ワームホールでタイムトラベル可能に?
いくつ歳を取っても、気になるのが“過去”と“未来”。とりわけ大人は、歳を取れば取るほど「あの頃は良かった……」と過去に戻りたがっていて、子供は「大きくなったら○○になる!」と未来に夢と希望を持っているような気がします。個人的には、いつでも「ああ……この先一体どうなるんだろう……」と、良くも悪くも未来に目を向けていたいですが。
そんな時、タイムトラベルができれば、ちょっとばかし楽しくて気も楽になるかもしれません。どこぞのネコ型ロボットの居るご家庭なら、“タイムマシン”が机の引き出しに入っているのですが、まぁ現実世界にはありません。悶々として今を生きることしかできませんが、世の科学者たちは、このタイムトラベルを真面目に考えているのです。そしてこのタイムトラベル、『ワームホール』があれば、できるかもしれないのです。
ワームホールは、時空のある1点と、そこから離れた1点を直結するトンネルのような領域です。このワームホールの中を通ることができれば、光より速く移動できるかも……! という理論です。んん? どういう意味? ってな感じですが、リンゴと青虫を想像してください。リンゴの片側に青虫を置きます。その青虫が、リンゴの反対側に行くための方法は2つ。1つはリンゴの外周をはって反対に行く方法、そしてもう1つは、リンゴを食べながら、その中を通って反対に行く方法です。前者より後者の方が進む距離が短いですね! つまり、外をはうより、中を通った方が早く反対側に到着します。これが“ワームホール(虫の穴)”と呼ばれる所以です。
このワームホール、そもそも時空や宇宙とは別の研究をしている時に発案された概念でした。ですが、ブラックホールとその性質の研究が進められると、一方向に進む性質を持ったこのワームホールと関連させた“ホワイトホール”の存在が仮説として出てきたのです。
ホワイトホールは、その名の通り“ブラックホール”の逆の性質を持つ“仮説上の”天体です。ブラックホールがなんでも吸い込むのに対し、ホワイトホールは何でも吐き出します。そして、このブラックホールとホワイトホールをつなぐ通路がワームホールとされました。
ブラックホールの存在が視覚的にも証明された現在であれば、ホワイトホールとそれをつなぐワームホールも、かなり脳内でイメージがつきやすいですが、ホワイトホールはまだまだ理論上の存在の域を出ていません。と、いうのも、ブラックホールと真逆の性質を持つのであれば、ホワイトホールは物質を吐き出し続けて消滅していることになります。そのため、今この宇宙にホワイトホールは“ない”ことになりますが、“この宇宙にあった”ことの証明ができません。あったとしてもビッグバンより前になり矛盾してしまいます。
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