NTTアドバンステクノロジー(株)(NTT-AT)は、“次世代インターネットの現状と今後の展望”と題するセミナーを開催した。同セミナーでは、電気通信大学の三木哲也教授が“次世代インターネットの技術課題と展望”、(株)KDD研究所の小西和憲主席研究員が“インターネット2と次世代インターネット、現状と展望”について、それぞれ講演を行なった。
●“次世代インターネットの技術課題と展望”~三木哲也電気通信大学教授
三木哲也電気通信大学教授 |
電気通信大学の三木哲也教授は、“次世代インターネットの技術課題と展望”という講演の中で、今後必要となるネットワークの回線容量に関する試算結果を発表した。同教授は、今後の日本において、1億人の一般回線利用者と100万人の専用線利用者が存在すると仮定した場合のバックボーン、地域ネットワーク、LAN(Local
Area Network:企業以外のLANも含む)のそれぞれに必要な回線容量を試算した。
その結果は、バックボーン回線が20Tbps、地域ネットワークが2Tbps、LANが0.4Tbpsというものだったが、同教授は、「20Tbpsというと、とてつもなく大きい容量が必要で実現するのは、遠い将来のことだと感じられるかもしれないが、夢のような話ではない。すでに1Tbpsの回線のプロトタイプは、NTT(日本電信電話(株))などで開発されている。この分野の技術の進歩を考えれば、20Tbpsのバックボーン回線もそう遠くないうちに実現するのではないか」と語った。
また、回線容量が十分満たされていない段階では、「プロトコルの工夫による伝送遅延の解消や、ルーターとATMの使い分けをすることで伝送速度を向上させることが考えられる」と述べた。また、ソフトウェアについては、「セキュリティーの確保や有害コンテンツの排除などは、アプリケーションのレベルでもう少しきめこまかい対応をする必要がある」との見解を示した。
●“インターネット2と次世代インターネット、現状と展望”~小西和憲KDD研究所主席研究員
小西和憲KDD研究所主席研究員 |
KDD研究所の小西和憲主席研究員は、“インターネット2と次世代インターネット、現状と展望”という講演の中で、“Internet2”などの、現在アメリカで進められている次世代インターネットのプロジェクトを紹介した。
小西氏は、「こうしたアメリカのプロジェクトに、日本の政府や企業も注目している。アメリカは、投資に対しては何らかのリターンを求めるのが当然のため、次世代インターネットでも、回線品質の大幅な向上とそれによる産業の活性化という大きな投資効果をえることは間違いない。現状ですら、日本はアメリカに遅れをとっており、これ以上差をつけられてはかなわない、というのが正直なところだろう」と、日本政府や企業の置かれている状況を説明した。
小西氏によると、アメリカの主な次世代インターネットのプロジェクトは、アメリカ政府が中心になって進めている“NGI(Next
Generation Internet)”と、大学が中心になって実験を進めている“Internet2”の2つという。
“NGI”は、ホワイトハウス(大統領官邸)の中にアドバイザーや事務局をおいて進めているプログラムで、大統領の指揮のもとに進められている国家的なプロジェクトである。'99年の予算は、1億1000万ドル(約132億円)を予定している。
一方、“Internet2”は、全米の大学135校が参加しているプロジェクトで、1校1年につき2万5000ドル(約300万円)の会費を支払うもので、135校合計で337万500(約4億円)の予算で運営されている。このほか、ゴア副大統領が5億ドル(約600億円)の支援を行なって運営されているという。
「NGIのバックボーン回線“vBNS”と、Internet2のバックボーン回線“Abliene”は相互に接続が可能となっている。当初は、別々のプロジェクトのため、相互接続は認められていなかったが、プロジェクト参加者からの要望が高まって、結局相互接続が認められるようになった。こういう点がアメリカのインターネットにかける意気込みを示している」と小西研究員は語った。