初出は12月17日発売、電子版1261号の掲載になります。
おなじみの2.4GHzレンジとWi-Fi
いやはや、すっかり年の瀬ですね! 年末が繁忙期という方もたくさんいらっしゃると思います。当方も独身時代、業務で疲弊し、クタクタになって会社を出ると、街の中はすっかり色とりどりのイルミネーション……ぼっちでそれを横目に見ながら、今日もコンビニで晩御飯を選び、ふと気づくと身も心も冷えている自分。けれど、そんな我が身を温めてくれるものが、家で待っていてくれました。そう、“電子レンジ”! 箱の中に食べ物を入れて、ボタンを何回か押せば、数分後には温めてくれるありがたい存在です。とくに肉豆腐とかね……食べたらそれだけで幸せになれるんだ……そのまま風呂に入って寝れば幸せになれるんだ……。
この電子レンジ、今やどこの家庭にもほぼ存在する家電です。我が実家には約30年位前に初導入されましたが、意外とその歴史は古く、日本での発売は今から60年前(1959年)のことです。“チーン”という、おなじみの合図とともに温かい食べ物を提供してくれる、単調な仕事をこなす家電ですが、実は“科学の集合体”なのです。以前お送りしたMRIに負けないくらいの科学が凝縮されています。
電子レンジ、英語で“microwave oven(マイクロウェーブ・オーブン)”という名の通り、電磁波であるマイクロ波をつかって、庫内の食べ物を温めます。どのように熱を発生させるかというと、食べ物の中にある水分、つまり“水分子”をこのマイクロ波で摩擦して温めるんですね。オーブンなどで焼く場合、熱のもとになるのは赤外線でこの場合対象の外側から温まりますが(赤外線はほとんどの物質で吸収されるため、表面から温まる)、マイクロ波の場合は水にしか吸収されないため、内側から温まっていきます。
そして電子レンジには特徴がもうひとつありますね!
むしろ現代だからこその特徴……それは“Wi-Fiとの干渉”。これ、電子レンジのマイクロ波の周波数(2450MHz)と、Wi-Fiの周波数(2.4GHz)がほぼ一緒だから起きる現象です。自宅で無線LANを導入されている方で、電子レンジの近くでスマホいじってたら表示が遅くなったとか経験ありませんか?「あー! あるあるある!」って方はこの干渉が原因かと思われます。
さて、この電子レンジ、いったいマイクロ波をどうやってあの小さい箱の中で発生させているのでしょうか? その元となるのが真空管のひとつである『マグネトロン』です。マグネトロン、という名前が示す通り、磁場を使った装置です。熱せられたマグネトロンの陰極から、くぼみのある陽極に向かう電子の流れが、磁力線の影響を受けて渦を巻き、電子がくぼみに入ると一定の周波数で振動するようになります。これが周波数2450MHzのマイクロ波です。
発生したマイクロ波は、庫内にある穴から出てきて、温める対象物に照射されます。もし家でこのコラムを見ている方は、ちょっと電子レンジを覗いてみてください。側面などに穴がありますよね? そこから強烈なマイクロ波が出ているのです。そのマイクロ波を閉じ込めるために、電子レンジは金属の箱型なのです。そしてマイクロ波は人体に影響を与えてしまうため、電子レンジはきちんと扉を閉めないと動作しないようになっていますし、さらに漏れないよう、マイクロ波を吸収するための網状のものが扉についていると思います。ちなみに、庫内に何も入っていない状態で電子レンジを作動させると壊れるのが早い、って言われることがありますが、何も入っていないと、マイクロ波が吸収されないため、エネルギーが減らない状態で再度マグネトロンにマイクロ波が入ってしまうのが原因です。
さて、マイクロ波を浴びた対象物……すなわち食べ物はどうなるのでしょうか?
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