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ASCII Power Review 第231回

ポインティングデバイスとジェスチャーパッドは実際どうなのか?

ホームポジションにこだわった「一生使える」プロ向けキーボード「HHKB Studio」実機レビュー

2023年12月21日 10時00分更新

文● 写真 ジャイアン鈴木 + 編集● ASCII PowerReview軍団

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 PFUはポインティングスティックとジェスチャーパッドを搭載したHHKB(Happy Hacking Keyboard)シリーズの新たなハイエンドモデル「HHKB Studio」を発売した。

 従来シリーズは純粋なキーボードであったが、新型はポインティングデバイスとカスタマイズ可能なジェスチャーパッドを装備。キーボードから手を離さずにPC作業に集中可能なデバイスへ進化している。

 PFUから製品版を借用したので、HHKB愛用者として、使い勝手にスポットを当ててレビューをお届けしよう。

「HHKB Studio」実機レビュー

左が英語配列、右が日本語配列のHHKB Studio

HHKB伝統のキー配列を継承
スイッチはリニアタイプ静音メカニカルに刷新

 本製品はPFUの米国拠点で企画し、Huge Design LLC.のデザイン協力で開発されたHHKBシリーズのハイエンドモデルだ。東京大学名誉教授である和田英一氏が発案したHHKB伝統のキー配列を継承しつつ、ポインティングスティックとジェスチャーパッドを新搭載している。

 左右側面に1つずつ、手前側面に2つ搭載されたジェスチャーパッドでは、画面スクロールやウインドー切り替え、カスタマイズによりボリューム調整、写真や動画編集時の調整操作などが可能だ。

 キースイッチは従来モデルの静電容量無接点方式から、HHKBオリジナルの押下圧45gのリニアタイプ静音メカニカルスイッチを新採用している。打鍵感については好みが分かれるかもしれないが、静音性では「HHKB Professional HYBRID Type-S」よりもHHKB Studioのほうが上だ。

 またHHKB Studioのキースイッチはホットスワップ方式を採用。通常プロファイルのMXスタイルの3ピンおよび5ピンメカニカルスイッチ(Cheery、Gateron、Kailh製)と互換性を確保しており、好みのキースイッチに変更可能だ。

 カスタマイズできるのはキースイッチだけではない。HHKB Studio専用に「キーマップ変更ツール」を用意。一般的なキーマップ変更に加えて、ポインティングスティックとジェスチャーパッドの設定変更、カスタマイズした4つのプロファイルの保存、ショートカットキーの割り当て、ファンクションキーによるコンビネーション入力を4レイヤー(標準、Fn1、Fn2、Fn3)に増加……などの機能拡張が実施されている。

 配列は日本語と英語を用意。本体サイズは308×132×41mm、重量は日本語配列が830g、英語配列が840g(電池を含まず)。バッテリーは一生ものとして愛用できるように単3乾電池4本、またはUSBコネクターからの給電に対応。アルカリ乾電池使用時の動作時間は約3ヵ月が目安だ。

 接続方式はBluetooth 5.0(LE)Class2(最大4台)またはUSB Type-C(USB 2.0)。サポートOSはWindows 10(64bit)以降、macOS 11以降、Android 9以降、iOS 13.7以降、iPadOS 13.0以降とされている。

 大幅な機能強化、使い勝手向上を実現したHHKB Studioだが、円安の影響もあるのか直販価格で4万4000円とかなり高価な製品となってしまった。とは言え、HHKB Professional HYBRID Type-Sが3万6850円なので、追加された新機能を考えると妥当な価格設定にも思える。いずれにしても「一生もの」として買うべき製品と言えよう。

「HHKB Studio」実機レビュー

「HHKB Studio 日本語配列/墨」直販価格4万4000円

「HHKB Studio」実機レビュー

「HHKB Studio 英語配列/墨」直販価格4万4000円

「HHKB Studio」実機レビュー

ホットスワップ方式を採用。Cheery、Gateron、Kailh製などの通常プロファイルのMXスタイルの3ピンおよび5ピンメカニカルスイッチと換装できる

「HHKB Studio」実機レビュー

本体底面。4隅にゴム足が配置

「HHKB Studio」実機レビュー

底面のカバーを開けると、単3電池×4本のスペースとDIPスイッチが現われる。HHKB Professional HYBRID Type-Sのように電池ボックスが飛び出さなくなった

「HHKB Studio」実機レビュー

背面には電源スイッチとUSB Type-C端子を配置。電源スイッチはボタンからスライド式に変更され、見た目でオンオフを判別できる

「HHKB Studio」実機レビュー

底面の足を立てることで、キーボード面の角度は3段階で調節可能

「HHKB Studio」実機レビュー

「HHKB Studio 日本語配列/墨」の実測重量は921.5g

「HHKB Studio」実機レビュー

「HHKB Studio 英語配列/墨」の実測重量は912g

「HHKB Studio」実機レビュー

パッケージには本体、USB Type-Cケーブル、単3形アルカリ乾電池×4、ポインティングスティックキャップ×4、説明書類(LED表示・キー設定一覧、安全上のご注意、スタートガイド、【重要】本製品をご使用になる前に)が同梱

「HHKB Studio」実機レビュー

USB Type-Cケーブルの長さは実測91cm

「HHKB Studio」実機レビュー

ポインティングスティックキャップは予備が4個付属。ThinkPadの赤いキャップも利用可能だ

ジェスチャーパッドは予想外に便利
ワンタッチのON/OFFスイッチが欲しい

 HHKB Studioの使い勝手はすこぶるいい。キースイッチが静電容量無接点方式から、リニアタイプ静音メカニカルスイッチに変更されているが、個人的には静音性が向上しているだけでなく打鍵感もよくなっていると思う。キースイッチが交換できるが、個人的にはその必要性は感じない。

 しかし、将来的にキースイッチが故障しても、それだけを交換できるという大きなメリットがある。高価な製品だけにキースイッチを交換できるのは安心感が高い。

 ただし、いくつか気になる点がある。それはジェスチャーパッドだ。HHKB Studioは「ホームポジションから手を離すことなく」とプレスリリースに記載されているが、「HHKB Studioから手を離すことなく」という表現のほうが正確だ。

 ポインティグスティックや左・中央・右クリックボタンはホームポジションから手を離さなくても操作できる。しかし、ジェスチャーパッドは無理だ。スクロールなどひんぱんに行なう操作であれば、中央クリックボタン+ポインティングスティックのほうが手っ取り早い。個人的にはジェスチャーパッドは、ひんぱんには操作しないが、直感的にコントロールしたいボリューム操作などを割り当てたほうがよいと感じた。

 また、ジェスチャーパッドは意図せず触れてしまうことが多い。特にキーボードの位置をずらすために押したり、つかんだときに誤操作しがちだ。しかし、ジェスチャーパッドをまとめて無効化する機能をショートカットなどに割り当てられない。DIPスイッチでオンオフできるが、裏返して、DIPスイッチを切り替えるのは、さすがに面倒すぎる。ジェスチャーパッドをオンオフできる機能を、ファームウェアアップデートで実装されることに期待したい。

 あとは細かいところだが、3つのクリックボタンは手前側面に配置してもよかったと思う。HHKBシリーズはあのサイズ感も愛されてきたのではないだろうか? 個人的には手軽にバッグなどに収納できるサイズ感を死守してほしかったと考えている。

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