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誰かに聞いてほしい、でも近しい人にこそ言いにくい仕事の悩み。この連載では、そんなお悩みの解決の糸口を一緒に考えていきます。
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今回のお悩みは「企業人としての、事業やプロジェクトの終え方」について
ASCII読者の皆さん、こんにちは!正能茉優です。
この連載「お仕事悩み、一緒に考えます。」では、今月も、読者の皆さまからいただいたお仕事に関するお悩みについて、一緒に考えていきます。
今月のテーマは、「企業人としての、プロジェクトの終え方、畳み方」について。
一社員として自身が立ち上げた新規プロジェクトの未来を悩む20代の会社員の方から、お便りが届きました。
直近私も、自分が担当している事業を“閉じる、畳む”判断を人生で初めてした経験があるので、その時に実際に考えたことや感じたことを踏まえつつ、お答えできたらと思います。
プロジェクトを閉じるべきかと思いつつ、決められません
私は現在、会社員として、社内での新規事業の起案を目指して、事業の卵のようなプロジェクトに取り組んでいます。メンバー2人と私の、3人で立ち上げたプロジェクトです。
もともとこうした「事業立ち上げ」に学生時代から興味を持っていたこと、さらには新卒で配属された部署においてどうしてもこの事業がやりたいと思うような課題を見つけたこともあり、強い思い入れのあるプロジェクトなのですが、実際に世にプロトタイプを出してみると反応が芳しくなく、畳むべきか、閉じるべきかと悩む日々です。
とはいえ会社員だからこそ、1年という締め切りこそ緩あるのですが、やかにじわりじわりと続けられるという環境にいることもあり、その環境のなかでもう少し時間をかけて「自分が実現すべきと考えていることが必要かを確かめたい」「まだ社会が追いついていないだけだから、時間がほしい」という気持ちを抱いている自分がいることもまた事実です。
正能さんは会社員としても自分のサービス・事業をリードするお立場にあると思うのですが、どういう時に、あるいはどういう条件がそろえば、自分の担当するサービスを畳もう・閉じようと決意されますか? また、過去そうした経験をされたことはありますか?
ご自身の会社とはまた違う意思決定になると想像しているので、 “会社員の正能さん”として答えてもらえるとうれしいです。
(タケシタさん(仮名)・27歳・会社員)
プロジェクトを閉じるという判断、決断
タケシタさん、はじめまして。
自分が思いを持って立ち上げたプロジェクトを閉じるか、続けるかという判断、それはもう、言葉にできないほどに難しいですよね。
それだけの思いがあって始めたことだからこそ、そしてその思いが揺らぎ始めている自分を自覚しているからこそ、閉じるにせよ続けるにせよ、ご自身の強い納得感が必要なフェーズにいらっしゃるのだなと感じました。
私は会社員としても、自分自身の会社でも、自分でプロジェクトを立ち上げたり回したりすることが仕事なのですが、やはり会社員としての判断・決断には、自分の会社とは違った特有の難しさがあります。
それは、「縦に横に連なる組織の中で、自分の意思だけでは決められないことが多いこと」と、そしてタケシタさんも書いてくださっていたように「良くも悪くも、緩やかに続けられてしまうこと」です。
前者は、会社員という組織の一員である以上、何らかの意思決定権限・プロセスのはざまにいるのであり、自分の意思だけでは決めきれないことも多いというよくある話です。事業目標や予算の持ち方なども、縦に横に連なる組織の中で、自分の意思や思考の及ばない範囲で決まってしまうということもあるでしょう。
後者については、これはあくまでも私の経験上の話ですが、会社員は、会社という組織のルール、スタンダードに守られた存在であり、自身で起業する時に比べると、「最短・最速で成果を出す」というよりは、「少し時間がかかっても、緩やかに遠くにいけるようにする」といった成果の出し方になる感覚が、私の場合はありました。
ゆえに日々こなしていく本質的な判断の質も、かかるストレスの質も、何もかもが違うわけなのですが、「少し時間がかかっても、緩やかに遠くにいけるようにする」という前提があるからこそ、成果を求められるプレッシャーも緩やかで中長期的な目標に向かっていけるのが会社員の良さであり(もちろん説明責任はありますが)、はたまた「グレーの状態でも続けられてしまう」という側面では悪さ、苦しさでもあると私は感じています。
自分の担当する事業の未来を今自分で決められる、ありがたさ
だからこそ、今回お便りをいただいたようなケースは会社員としては非常に稀で、会社員であるにもかかわらず、「自分で決められる」「今決められる」という2点においてとてもとても貴重な機会であると私は思うのです。
今はどうしても「どうしたものか」という気持ちが先立つと思うのですが、ここで一度「会社員なのに、自分で決められるんだ。今決められるんだ」という形で、今の状況をあえて“ありがたい状況”として噛み締めるのが、このあと重要な判断、決断をする上で必要な、感情の準備体操になるんじゃないかと思いました。
その取り組みは社会に必要か?社会に「いらない」と突きつけられたか?
その上で、お便りにあった「どういう時に、自分の担当するサービスを畳もう・閉じようと決意するか?」ということについてお答えさせてください。
ちょうど私も直近、会社員として初めて、自分が担当する事業を閉じる決断をしたのですが、その時には2つの問いについてとことん考えました。
「その取り組みは、社会に必要か?」
「その取り組みは、社会から『いらない』を突きつけられたか?」
前者に関しては、そう考えたからこそ立ち上げた事業だと思うので、割愛させていただきますが、重要なのは後者です。
社会に必要だと思ったからこそ立ち上げた、プロジェクト。
立ち上げた人は、きっとお客さまが、社会が必要としていると思っている。……で結果はどうだろう? 本当に社会に必要なのか? それともいらないのか?いらないのであれば、不要であると突きつけられたか? 突きつけられたとしたら、それは十分に突きつけられたか? 今後もその結論は変わらないか?
私が事業のクローズを考えた時には、こうしたことをとことん考えました。そして、社会にサービスを限界まで出して、実際にお客様に使っていただいて、とことん試しました。そして「ああ、今の社会にはこれは必要ないんだ。いつか必要かもしれないけれど、少なくともこの3年のうちには必要にならないだろう」と腹落ちした瞬間、閉じる、畳む決断をスッとすることができました。
事業を終える=負けにしないために
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