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スマホあきらめたFirefox OS、実はIoTプラットフォームへの転換を進めていた!

2016年04月12日 07時40分更新

文●Elio Qoshi

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Firefox OSはまだ終わっていませんでした。Web開発者ならむしろもっと注目すべきかもしれません。

モジラがスマートフォン向けのFirefox OSの開発を打ち切るという話は、すでに報じられているとおり。アップルとグーグルという2大巨頭によるモバイル業界の寡占と3年以上にも及ぶゲリラ戦の後、モジラは勝利の望める新しい戦いを始めようとしています。すなわち広大な「モノのインターネット(IoT)」という、まだぼんやりとした世界です。

Firefox OSはいま、接続デバイス(Connected Devices)分野に転換しようとしており、IoTによるイノベーションの一端を担おうとしています。モジラは、IoTブームが10年前のスマートフォンブームよりさらに大きなものとなると予測しています。Firefox OSのように、競争相手との大きなギャップを埋める必要はIoTの世界にはありません。「モノのインターネット」はまだ新しい分野であり、新しいプレイヤーがそのビジョンを形作れるからです。

その一方で、Firefox OSはコミュニティにより維持されるプロジェクトに移行しつつあります。つまり、2016年以降、Firefox OSプロジェクトに割り当てられるモジラのスタッフはいなくなるとのこと。さらに、プロジェクト名を「Boot to Gecko (B2G)」と改名することがコミュニティフォーラムで発表されました。

モジラはこの接続デバイス戦略により、IoTの世界における立ち位置の確保を狙います。

この後、IoT世界の表舞台に上がるために、モジラが進めているIoTプロジェクトについてお話しましょう。

注:すべてのプロジェクトはまだ初期段階であるため、2016年を通じてその多くが合併、分割、変更になるでしょう

FlyWeb

FlyWebは、Firefoxのクリエイターたちが新境地を開けると待ち望んでいる、モジラの具体的なプロジェクトの1つです。FlyWebはWebアプリケーションのアーキテクチャをローカルエリアでも使おうとするプロジェクトの内部コードネームです。

FlyWebは、ローカルエリアのトランスポート・プロトコルを使用して、Webアプリケーションのセッションが確立している2台のコンピュータ(片方はユーザーが制御するスマートフォン)を作動させるために、ローカルエリア・ディスカバリー機構の使用を提案しています。

このセッションにおいて、片方のコンピュータはWebサーバー、他方はWebクライアントとして動作します。スマートフォンはローカルエリアのWebクライアントとして動作し、その周囲にあるWebサーバーとして動作しているコンピュータのサービスを利用します。さらにスマートフォンはローカルエリアのWebサーバーの役割を果たし、その周囲の他のスマートフォンにサービスを提供します。別の言い方をすると、Webアプリケーションのアーキテクチャが、その周囲の端末にサービスを「プッシュ」するために使用されます。

FlyWebの核心部分にあるのは非常にシンプルなアイデアです。すなわち、スマートフォンがクラウドのみとやりとりをするだけでなく、テレビ、プロジェクター、ゲームコンソールなど、周囲でWebクライアントを作動させている電子機器を見つけて、相互作用できるというものです。電子デバイスは電話と接続されるとオンの状態になります。重要なのは、電話が電子デバイスに対してWebアプリとなるか、あるいは電子機器が電話に対するWebアプリとなるということです。

モジラは現在、接続デバイス/IoTはスマートフォンがもたらした革命よりもさらに大きな革命の一部となる、というビジョンを念頭に、その多くのエネルギーとリソースを再割り当てしつつあるようです。

FlyWebのごくごく初期のデモが“Mozilla Festival London 2015”において発表され、その可能性を示しました。

FlyWebプロジェクトは新しい接続デバイス戦略の非常に重要な部分となると思われます。(辛抱強く待つかわりに)さらによくプロジェクトを知りたい場合、Mozilla Wikiを参照するとよいでしょう。

CHIRIMEN

CHIRIMENは、センサーやアクチュエーターなどの物理的な物や機器をWeb技術を通じて制御する環境を開発するプロジェクトです。コンピュータ上の仮想現実的なモノ(コンテンツ)も物理的なモノ(デバイス)も同時に動かすことができます。このプロジェクトはソフトウェアだけでなくボードコンピューターも含み、次のようなもので構成されます。

  • ボードコンピュータ
  • Boot to Gecko OS(無印のFirefox OS)
  • 低レベルAPI(WebGPIO、WebI2C)

CHIRIMENプロジェクトは間もなく、あらゆるデベロッパーがCHIRIMENを利用して、Webを介した接続デバイスの実験ができる、さらなるハードウェア・ソフトウェアのコードの公表を予定しています。この公表は純粋に法的な理由です。日本のモジラはすべてがスムーズに運ぶように、現在、著作権およびライセンス権の承認の手続きをしています。

