シックス・アパート(株)は17日、都内で記者会見を開き、10月27日から公開している新しいブログサービス“Vox”(ヴォックス)を国内のプレス関係者にデモした。
米シックス・アパート社長のミナ・トロット氏 |
これまでのブログサービスとの大きな違いは、ユーザーが投稿するコンテンツに、細かな閲覧制限を加えられる点だ。シックス・アパートの説明では、ブログに投稿される記事の76%が自らの経験を他者と共有するために書かれたものだという。しかし、これまでのブログサービスでは、一度公開された記事はインターネットにアクセスする不特定多数の目にさらされることになる。このため、プライバシーに関わる情報に対しては、知人や家族など限られた読者に限定して公開したり、誰が自分のブログを見たのかを分かるようにしてほしいという声が高まっていた。Voxはこうしたユーザーの声に応えられるツールである。
投稿する写真やエントリーには個別に閲覧制限が設けられる | 左側が友人向けのページ、右側がVoxにログインしていないユーザーなどが見るページ |
また、YouTubeやFlickrといったインターネットサービスと連携して、画像や動画などを簡単に投稿できる機能も追加した。これらの要素の追加はGUIベースで直感的に行なえるようになっており、HTMLタグの知識がなくても、画像サイズや表示位置などを細かく設定できるようにした。
画像共有サービスのFlickrと連携した機能。HTMLのタグ付けなしに、写真や動画の登録ができる |
さらに、ブログを継続して続けられるようにする取り組みとして“今日の質問”(QtoD)、“VoxHunt”という仕組みも提供している。QtoDは、Vox上で毎日出題される質問に利用者が解答するというサービスで、ブログに書くことがないというユーザーが記事を投稿するきっかけを与えてくれる。一方、VoxHuntはテーマにあった写真を投稿してもらうサービス。これらは“書くことがない”という理由で、ブログから離れてしまう人たちに積極的な動機付けを与える仕組みだ。
SNSとブログのいいとこ取りを目指したサービス
会見には、創業者で米国本社の社長を務めるミナ・トロット(Mena Trott)氏が来日し、「Voxで追加された機能は5年間ブログを続けていく中で、自分自身が欲しいと思ったものだ」と話した。
既存のブログサービスに求める要件。Voxのユーザーのうち、91%がプライバシー、83%が簡単に使えることを求めている。また、75%が週に1回、50%が毎日Voxにログインしているという |
インターネット上では、(株)ミクシィの“mixi”や米ニューズ・コーポレーションの“MySpace”に代表されるソーシャルネットワークサービス(SNS)が人気となっているが、その理由のひとつは会員制の閉じたサービスのため、安心してコミュニケーションが取れるためだ。しかし、会員制のSNSでは、話題が広まるのはあくまでも狭い範囲の知り合いになりがち。企業PRとしてSNSを利用する場合でも、既存顧客向けに限定されるなど、狭い範囲の盛り上がりになってしまう。また、レイアウトに関しても細かなカスタマイズができない場合が多かった。
Voxはブログの持つリッチな表現能力とSNSに近い安心感を両立した両者のいいとこ取りを狙ったサービスである。10月26日に、日米仏の3ヵ国で同時公開されて以降、会員数も順調に増え、現在全世界で約15万人(そのうちの10~15%が日本国内ユーザー)が利用している。mixiなど既存SNSサービスに比べると、近い趣味を持ったユーザーを見つけるための、コミュニティー機能に弱さを感じるが、今後この点に関しても順次改良を行なっていく方針だという(現状でもタギングなど、近い趣向のユーザーを見つける仕組みは持つ)。
Voxの収益モデルは広告収入を基本としており、登録ユーザーは無料で利用できる。今後はポータルサイトへのライセンス提供なども検討していく方針だという。