図書館から発送していた時代もある
―― 漫画全巻ドットコムのビジネスモデルってマネされやすそうな気がするんですけど。
安藤 されますね(笑) 僕らが2006年7月にこのマンガを全巻一気に買えるサイトを作ったときは、僕ら以外に同じようなサービスをやっているサイトはありませんでした。マンガを全巻に絞った専門店という意味では、カテゴリーキラーとしてうまくいっているんだと思います。ネット上の書店って、巨大なAmazon.co.jpがあって、楽天やヤフーという企業が続きます。リアルの書店はどんどん潰れている。新たに参入すべき業界ではないですよね。でも、僕らは引きこもりセットの第一段階くらいの軽い気持ちでマンガのビジネスに入った。まったく違う方向から見ていたのが良かったんだと思います。
―― サイト製作には苦労されたとか。
安藤 最初は参考にするサイトがなかったので、どうやって作るか悩みました。いまは画面左に「少年・青年コミック」というタイトルバーがあって、その下に「集英社」「小学館」と出版社名を入れています。これはマンガを探すときに雑誌名から探す人が多いと思ったからです。サイトのデザインに関しては、表紙の画像をずらっと並べたいと思いました。最初どうしようかなと悩んでいたときにエッチなサイトでDVDのジャケットの写真がいっぱい並んでいるのを見て、「これだ!」と(笑) あと、「全巻」に対する言葉で、まだ終了していないタイトルを「続巻」としたのも僕らです。
―― 他社に抜きん出ることができたのはなぜだと思いますか?
安藤 いろいろなタイミングが良かったんだと思います。例えば、マンガを取り扱い始めてすぐに検索連動広告をしっかりやったんですよ。最初の50タイトルは常に上位になるようにしていました。当時はマンガのタイトルでリスティングしている企業がいなかったんで、うちもそんなにお金をかけなくてもやれたんです。それで知名度が高まった部分はあったと思います。
それから、このビジネスをやっていて思うのは、スタートさせるのは簡単なんですけど、売り上げが上がったときに維持するのが難しいんですよ。特にロジスティクスの問題が大きいですね。僕らは売り上げがぐっと伸びてきたときに、八王子にオフィスを借りたんです。そこは小学校の廃校で、図書館と教室を2つを安くお借りできました。図書館の棚にマンガを詰め込んでました。
―― 図書館! マンガをストックするには最高ですね。
安藤 そうなんですよ。倉庫としては申し分なかったんですが、問題は図書館が建物の3階にあったことですね。毎日200箱分の本を入荷してたんですが、毎日毎日1階に届いた荷物を上に運んでたんです。普通の小学校なんで、クーラーもないですし、毎日汗だくでした。1日の注文が多いときは100箱くらいだったんですが、スタッフ7人で必死に発送していました。図書館に3万冊くらいは在庫していたんですが、それでも、結局注文が多すぎてさばききれなくなり、あふれたダンボールが廊下に山積みになってました。ただ、少しずつ利益が出てきたので、2007年10月から物流をアウトソースできるようになり、いまは業者にお願いできるようになりました。こういったタイミングの積み重ねがとても運が良かったと思います。
あと、途中から新品を扱うようになって、出版社のサポートを受けられるようになったことも良かったと思います。
―― 出版社と共同でキャンペーンをやっているとか?
安藤 そうですね。例えば秋田書店さんと「ブラックジャックフェア」をやりました。これはブラックジャックを買ってくださったお客様に、フィギュアをプレゼントするものです。それまでぜんぜん売れなかったのに上位100位にランクインしました。
出版社のコミック担当の方はネット書店をきっちりカバーしていきたいと思っているそうですね。Amazon.co.jpやセブンアンドワイは企業規模が非常に大きくて、大きな話になりすぎる。われわれくらいの規模なら、テストマーケティング的に使えるというのもあるんですよね。最近は「話題のコミックのところに写真を出して」と出版社の方に言われることもあります。