CHIRIMENの素晴らしいところは、Webのデベロッパーが新しいフレームワークやプロセスにワークフローを合わせることなく、通常の環境で作業が継続できることにあります。

現在のところ、できることは多くはありませんが、その後の進展を見守る価値のあるエキサイティングなプロジェクトです。詳細はCHIRIMEN websiteまたはMozilla Developer Network を参照ください。

Raspberry PiにおけるFirefox OS

モジラのスタッフはこれまでFirefox OSをRaspberry Piに移植する努力を続け、興味深い結果が生まれました。設定を変えることなくRaspbianで作動するFirefox OSのバージョン、“Foxberry Pi”について少し説明しましょう。

注:Foxberry Piはまだデモの段階であり、非常に不安定です。慎重に使用してください

Raspbianは、Raspberry Piのために最適化された、Debianを基礎にした無料のOSです。Raspberry Piを動作させる基本的なプログラムやユーティリティのセットになっています。しかしRaspbianには、Raspberry Piへ簡単にインストールするために適切なフォーマットにまとめられた3万5000以上のパッケージや、あらかじめコンパイルされたソフトウェアが付属していて、純粋なOSよりはるかに使いでがあります。

これ以上、不必要に深入りしないために、ステップ・バイ・ステップガイドを見るか、Mozilla Wiki でチュートリアルを参照しましょう。

Raspberry Pi上でFirefox OSの作動を試すための詳細については、Hacking B2G Mozilla Wiki pageを参照してください。

注:B2G、すなわち「Boot to Gecko」とは、無印のFirefox OSプロジェクトの名前です。Firefox OS テクノロジーがモジラ以外で使用される場合は常にこう呼ばれます。さらに、Firefox OSは現在ラズベリーパイ2に移植中ですが、これについての新しいニュースはこの数カ月のうちに発表されるでしょう

Link

Linkプロジェクトは、スマートフォンのエージェントが、単独で「モノのWeb」(Web of Things)を作成できるように目指すものです。個人データを第三者に預ける代わりに、Linkエージェントはユーザーの意志で家庭内の機器との接続を自動化できます。これらすべては簡易かつ安全に、ユーザーの完全な制御下でできます。

プロジェクトはまだ初期の段階ですが、そのGitHubリポジトリを見たり、LinkプロジェクトについてMozilla Wikiで調べたりできます。

SensorWeb

SensorWebもまだ非常に初期の計画段階にあるプロジェクトです。プロジェクトへの参加者が環境情報を収集するセンサーを使用すると、SensorWebはオープンデータへの最短接続経路を見つけます。SensorWebは大気汚染のためのクラウドソーシングPM2.5センサーネットワークを構築するパイロットプロジェクトを立ち上げています。詳細(といってもまだそれほどないのですが、数カ月のうちにさらなる詳細が更新されるでしょう)は、Mozilla WikiページのSensorWebの項を参照してください。

モジラより

モジラより

Smart Home

Smart Homeもまた初期段階のプロジェクト概念です。その名称が示唆するように、Smart HomeプロジェクトはApple Homekit のようなセット売りのソリューションとRaspberry Piのような自分で作るソリューションの中間サービスの提供を狙いとしています。モジュラー式の手頃な価格のハードウェアを使用し、簡単なルールとの組み合わせを考えています。Mozilla WikiページのSmart Homeで更新情報を参照してください。

Vaani

ここまでに紹介したほかのプロジェクトと異なり、Vaaniは2015年夏に始まりました(これについては昨年SitePointで書きました)。Vaaniはモジラがサポートするオープンなテクノロジーを利用して「モノのインターネット(IoT)」に音声機能を拡張します。

接続デバイスの操作はボイス・インタフェースがもっとも自然な方法だと考えていますが、現在、大規模で利用可能なオープンソリューションはありません。Vaaniにより、どこかの主要メーカーに規制されることを避けながら、柔軟でカスタマイズ可能な方法でデバイスにボイス・インタフェースを追加したいデベロッパー、デバイス製作者、エンドユーザーにIoT向けパッケージの提供を計画しています。

Vaaniは、当初は小規模の家庭をターゲットにしていますが、最終的にはIoTの広範なアプリケーションに音声機能使用を組み込むことを目指します。Mozilla WikiページのVaaniに発表される新しいニュースに注目してください。

たくさんのIoT

IoTの分野はまだ初期段階ではありますが、モジラは真っ向からチャレンジしているようです。何らかのはっきりとした方向性には欠けているのは明らかですが、まだ市場が立ち上がっていないIoTの分野では驚くことではないでしょう。

(原文:Firefox OS Pivots into Connected Devices

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