【World PC Expo Vol.34】「男の固定観念からは、女性にうれしいモバイルツールは生まれない」--“Ladiesフリートーキング”から
1999年09月17日 00時00分更新
有名人ユーザーと、開発担当の女性の本音が炸裂!
最終日に行なわれたLadiesフリートーキング“モバイルは男だけの道具じゃない!!”は、仕事やプライベートでモバイルツールを使っている女性5人をパネリストに招いたディスカッション形式のフォーラム。女性にとってのモバイルとはどういったものなのか?
という疑問を、その活用法や、女性向きモバイル機の開発秘話などを語ってもらうことで解決していこうという趣旨である。開演の13:00には会場は満席で、他のフォーラムに比べて、やはり女性が多いように見受けられた。
司会を務めた『日経モバイル』編集長の真下佳樹氏は、モバイル上級者の女性たちの活発な意見に、たじたじの様子 |
モバイルの役割は、使い手の目的に応じて変わる
最初の話題は、モバイル後のライフスタイルの変化について。「モバイル機器を使うことによって、家庭の外でパソコンを使うということだけでなくて、家庭内でも移動ができるようになったことが大きい」と松本氏。書斎でもリビングでも、好きな環境を選び、人間のいきたいところで仕事ができるという開放感が嬉しくてたまらないという。
藤森氏は、仕事柄移動が多いため、もっぱら外で使っているようだ。「メールも書きますが、デジカメも一緒に持ち歩いていますので、撮った画像を添付して送ることもありますね」と、いかにも楽しそうな口ぶり。モバイルの持つコミュニケーション力の大きさを強調した。
小柄ゆえに、現在使っているモバイルギアでも大きいという松本氏 |
デビュー作もパソコンを使って執筆していたという松本氏は、ベージュの絽縮緬に、ききょうなどの秋らしい柄の入った着物姿で登場。小柄ゆえに、フィットするキーボードが見つかりにくく、現在使っているモバイルギアでも「大きいくらいなんです」。
「デジカメも一緒に持ち歩いているので、撮った画像をメールに添付して送ることも」と藤森氏 |
ロングドレスを、しゃきっとした姿勢で着こなしていた藤森さんのモバイルライフは、パソコン関連の番組に出演したのがキッカケとか。「他のパネリストの皆さんに比べたら、まだまだ初心者」と謙遜する。
割り切り型やユーザーコミュニティー開発型
『Palm』でおなじみのスリーコムを代表して出席した漠城かおる氏は、海外出張の多い日常生活において「モバイルは、なくてはならない」と言い切る。「当社の製品は、オープンフラットフォームですので、世界中のユーザーが開発したソフトが出回っている。たとえば、時差を計算するものとか、国際電話の番号を検索するものとか……。自分のライフスタイルに合わせて利用するといいですね」と、商品の特徴をアピールした。逆に、機能を絞り込むことによって、モバイルを身近にした商品もある。
『ポケットボード』の誕生について、NTTドコモの増田智子氏は、“メールしか使う予定がない”という友人に、パソコンの購入について相談されたことがヒントとなり、「女性は、メーラー機能さえあれば、他に何もついていなくても安くてカワイイ方がいいと、割り切っている人が多いと判断した」と語った。ライバルともいえる『igeti』でも、「従来のザウルスは、性能をアップすることで、男性ビジネスマンの買い換え需要を押さえてきたが、ビューアーのみに機能を絞り込むことで、女性や若者を中心とする新規ユーザーの獲得につながった」と、シャープ・生活ソフトセンターの岡坂由美子氏が胸を張る。
モバイルとは関わりの深い3社からも開発サイドの女性が出席。左から、シャープの岡坂氏、NTTドコモの増田氏、スリーコムの漠城氏。彼女たちは、作り手であると同時に“モバイルユーザー”の1人でもある |
女の心、男知らず……。トラブルに強く、性能を冷静に見極める女性たち
パネリストたちの、モバイラーぶりに圧倒されていた真下氏が、担当するモバイル専門誌の新しい読者として女性が急増していることに触れ、そういった初心者ユーザーがステップアップしていく上での関門と、それをクリアする方法について、先輩モバイラーたちからのアドバイスを求めた。藤森氏が、「カスターマーサービスって、まるで私の部屋を覗いているかのように、画面の説明を丁寧にしてくれて、とても親切。トラブルのときは、よく電話を掛けています」といえば、松本氏もこれに賛同。さらに、「パソコン通信で質問するのもいいですよ。フォーラムに書き込みをしたら、数時間後には答えがもらえます。ネットワークの力ってすごいですね」と体験を語った。
