2002年ころ、ウェブサイトに端を発して廃墟歩きが流行した。そして現在、工場やビル、巨大建造物などを扱ったサイトから次々に書籍やDVDが生まれている。5年の時を経て、再びウェブから、マニアな世界に親しむムーブメントが起きようとしているのだ。
その「建造物ブーム」の急先鋒といえるのが「ダムサイト」だ。
7年以上続く老舗サイトで、管理人自らが赴いて記事にしたダムは全国で合計180基に及ぶ。顔が見えるインターネット第12回は、「高い所は苦手だけど、ダムの上だけは下をのぞいても平気です」という管理人・萩原雅紀氏に、ダムの魅力を語ってもらう。
ダムサイト
2000年9月から運営しているダム専門サイトの先駆け。ダムのレポートだけでなく、専門用語集や基礎知識もまとめており、ダムについて一気に詳しくなれる。自サイトで企画した読者参加の「ダム巡りツアー」がさまざまな媒体で取り上げられたのをきっかけに、DVD「ザ・ダム」(アルバトロス)と書籍「ダム」(メディアファクトリー)を制作した。
ダム欲高騰中! だがサイト管理欲は低下中
── ダムサイトを含め、建造物を愛でるサイトが最近盛り上がっていますね。
萩原 そうですね。7、8年運営している個人サイトがいくつかあって、それぞれのコンテンツが充実したこと。そして、ある程度世間に認知されたことがきっかけだと思います。機が熟したという感触はありますね。
── マニアックな建造物を追うサイトはなぜか長生きな場合が多いですよね。多くのサイトは人気が出ても、モチベーションが低下して2、3年くらいで終わってしまいます。
萩原 僕もサイトを作るモチベーションはちょっと落ちているかもしれません。ただ、ダム欲は年々高まっていますね。
だから、僕がダムの写真と文章作るから、誰かサイト運営してくれないかって思うくらいです(笑)。もともと最初はこんなに長くやるつもりはなかったんですが、ダムを調べていくうちにどんどん面白くなってきて。
「貯水池じゃない! 『ダム』を見せてくれ」
── きっかけは何だったんですか?
萩原 サイトを始める2年くらい前、たまたま友人と神奈川で建設中だった宮ヶ瀬ダムまでドライブに行ったんです。だけど通行止めで、ダムの姿が見られませんでした。
以来、気になって2ヵ月に1回通ったんですが、1年後にようやく通行止めが解除されていまして。駐車場に車を停めて、山なりの遊歩道を進んでいくと、突然とてつもなく巨大なコンクリートの壁が目の前に現れたんです。もう、これはスゴイ!と感動しましたね。
それからはダムの虜になって、地図に載っているいろいろなダムを巡るようになりました。同時に、ネットでもダムの情報を得たいと思ってあちこち探したんですが、専門サイトが見付からなかったんです。
たまに日記で「ダム行きました」みたいなページを見付けるんですが、掲載されているのは貯水池をメインに撮った写真ばかりで、「そっちじゃなくて本体が見たいんだよ!」と(笑)。そこで、初めて自分でサイトを作ろうと思い立ちました。
── サイト運営ではなく、コンテンツ命のスタンスですね。更新時期が数ヵ月経って、一気に複数の記事がドンとアップされるのも納得です(笑)。
萩原 ダムを取材しに行くときは、1基だけで済ませることはまずなくて、複数回るんです。そして、その情報は一気に書いてしまわないとテンションが下がってしまうので、結果として一気出しになりますね。
僕はずぼらな性格なので、こまめに書くというのができなくて。mixiをやっても全然日記が書けないんですよ(笑)。
(次ページに続く)
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