おなかの調子が良くなるだけ?
前回に引き続き、冬になると目立ってくるものを今回もお送りしちゃいます。
もちろん、仲睦まじいカポー(カップル)とか、定番のクリスマスソングではございません。冬になると、ウイルスと同じくらいよく見聞きするもののひとつ……それは“乳酸菌”です。
乳酸菌、と聞くと、ヨーグルトとか、飲み物とかをすぐに思い出せるくらいポピュラーな菌ですね。ですが最近、特に冬が近づくこの季節、“免疫力をあげよう”や、“体調管理を続けよう”などのうたい文句とともに、その単語を聞くことが多くなったような気がします。個人的に、乳酸菌と言えば“おなかの調子がよくなる”というイメージしかなかったのですが、どうやらこれらのキャッチコピーを聞く限り、おなか以外にもいろいろと、乳酸菌は良い効果をもたらしてくれるようです。菌は菌でも、人間に良い効果をもたらす乳酸菌に今回は迫ってみましょう。
前回、ウイルスと細菌の違いについて述べましたが、乳酸菌は細菌の一種です。つまり細胞をもつ“小さな生き物”ですね。自然界の至る所に住んでいて、私たち人間の腸の中にも住んでいます。代謝によって糖類(炭水化物など)を分解し、乳酸を作る細菌たちを総称して“乳酸菌”と呼びます。なるほど、固有名詞ではないのですね。この乳酸は、おなじみのヨーグルトやチーズ、漬物などの発酵食品に含まれています。乳酸だけにやっぱり“酸”っぱい食べ物です。乳酸菌を摂ると、腸の中でさまざまな乳酸菌がその種類によって得意とする“良い働き”をし、その結果心身共に“良い効果”をもたらすのです。この良い効果から言うと、腸内環境の改善からの免疫力のアップ、はたまたストレスの軽減などがあります。なんか聞いているだけで元気になってきますねこれ。さてさて、どのような働きによってさまざまな効果をもたらしてくれるのでしょうか? そのメカニズムを良い効果ごとに見てみましょう。あっ、ここから腸の話になりますので、もしお食事中で気にされる方は、先に召し上がってくださいね!
まずは人間の腸内の環境はどのようになっているかを先に説明しましょう。この腸内環境ってよく聞きますが、具体的にいうと“腸内の菌のバランス”です。人間の腸の中には、いくつもの種類の細菌が住んでいて、それらは“善玉菌”、“悪玉菌”、“日和見菌”の3つのグループに分かれます。善玉菌は字のとおり、人間にとって良い効果をもたらす菌たちで、乳酸菌はこの善玉菌に入ります。そして、名前からして悪そうな“悪玉菌”、こちらは逆に、腸の働きを弱めたり、有害物質を作ったりとよろしくない効果をもたらします。有毒な大腸菌などが悪玉菌に含まれます。そして日和見菌は、その菌を持つ人間(宿主)が元気な時は何もしないのですが、体調の悪化や、ストレスなどでその抵抗力が弱まると、病原性を発揮し、悪玉菌同様腸内に悪い影響を与えます。体調悪化とともに悪いことをしだすって、なんだか性格がゆがんでいますな……。これらの菌は、菌の種類ごとに固まって腸壁にくっついています。これが実にお花畑に見えることから、このくっついている様子を“腸内フローラ”と言います。最初聞いた時、腸内のお花畑を裸足で走っている女の子を想像しましたが、あながち間違ってませんでしたね。実際腸を通り抜けていくのは女の子ではなく……(以下自粛)。この3つのグループのバランス、つまり腸内環境が崩れたり、整ったりすることで、人間の心身にいろいろな影響が生じてくるのです。
腸内における菌の理想の割合は、善玉菌:悪玉菌:日和見菌=2:1:7、とされています。実は、生まれてまもない赤ちゃんの腸内は、ほぼ善玉菌で占められています。新鮮な体だけありますね!
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