失敗を重ねて、いろいろな経験をして覚えてきたという2人は、最終的には自分の目的意識が大切と強調。松本氏は「原稿を書いて、作家になるんだと思ったから、何百枚もの原稿を書くために、ワープロを、そして、その元になるデータを取るために、パソコンでネットワークに接続する必要があったんです。海外の文献なども、ネットならすぐに閲覧できるんですから」--。
周辺機器を含めたトータルなデザインへ
続いて、話題は最近のパソコンのデザインのことへ。「本体だけではなく、周辺機器も含めたトータルなデザインを考えています。女性はハンドバックに入れることを想定して商品を探すので、男性に比べてアクセサリー類が好きなんですよ」と、男女の持ち運び方の違いについて漠城氏が説明すると、増田氏も「他人に自慢するときに、男性はソフトやCPUなどスペックの説明をする。ところが、女性の場合は、プリクラを張ったとか、ストラップがカワイイとか、そっちにいく」とエピソードを披露した。
これだけ乙女ゴゴロがわかっている彼女たちも、それを作り手に説明するときは、苦労したようだ。
「技術者は男性ですし、年齢も上ですから……。試作品ではど・ピンク色のものを見せられましたし、スケルトンにしたいといったら、基盤を見せるなんてと、誰も理解してくれませんでしたね」(増田氏)。
岡坂氏も、女性をターゲットにしたわけではなかったテリオスCEが、意外に女性に売れたのは、「シンプル」、「中世的な魅力」、「女性にちょうどいい(=男性には小さめ)サイズ」だったのかもしれないと分析した。
パネリストたち自身のモバイルツール選びの基準では、色やフォルムよりも、キーボードの打ちやすさや、軽さ、電池の持続時間を重視している点で意見が一致。“iモード”についても、小さくて、常に身に着けているツールで、機能も充実してきている、と評価が高い。
ここで、松本氏が「大好きなんですが、講演会でキティというわけにもいかなくて」と限定発売のポケットボードについて触れると、増田氏から「今後も、キャラクター路線というのは考えていますよ」と思わせぶりな発言が飛び出した。
これが3万台限定発売のキティ版・ポケットボード。性能は同じだが、専用ケースがついている。どうやら、この冬には“キャラクターシリーズ”第2段が投入されるようだが…… |
フリー向けスケジューラー、有名ブランド版のポケットボード…etc。将来のモバイルツールへの夢と要望が続々と!
モバイルライフ賛美が続く中で、唯一不満の声が挙がったのが、“スケジューラー”について。「変更が多いので、対応しきれなかった。立ち上げるのに、時間が掛かるでしょ?」(藤森氏)、「多分、企業組織におられる方向けに作られているから、フリーには向かないのでは?」(松本氏)という意見は、モバイルツールが主婦やSOHOにも人気が高いことを考えれば、無視のできない声かもしれない。
未来のモバイルへの希望は? という質問に、増田氏が「個人的には、ブランド物のポケボを作ってみたいんですが」と発言し、場内は笑いとどよめきの渦に。岡坂氏が「電車の中吊り広告で週刊誌の見出しをみて、“読みたいな”と思ったら、本屋に行かなくても、その場でダウンロードできるなど、ユーザーの願望を形にしていけるように、作る側は頑張らねば」と抱負を述べると、作家である松本氏が“日本電子出版コンソーシアム”の発足について紹介し、デジタル化することで書籍は安く配布することもできるだろうと説明。
司会の真下氏が、「こちらの仕事がなくなりそうだな」と冗談まじりのコメントをもらし、ディスカッションを終えた。
服部貴美子(hattori@ixicorp.com)
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・松本侑子氏ホームページ
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・日経モバイル
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・【関連記事】WORLD PC EXPO 99 レポート目次
http://www.ascii.co.jp/ascii24/
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