Insta360のドローンブランド「Antigravity」は、8K解像度で360度撮影可能な新型ドローン「Antigravity A1」を発売した。
ドローンと言えばジンバル搭載機が主流だが、本製品は、上向きと下向きの180度デュアルカメラにより360度全方位を8K同時撮影可能という、新コンセプトが最大の特徴だ。構図を決めてから飛ばすのではなく、とりあえず飛ばして、あとから映像を切り出すという、新たなワークフローが可能となる。
今回はAntigravityから試用機を借りたので、この新機軸ドローンでどのような飛行体験を得られ、どのぐらいのカメラ画質、使い勝手を実現しているのか、実機レビューをお届けしよう。
Insta360の全天周カメラ技術を投入した
世界初の新コンセプト・ドローン
「Antigravity A1」は、Insta360の360度カメラの映像技術をベースに開発された、新ブランド「Antigravity」初のドローンだ。最大の特徴は「360度全方位を8K解像度で撮影」できること。
機体前方の上下に配置されたデュアルカメラにより、飛行中に全方向の映像を記録。撮影後に自由な視点や構図で切り出せるという、従来の空撮ドローンとは異なる使い勝手を実現している。
またアクティベーションにはスマートフォンを使用するが、実際の飛行は、機体本体、ゴーグル、モーションコントローラーという組み合わせで行なう。つまり「目視外飛行」を前提とした製品というわけだ。
商品としては、標準版(20万9000円)、エクスプローラーキット(24万9000円)、インフィニティキット(26万3900円)の3種類を用意。それぞれに含まれるセット内容は下記のとおりだ。
なお1月3日までに購入し、48時間以内にアクティベーションしたユーザーを対象に、2回の交換、1回のドローン紛失を含む、衝突、水没、経年劣化をカバーする「Antigravity Care 1年間」(2万5000円)が付与されるキャンペーンが実施されている。ただし、対人、対物保険ではない点には注意してほしい。
【標準版】(20万9000円)
【エクスプローラーキット】(24万9000円)
【インフィニティキット】(26万3900円)
機体のプロペラアームは折りたたみ式で、「標準フライトバッテリー」装着時の重量は約249g。欧州における初心者、ホビーユーザー向けの250g未満ドローンのクラス「C0クラス」に該当。比較的制約の少ない運用が可能とされている。ただし、大容量バッテリー装着時は約291gとなり、この場合は「C1クラス」に変更される。
もちろんこれは欧州での話。日本では100g以上の機体は登録義務があり、空港周辺、人口集中地区、150m以上の空域での飛行は、原則として国土交通大臣の許可・承認が必要となる。また後述するが、「目視外飛行」はさらにハードルが高いことも留意する必要がある。
カメラは上下に1/1.28型イメージセンサーとF2.2レンズを1基ずつ搭載。360度動画は最大8K(7680×3840ドット)/30fpsでの撮影が可能。
また解像度を5.2Kに下げればフレームレートを最大60fpsに設定でき、4Kなら最大100fpsのスローモーション撮影も可能となる。静止画は、最大約55MP(10496×5248ドット)で記録できる。
360度映像は専用アプリ「Insta360 Studio」や対応サードパーティー製アプリで編集でき、ドローン本体を映像から自動消去する「ステッチング処理」にも対応。飛行時に構図を意識する必要がないので、「まず飛ばしてから、あとで映像を作る」という使い方が可能なわけだ。
飛行性能は軽量クラスの機体としては比較的高く、最大水平速度はノーマルモードで12m/s、スポーツモードで16m/s。最大耐風速は10.7m/s(風速レベル5相当)とされている。突風などに対して一定レベルの耐性が確保されている。
最大飛行時間は標準フライトバッテリーで約24分、大容量フライトバッテリーで最大39分。無風状態での最大航続距離は、標準フライトバッテリーで約13km、大容量フライトバッテリーで約23kmだ。
ただし、これらはメーカーによる特定条件での測定値。実際には画質設定や、風、気温などの影響により変動する。
障害物検知用に、前方および下方にビジョンセンサー、底面に赤外線センサーを搭載。これらを組み合わせることで、位置保持や安定したホバリングを実現している。ビジョン測位時のホバリング精度は、垂直・水平ともに±0.1mと謳われている。
測位衛星はGPS、BeiDou、Galileoをサポート。運用限界高度は約4000mだ。機体が軽いので突風には注意が必要だが、スペック的には高地飛行も想定されているわけだ。
映像伝送には「OmniLink 360伝送システム」が採用されており、最大伝送距離は約10km(FCC基準)。マルチバンド構成で、ライブビュー映像は最大2K/30fpsで伝送可能だ。
本製品最大の特徴は、専用の「Visionゴーグル」と「グリップモーションコントローラー」を組み合わせることにより、頭や手の動きに連動した「没入型操作」を実現していること。
直感的な操作と、まるで空中に浮いて周囲を見回すような飛行体験が可能だが、ゴーグル使用時は「目視外飛行」となる。国内運用時には各種法令に準拠するだけでなく、飛行前には申請が必要となる点にはくれぐれも注意してほしい。
機体本体には20GB、「Visionゴーグル」には30GBのストレージが内蔵されており、それぞれ最大1TBのmicroSDメモリーカードを装着可能。8K 360度映像はファイルサイズがかさむが、余裕をもって保存できるわけだ。
バッテリーの容量は、標準フライトバッテリーが2360mAh/16.9Wh、大容量バッテリーが4345mAh/31.1Wh。機体本体、または充電ハブ経由でチャージできる。充電ハブでは3本まとめて充電できるので、撮影現場ではバッテリーを入れ替えつつ、効率的に長時間運用可能だ。
「Antigravity A1」の操作性、体験、画質を
プロのドローンパイロットがチェック
前述のとおり、「Antigravity A1」を「Visionゴーグル」と「グリップモーションコントローラー」を使って操作する場合、「目視外飛行」となる。そのため今回は特別な許可を得たうえで、小江戸ドローンスクール(https://coedo-drone.jp/)でインストラクターを務める中澤達也氏に、「Antigravity A1」の飛行、撮影を行なっていただいた。
まずは実機で撮影した動画をご覧いただこう。この動画は、「Antigravity A1」で撮影したinsv形式の動画を、「Insta360 Studio」でMP4形式の360度動画としてエクスポートして、そのままYouTubeにアップしたものだ。
Insta360の360度カメラの映像技術を採用しているだけに、非常に高画質かつ、自然な360度映像に仕上がっている。デュアルカメラの「ステッチング処理」のつなぎ目はまったくというレベルでわからないし、プロペラやアームもいっさい写っていない。
Insta360最新の8Kフラッグシップ360度全景カメラ「Insta360 X5」をはるか上空に浮かしたような映像を、「Antigravity A1」は撮影できるわけだ。

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