雷の“ドゴォオン”は落ちた音ではない!?
夏が近づくにつれ、今年もまた荒天があらゆるところで目立ってきている日本列島。30年ほど前は、荒天といえば台風でしたが、最近はそれに加え、ゲリラ豪雨や集中豪雨、竜巻など、油断すると甚大な被害になりかねない気象現象が多くなりました。
このお天気が悪くなる前に、光とともに太鼓を打ち鳴らす演出効果とともにやってくるものがあります。
「雷」です。お芝居でいえば、本編が始まる前のプロローグのようなイメージです。
よく考えれば、何もないところ(しいて言えば雲はありますが)に放電現象が起こるというのがまず不思議ですよね。そして、だいたいの大人は子供の頃に、親やおじいちゃん、おばあちゃんからこう聞かされたと思います。
「おへそ取られるから隠しておきなさい!」
……せれろんやまだは昔から雷好きでしたので、全然隠さずに窓に張り付いて雷鑑賞していましたけれど。大人になっていざ調べてみると、この“雷が鳴ったらおへそを隠す”には、実はきちんと理由があったのです! やはり先人の知恵はすごいです。
では、おへそを隠す理由を、雷のメカニズムを用いて説明しましょう。
そもそも雷ですが、実のところ、なぜ発生するかは解明されていません。ですが主に、現在は以下のように考えられています。
雷を発生させるのに必要なものは“雲”と“空気の対流”と“静電気”です。
まず、上昇気流(下から上に向かう空気の対流)が発生し、湿度も高いと、その下の方から小さな水滴ができて、もくもくと成長して雲になります。この雲は、上にいけばいくほど温度が低くなるため、冷やされて今度は小さな氷の粒になり、そして成長してちょっと大きめの氷の粒“あられ”になります。
雲の中は相変わらず、上昇気流で空気が対流しています。すると、このツブツブたちが互いに衝突して、“静電気”を発生させます。この時、プラスの電気を持った小さな氷の粒は軽いので雲の上の方に、マイナスの電気を持ったあられは重いので下の方に集まっていきます。そう、雲の中がプラスの部分とマイナスの部分に分かれていくのですね。
この差が大きくなると、普段電気を通さない(絶縁状態)の空気も限界にきてしまいます。空気は普段電気を通しません(毎日の生活で、仮に空気が電気を通したらえらいこっちゃです)が、この限界値を超えると、耐えきれず電子を放出します。この電子は次に、空気中の気体の原子とぶつかって、その原子をイオン化(プラスもしくはマイナスの電気を持った状態に変化)します。するとプラスの電気を持った原子が新しくまた電子を放出させます。そう、“電子”の“放出”、放電です。この放電が光として見えるのが雷なんですね!
そして雷に欠かせないのがその“音”です。「ゴロゴロゴロ……」とか「ドドドドーン」とか「ドガァァァァァァン」とか、激しさや雷雲との近さで変わるこの音、正体はなんと“衝撃波”なんです。落ちたときの音じゃないんですね。放電のときには熱も発生するのですが、この熱の温度はなんと2〜3万℃にもなり、周辺の空気を急激に膨張させるため、衝撃波が発生するんですね。衝撃波の後追いで音が来ますから、この音が雷鳴となって、あたり一帯にとどろくのです。光って音が鳴るまでのタイムラグで、雷が実際発生している場所がだいたい分かるのはそのためです。
5秒数えてから雷が鳴ったら、まだ遠くで鳴ってるから大丈夫だってばあちゃん言ってたっけ……。
それでは、いよいよおへそを隠す理由にせまりたいと思います。先ほどのメカニズムに出てきた“上昇気流”に、その理由が隠されています。
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