(株)日立製作所ソフトウェア事業部は、プレス向け説明会を開き、同社の企業向けソフトウェア事業戦略を明らかにした。同社が注力しているのは、企業内で使用されている多くのアプリケーションを、業務プロセスに従って統合する“EAI(Enterprise
Application Integration)”と呼ばれる技術。同社では、EAIはウェブベースで実現するアプリケーションサーバーの販売を世界的に展開していく、としている。
日立製作所のソフトウェア事業説明会 |
説明会では、同社の情報・通信グループ
ソフトウェア事業部長の山本章治氏が同事業部の基本的な姿勢について説明した。現在のインターネットサービスでは、ウェブを使った単なるサービスの提供から、複数のサービスが連携した統合サービスに移行しつつある、と指摘。例えば観光旅行に行く際、別々に行なっていた航空券やホテルの予約が統合され、1つの窓口からすべて可能になる、といった具合だ。
「社会がインターネットで接続される時代では、インフラ構築が一番の鍵となる」と語る山本氏 |
このような企業情報システムの統合を実現するために同社が取り組むのが、JavaやXML、CORBAを基盤にしてメインフレームとサーバーをつなぐウェブベースのインターフェース開発、SCMやERPなど企業のバックエンドサービスの基盤構築、サービス連携を可能にするEAI技術だという。
「柔軟性と堅牢性、スピードを兼ね備えたEAI製品により付加価値の高い企業情報システムを提供していく」と話す織岡氏 |
続いて同事業部ネットワークソフトウェア本部副本部長の織岡一夫氏が、同社のEAIビジネスについて解説した。織岡氏は「ウェブベースでのシステム構築が進み、電子商取引が本格化、ERPやSCMといったパッケージの導入が拡大している現在、企業情報システムにはアプリケーションの統合やシステム変更に対する柔軟性を持ちつつ、プラットフォームがオープンであることが求められている。これらの条件を満たすのがEAIだ」とした。
EAIでは、企業内で孤立しているシステムの連携を図るのが狙いで、ERPなどもコンポーネントとして扱われ、ウェブを標準のインターフェースとして統合する技術だ。従ってEAIには、既存システムや異種アプリケーション間でデータを変換、接続するサービスが含まれる。その上で、企業における業務プロセスの流れと関連づけてシステムの統合が行なわれる。オンラインショッピングを例にとれば、注文の受付、販売情報の更新、代金の引き落とし、顧客データベースへの登録といった一連の流れをビジネスプロセスとしてとらえ、流れに沿ってシステムが統合される。
織岡氏は、「これまでの企業システムでは、各業務ごとにサブシステムを個別に開発していたため、業務が分断されてしまっていた。EAIでは、ビジネスプロセスを鳥瞰的にとらえてシステムを設計、プロセスの各地点で必要になる業務処理(ビジネスロジック)を既存システムに当てはめていく。既存システムを活用しながら、企業の成長に合わせて用意に全社のシステムを変更させる柔軟性がある」とし、EAIの利点を強調した。
「Cosminexusでは、メインフレームやデータベースといった既存システムを、1つのインターフェースで統合できる」という露木氏 |
EAIを実現する同社の製品として、同本部第3ネットワークソフト設計部の露木陽介氏が、アプリケーションサーバー『Cosminexus(コズミネクサス)』を紹介。事前に定義したルールで情報や作業の伝達を自動的に行なう“ワークフロー”技術を中心に、さまざまなビジネスプロセスの開発に対応。さらに多数のクライアント接続に耐えうる堅牢性と、十分なセキュリティーを併せ持っているという。
「米国では、EAIの基本となるミドルウェアを販売して実績を作った上で、ソリューション販売も開始していきたい」と語る齋藤氏 |
同社が米国に持つ日立コンピュータプロダクツ社ソフトウェアソリューションディビジョンのシニアバイスプレジデントである齋藤眞人氏は、EAIビジネスの北米展開について語った。米国内では、電子商取引市場の拡大に伴い各企業がオンライン取引システムを構築。アクセス数も増え続けているため、「信頼性の高いシステムの長期サポートと柔軟なシステム構築が求められている。多くの企業は、既存システムのウェブ化と統合に強い関心を持っている」という。
北米での事業目標については、EAI関連製品の販売経路の確保と、世界的に展開する日本企業のサポートに重点を置く。また米国マーケット事情に合わせた製品の企画と開発も行なっていくとした。