“寝だめ”はあまり効果ナシ?
動物は基本、寝ます。短眠と言われているキリンでさえ、1日に数分程度は深い眠りに入ります(諸説あるようですが)。「俺は寝なくても大丈夫だぜ! 昨日だって一晩中ゲームやってたぜ!」という方も、時間が経てば結局寝ます。そう、動物はみんな寝ます。
生まれてこの方、当たり前のように寝て当たり前のように起きていますが、そもそも“睡眠”って、改めて考えると面白いメカニズムですよね。昼間あれだけ活動している脳や体ですが、睡眠時はほぼほぼ休止状態です。しかも、睡眠に入る瞬間ってわかりませんよね? “気づいたら寝てた”ってやつです。布団に入って目をつぶり、あれこれ考えている間に寝ています。睡眠に入る瞬間の記憶ってなかなかないですよね? せいぜい起きたときに断片的な夢を覚えているくらいです(私は)。
そもそも、動物はなんで眠るんでしょうか? これについては、まだまだ謎が多く断言はできないようですが、“脳を休めるため”、“体を休めるため”、“記憶の整理”と主に言われています。最初2つはなんとなくわかりますが、記憶の整理って面白いですよね。嫌なことがあったときに「いいや! もう寝て忘れよう!」というときがありますが、記憶の整理とともに定着してしまったらちょっと嫌です。
確かに、人間は寝なくてもある程度は動けますが、必ず限界がきます。私も20年ほど前は、むしろ夜通し遊んでも大丈夫だったし、仕事や趣味で徹夜することもできました。寝なくてもなんとか次の日起きてもいられました。が、やはりどこかで、頭も体もしんどくなり、眠たくなります。自分は寝たくなくても、おのずと体がそれを欲するのです。
人間の覚醒と睡眠のサイクルは、体内時計と2つのホルモン、そして体温が主に担っています。体内時計を担っている“時計遺伝子”と、体温による『メラトニン(睡眠担当ホルモン)』、『コルチゾール(目覚め担当ホルモン)』という2つのホルモンの増加減少により、人は寝て、起きます。この時計遺伝子を管理している脳の“視交叉上核”が太陽の光によって刺激されることで、これら体内時計が働いているのです。
が、現代人、なかなかこのサイクルがうまく保てないのも事実です。不規則な生活による睡眠負債の増加、たまりたまるストレスによる不眠、スマホ見ながらの夜更かしで、この視交叉上核の働きが鈍ってしまうという話もあります。なお、平日とにかく頑張って、休日寝まくる、という“寝だめ”がありますが、実のところ、1~2日の寝だめでは、睡眠負債の返済はできないようです。この平日と休日の睡眠時間の中央時間の差を“ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ぼけ)”と言いますが、この差はその週だけでは解消できず、数週間はかかるそうです。
では、実際これ寝ないとどうなるんでしょうかね? 個人差はあると思いますが、私の場合、徹夜の次の日はとにかく頭がボーっとして、まずもっていつものパフォーマンスが出ません。
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