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“デジタル小津安二郎展~キャメラマン厚田雄春の視~”開催

1998年12月09日 00時00分更新

文● 報道局 西川ゆずこ

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 “デジタル小津安二郎展~キャメラマン厚田雄春の視(め)~”が東京大学総合研究博物館で12月10日から'99年1月13日まで開催される。今回の展示では、映画監督小津安二郎の撮影監督を務めた厚田雄春氏の遺品をはじめて一般公開すると共に、両氏が一緒に手掛けた全15作品の資料、年月を経て劣化が進んでしまった映画資料のデジタルアーカイブなどを展示する。また、小津監督の戦前のサイレント映画『その夜の妻』を、坂本龍一氏が映画のために新規に作曲した音楽と併せて館
内のシアターで上映する。

デジタル技術で映画を蘇らせる
デジタル技術で映画を蘇らせる



 時代とともに、映画のフィルムは劣化してしまう。「映画は重要な文化遺産の1つである」との立場にたって、同博物館では、最先端の画像処理、デジタル技術を用いて、小津監督作品を見事に蘇らせている。今回、はじめて公開するデジタルアーカイブは『東京物語』の一部(約5分間)である。ここでは、映画のフィルムを高精度スキャナーで取り込みアーカイブ化して保存している。このままでも、十分に資料的価値があるのだが、同展示会ではさらに一歩踏み込み、コンピューターの技術を用いて映像の修復を行なっている。古いフィルム特有の白いちらつき、コントラストのぼけもなく、小津作品が生き返ったかのようだった。

小津安二郎氏と厚田雄春氏小津安二郎氏と厚田雄春氏



厚田雄春氏の手帳
厚田雄春氏の手帳



「時代のあるものを修復することに関して、さまざまな論議があるが、何よりも重要なのはこれらの資料を、“今”デジタルにしないと無くなってしまうということです。

 現在、1秒24フレームの1時間の映像を、デジタル化すると約4TBの容量になります。費用で言うと、実に数百万から数千万かかります。現状ではコストの面から、全ての映画資料をデジタルアーカイブ化することは難しいのですが、アーカイブをコンピューター修復した後の映像を見ても分かる通り、映像の修復にも大変に適しているものでありまして、今後デジタル映像修復に感心が高まることを期待したい」と、東京大学総合研究博物館教授の坂村健氏は語った。

『東京物語』の一画面
『東京物語』の一画面



 また、同展示会では、複数のユーザーが同時にマルチメディア3次元仮想空間を体験できる“MMMUD(Multi Media Multi User Dungeon)を設置し、仮想空間内にバーチャルな小津映画の和風建築のセットを再現している。この空間では、セットのほかに、映画の台本を陳列する仮想博物館があり、通常の展示会ではガラスケース越しに、見開きしか閲覧できないものを、同空間内で実際の台本を見るかのようにページをめくって閲覧できるようにしている。

 ここでは、小津氏、厚田氏にまつわる資料を一挙に展示しており、従来からの展示物に最先端技術の味付けすることで、小津安二郎氏の世界をさらに広く、奥深くまで探求できるような展示に仕上がっている印象を受けた。

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