他ソリューションとの連携で真価を発揮
電話機単体として見ても魅力的なE61だが、ノキアは企業をターゲットとし、E61をサードパーティーの情報システムと一緒に販売することで、日本に新たな市場を築こうと狙っている。
実は欧米では、この手のスマートフォンの認知度が高く、ビジネスマンを中心に支持されている。最も有名なのが、カナダのResearch In Motion(RIM)社の“BlackBerry”シリーズで、日本でもエヌ・ティ・ティ・ドコモが9月から法人への提供を開始した。
RIMの「BlackBerry 8707h」。 |
BlackBerryが人気の理由のひとつに、プッシュ型の電子メール配信サービスを提供していることが挙げられる。通常、携帯電話用で電子メールを受け取ろうとすると、ユーザーがメールを取りにいくという行為が必要になるが、プッシュ型サービスを使えば自動で配信してくれる。つまり携帯電話のメールと同じ感覚で、電子メールを受け取れるのだ。
E61で使えるモバイル電子メールは、マイクロソフト(株)の“Microsoft Exchange Server”、ノキアが2005年2月に買収した米インテリシンク(Intellisync)社の“Intellisync”シリーズ、RIMが提供するBlachBerryのメールサービスなど。
E61が対応しているプッシュ型電子メールソリューション |
Intellisyncを使い、E61とデータを同期したところ |
E61の記者発表では、受信した電子メールをBluetooth経由でプリントアウトするデモが行われた。E61には米ヒューレット・パッカード社のプリンタードライバーがプレインストールされている。 |
また、企業内の内線電話をE61に置き換えられる。記者発表会では、日本アバイア(株)のIP電話ソフト“Avaya one- X Moblie Edition”、シスコシステムズ(株)のIPコミュニケーションシステム“ユニファイドコミュニケーションシステム”、オープンソースのPBX“Astarisk”がE61の対応ソリューションとして紹介された。
Avaya one-X Moblie Edition は、同社のIP-PBX(外線/内線電話の交換装置)ソフト「Avaya Communication Manager」に対応。職場での電話番号をそのまま使い、会社の無線LAN網や出先の3G携帯電話網を通じて、E61を内線電話として利用できる。 |
E61と日本アバイアのソリューションで内線電話をかけたところ。オプション画面から指示することで、会話中に他の人に電話を転送したり、複数人の電話会議に誘うことも可能だ。 |
日本では2005年後半よりW-ZERO3、htc z、Blackberry、E61といったフルキーボード付きビジネス向け携帯端末が充実してきているものの、現状でこれらを業務に絡めて使っている例というのは米国ほど多くない。
ノキア・ジャパンのエンタープライズソリューションズ事業部 カントリージェネラルマネージャー、森本昌夫氏によれば、「米国などでは BlackBerryが600数十万台利用されている」とのこと。そうした背景があるため、日本のマーケットにおいてもこのジャンル全体で「100万のオーダーは近いうちにいくのではないか」と予測している。
ノキア・ジャパンの森本昌夫氏。 |
また、同社のエンタープライズソリューション事業部モバイルデバイス プロダクトマーケティングマネージャー、大塚孝之氏は、「販売員、保険の外交員、営業といった職種の人々が、モバイルの電子メール端末を使うと非常に便利になるのではないか」と語った。
ノキア・ジャパンの社員によれば、彼らもパソコンの代わりにE61を持ち帰り、帰宅途中や自宅などで電子メールの返事を書いているという。
ノキア・ジャパンの大塚孝之氏。 | ノキアが示すE61のターゲットユーザー。 |
今回の発表会で協力企業として挙げられたのは国外企業ばかりだったが、森本氏は、「6月の時点で発表していたNECや富士通とは、Eシリーズをからめていろいろなソリューションを提供していこうと鋭意開発を進めている。今回のタイミングには間に合わなかったが、来年近々にはアップデートできると思う」とコメントしていた。
森本氏によれば、2007年上半期はプッシュ型電子メールと企業向けボイスソリューションに力を入れていくという。 |
日本アイ・ビー・エム(株)の企業向けインスタントメッセージソリューション「Lotus Sametime」にも対応。チャットや電子ミーティングを行なえる。 |
セキュリティー関連の項目。Intellisyncを使うことで、盗難時に端末をロックできる。 |
ちなみに森本氏によれば、E61と同時に発売される予定だったストレートタイプの端末「Nokia E60」は、「商品のライフサイクルが比較的終わりの方にきているため」発売を見合わせて、「新しいソリューションを検討したい」とのこと。
また6月当時、E60/E61は旧ボーダフォン(株)から発売される予定だったが、現状、現ソフトバンクモバイル(株)から特に発表がない。この点について森本氏は「ノキアからはコメントを差し控えさせていただく」と発言していた。