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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第13回

「住宅都市整理公団」に見る、オタク的ではない趣味の愛で方

2007年12月10日 18時00分更新

文● 古田雄介

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 「住宅都市整理公団」の「総裁」こと大山顕氏は、建造物マニアの間で有名な存在だ。

団地

「住宅都市整理公団」は、東京周辺にある70年代に建設された団地をカタログ化しているウェブサイトだ。写真は大山氏が撮影したものになる

 自身のサイトで盟友・長野氏とともに団地を鑑賞するフィールドワークを展開する傍ら、@niftyのエンタメ系情報サイト「デイリーポータル Z」(以下、DPZ)では、陸上にあるテトラポットや、デパートで裸のままにされたマネキンなどに注目し、読者に新しい価値観を提供し続けている。

 風変わりな趣味に、エキセントリックな人物像を思い描きがちだが、実像の大山氏はいたって理性的だ。「身の回りにある面白いモノの『入り口』を紹介することだけに興味がある」と語り、そのアプローチの手段は確かに「オタク的」ではなかった。顔が見えるインターネット第13回は、高島平団地を歩きながら、そんな大山氏の思考回路を探ってみた。

住宅都市整理公団

住宅都市整理公団

 2000年からスタートした、団地ブームの始祖といわれるウェブサイト。カタログ風の体裁で全国の団地を紹介しているが、そのコメントの関係なさっぷりが好評を博している。同サイトからDVD「団地マニア」(エイベックス・マーケティング)が発売されたほか、2008年には2冊の団地関連本を発行する予定。姉妹サイト「日本ジャンクション公団」も始めた。



団地に物語を読み取るな!

 

── 団地に興味を持ったのはいつ頃ですか?

大山 11年前ですね。決まった構図やコントラストで淡々と形だけを追う撮り方で団地を撮影したら面白いと思い、同じ研究室だった長野と意気投合して始めました。工場写真で世界的に有名なベッヒャー夫妻の作品を参考に、薄曇りの日に通路側を正面にして撮るというのを原則にしています。

大山顕氏

数え切れないほど訪れたという高島平団地で大山顕氏を撮影。今年8月までは大手電機メーカーに勤めながらDPZなどで執筆活動を行っていたが、本の出版などで多忙を極めたため、現在はフリーとなっている

 

── どうしてもベランダ側しか撮影できないときは、残念そうなコメントを残していますよね。

大山 ベランダ側を撮すと洗濯物が見えてしまうので嫌なんですよ。僕は団地の形にしか興味がないので、生活感や団地にまつわる物語などは読者に感じさせたくないんです。

 団地はもともと色々な家族の物語を背負っているので、写真を見た人はすぐに団地の歴史やそこに住む人々の思いといった「団地物語」を読み取ってしまう。そういう方向ではなく、団地の形だけを見てもらうために、カタログ写真のように撮っているわけです。



レーダーチャートに意味はない

 
団地データ

住宅都市整理公団の団地データ。レーダーチャートには「ダンディ」「交通」「荒廃度」「コーヒー」「階数」「連続性」の6項目が並ぶ。写真の団地の中央には、後述する「オデキ」がある

── 生活感に興味がないといいつつも、団地を評価するレーダーチャートに「荒廃度」がありますね。

大山 あれは適当です。サイトを作るときにカタログふうに見えるデザインにしかったから、ああいうものを載せただけで、何の意味もないんです。大体、基準も「DANCHI」のアルファベットから取っただけですから。Dならダンディ、Cならコーヒーか、とか。

 

── 女性的だって評されている団地のダンディ度が高かったりしますもんね(笑)。

大山 もう適当ですからね。たまに「ダンディって感じよく分かります!」って読者もいますが、不思議だなあと思います。僕も分からないのに(笑)。

【高島平団地のここが好き】 ベランダ面

高島平団地

「全体的に素っ気ない感じはしますけど、ベランダの端に微妙なふくらみを持たせたりと、小洒落ていますよね。設計の人が何とか素敵な感じにしようと頑張ったんですよ」(大山氏)

 

(次ページに続く)

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