といった表現を用い、iPhone 5でも全国で下り最大75Mbpsのサービスが利用できると消費者が認識してしまう点が問題とされた。
KDDIではこれらの広告を2013年3月中旬までに修正するとともに、au販売店などにお詫び文を掲示。広告チェック体制の強化や内部監査に努めるとしている。
KDDIは、2012年度末時点でiPhone 5で利用できる「4G LTE」エリアのうち、下り最大75Mbpsに対応した地域は人口カバー率で14%であったと公表している(下り最大37.5Mbps対応のエリアについては当然これより広いと考えられるが、iPhone 5でも利用できる「4G LTE」のエリアについては地域の表記までで、Android向けにはあるエリアマップは公表されていない)。
また、2012年度決算発表の場で、同社代表取締役社長の田中孝司氏は今回の件について、「あまりに情けない問題」とコメントしている。