アカデミー賞を11部門で授賞した映画『タイタニック』のデジタル映像を制作した、米デジタル・ドメイン(Digital
Domain)社の社長、スコット・ロス氏が来日し、『タイタニック』のデジタル映像技術について語った。
スコット・ロス氏は、ルーカス・フィルム入社後ILM(Industrial
Light & Magic)の所長および同社の副社長となり、その後『ターミネーター』や『タイタニック』の監督ジェームズ・キャメロン氏とともにデジタル・ドメイン社を設立。現在、東京マルチメディア専門学校の名誉技術顧問に就任していて、今後同校の“あすかデジタル工房”にハード、ソフト両面のアドバイス、教材の監修、特別講話などを行なうという。
席上ロス氏は「86年前の3日前、1912年の4月14日にタイタニックは沈没した。こういったタイミングで日本でタイタニックについて話すのはとてもうれしい」と同作品のメイキング映像を上映しながら、デジタル映像についての解説を行なった。海の上をタイタニック号が滑るように進むシーンでは、船の模型と、モーションキャプチャーした人間のデジタルデータ、緻密な計算により再現された水面の波や波頭、鳥や旗などを組み合わせて、リアルな映像を作る工程を解説した。同社ではモーションキャプチャーしたデータを編集するソフトを開発し、カット&ペーストで人間の落下シーンなどのスタントシーンを制作したという。
技術についてロス氏は、「テクノロジーは人の心を高めるために使うべきだ。タイタニックはテクノロジーではなく愛についての映画。参加できたことに大きな喜びを感じる。コンピューターはハードの時代から、ソフトの時代へ、そして今、コミュニケーションツールとしての時代になっている」と語った。
なお、同作品のデジタル映像はディジタルイクイップメント(DEC)のAlphaプロセッサーベースのWindowsNTワークステーション上で米NewTek社のLight
Wave 3Dを使い制作されたことに関して「WindowsNTプラットフォームがDECによりローコストで使えるようになったことは歓迎している。Alphaマシンはポリゴンを大量に扱うときにとても優れている。タイタニックの中では約10パーセントのシーンがDECのAlphaプロセッサーベースのWindowsNTワークステーション上で作られている。デジタル・ドメイン社内でいうと、まだほとんどの作業はUNIX上で行なっている」と現状を語った。(報道局
庄田恵美)
・デジタル・ドメイン
http://www.d2.com/
・ILM
http://www.teleport.com/~ilm/