大自然の工芸品洞窟は男のロマン!?
30年前、ある小さな街にまことしやかな噂が流れました。
「おい、なんでもあの山には3つの洞窟があって、そのうちの1つには誰かが隠した財宝があるんだってよ?」 「マジか、でも崖の上から降りないと行けないんだろ?」 「しかも、ハズレの洞窟にはゲジゲジがたくさんいるらしいぞ?」
ウソかまことか、それを興奮気味に話す小学生男子。そしてそれを「ウッソだぁ!?」とはやし立てる女子、その女子の中で「行けるもんなら行ってみたい」と思っていたのは私です。本当にあったのかは今でも不明ですが。
洞窟、と聞くと、やっぱりドキドキするのが人のサガ!光が届かない狭い空間、けれどその先に何があるのかわからない期待感と恐怖感。その先にもし普段見たり手に取ったりすることのできないお宝があるかも! とか言われたら、危険を冒してでも行ってみたい! という人が出るのも自然な流れかもしれません。が、この地球上には“お宝に囲まれた洞窟”があるのです。その名も『クリスタルの洞窟』。RPGに出てきそうです!
メキシコ・チワワ州の鉱山地下300mにあるこのクリスタルの洞窟、2000年に発見された世界最大の“晶洞”です。洞窟自体の大きさは長さ27m・幅9mと、“洞窟”という定義でいくとコンパクトですが、中は巨大な“透明結晶”でいっぱいです。ほほう、クリスタルとはいえども、“水晶”ではないのですね。この結晶、大きなものでは長さ11m・直径4mと、日本だと“御神木サイズ”、つまり「おおっ、これは大きい!」と見上げて感心する大きさです。神秘的で、ヒトのサイズを簡単に超える結晶に囲まれてしばしその異世界の雰囲気にのまれたいところですが、この洞窟、なんと内部の気温は60℃近く、そして湿度も90%オーバーと、生身の人間は10分も居られません。熱中症指数が振り切れる気温と湿度です。その美しさにうっとりして魂抜け出そう……と思っていたら本当に抜けてしまう可能性があるので、洞内に入るには保冷材で体を冷やすなど適切な装備が必要です。
この洞窟、鉱山でトンネルを掘っていたときにたまたま見つかりました。掘っていていきなりこんなキラキラしたものが目の前に現れたら驚きますよね? しかも人間、自分にとって価値のあるものは欲しくなってしまいます。案の定、発見直後から盗掘騒ぎが相次いでしまい、責任者はこのトンネルをふさいで、鉄の扉を設置して洞窟を閉じたそうです。
しかしこんなに巨大な結晶がどうやってできたんでしょうか?
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