スマホの普及で最近低迷気味なコンパクトデジタルカメラの中で、安定した人気を保っているのが「高級コンデジ」と呼ばれるジャンルだ。
一般的なコンデジといえば1/2.3型くらいの小さめな撮像素子を採用するイメージだが、高級コンデジはボディーサイズは変わらずコンパクトなまま、ミラーレス機や一眼レフで採用されている大きなサイズの撮像素子を搭載した機種が多く、そこが人気となっている。
定義としてはかなり曖昧だが、コンパクトなボディーにちょっと大きめの撮像素子を採用して普通のコンデジより高画質で高機能、気合の入ったカッコイイデザイン。それでいて、レンズ交換はできない一体型というのが最近の主流だ。
デザイン面においてはクラシカル路線を狙っており、銀塩時代の古めのカメラのようないかにもカメラ風なデザインが受けているようだ。
コンパクトさ重視で性能を求めるならミラーレス一眼があるが、レンズ交換ができない一体型を選ぶ利点としては撮像素子に合わせたレンズチューニングが行なわれている点にある。
レンズ交換式の場合、レンズはカメラ本体との組み合わせで汎用性を取らなければいけない。今のカメラボディーに合わせた場合に性能がよくても将来的に出てくるボディーにも合わせる必要があるため、ある程度の汎用性を持たせなければならない。
一体型なら今の撮像素子とレンズの組み合わせだけを考えればいいので専用にチューニングが可能だ。
同じサイズの撮像素子なら一体型のほうが画質には有利だと考えられる。また、一体型ならばレンズと合わせて統一感が得られるのでデザインを重視するにも適している。
それに交換するためにはそのための機構を備えなければいけないが、一体型なら交換のための機構を省けるため、よりコンパクトにすることが可能でもあり、パーツが少なくなる分価格を抑えることも可能だ。
そんなさまざまな利点を持つ「高級コンデジ」の中から、魅力的だと思われる以下の5機種をピックアップしてみた。
・パナソニック「LUMIX DMC-TX1」
・リコー「GRII」
・ソニー「DSC-RX10M3」
・富士フイルム「X70」
・キヤノン「PowerShot G7 X MarkII」
高速連写から特殊加工まで多様な機能が満載
パナソニック「LUMIX DMC-TX1」
パナソニック「LUMIX」シリーズには「LX」シリーズという高級コンデジのラインナップがあるが、2016年3月に高倍率ズームを搭載した「TX1」が登場。
高倍率ズームを採用する「TZ」シリーズの機能を「LX」風のテイストに仕上げ、高級イメージを持ちつつ、高倍率ズームでの実用性を上げたのが本機だ。
基本デザインはTZシリーズに近く、ソリッドな面で構成されたデザインが特徴。後から発売された新しい「LX」が同様のデザインを採用していることから、パナソニックのハイエンドコンデジのイメージはこのようなデザインになっていくのだろう。
同社のミラーレス機である「GX」シリーズとはちょっと雰囲気の方向性が違い、クラシカルカメラらしくないのにカメラをイメージしやすいデザインは好感が持てる。
撮像素子は1型で有効画素数は約2010万画素。新開発の4CPU採用「ヴィーナスエンジン」により、質感、解像感が大幅に向上した。
回折現象の軽減や「マルチプロセスNR」では画面均一ではなく、部分的なノイズリダクション処理が可能なほか、「インテリジェントDレンジコントロール」では白飛びや黒つぶれを部分的に適切にコントロールし、コンデジでありながらも高画質な写真を記録できる。感度設定はISO 100から25600まで設定可能だ。
レンズは35mm判換算で約25mmから250mmに相当する光学10倍ズームの「EICA DC VARIO-ELMARITレンズ」を採用する。9面5枚の非球面レンズで、広角側での開放F値はF2.8と明るい。望遠側の開放F値はF5.9になる。
柔らかく滑らかなボケ味が味わえるレンズは広角側では5cmまで、望遠でも70cmまでのマクロ撮影が可能だ。また光学式の手ブレ補正機構が内蔵されているので望遠撮影でも安心感がある。
動画撮影はMP4形式の4K動画に対応し、AVCHDのフルHD動画も記録可能だ。PCでの再生や編集に向いたMP4形式に、テレビでの再生に向いたAVCHD形式と両方に対応しているのはありがたい。
秒間30コマ連写の「4K PHOTO」や
後からピントを選べる「フォーカスセレクト」も利用可能
特徴的な機能が「4K PHOTO」だ。秒間30コマの高速連写を4Kサイズ、約800万画素で記録することができる。
シャッターを押している間を連写する「4K連写」、ビデオカメラのようにシャッターを押して記録を開始し、再度押すことで記録を止める「4K連写(S/S」、シャッターを押した瞬間の前後1秒間を記録できる「4Kプリ連写」のモードから選択可能だ。
4K PHOTOモードは専用のボタンからワンタッチで呼び出せるほか、ドライブモードからの切り替えも可能になっている。
4Kで動画撮影した中から決定的瞬間を収めたフレームを抜き出せると考えると簡単だろう。一瞬のシャッターチャンスはなかなか収めることができないので機能として組み込まれていれば技術がなくても決定的な一瞬を記録することができるのでファミリーユースなどでも重宝する機能だ。
なお、4K動画の記録と4K PHOTOモードでは画面中央部がクロップされるので静止画の画角そのままでは記録できない点だけは注意しておこう。
同様の連写機能を使った「フォーカスセレクト」では、ピント位置を変えて連写し、後から好みのピント位置を指定できる機能だ。
ピント位置を手前にするか奥にするか、どの辺に合わせれば効果的なのかを考えている内にとりあえず撮影してしまえば、後からピント位置を選んで保存が可能で、撮影時に迷っても後でなんとでもできる機能だ。
最近のスマホにも似た感じの機能が組み込まれているが、TX1はちょっと力技でピント位置を変えながら連写しているので動いている被写体では効果は難しい。
しかし、連写した画像を全部チェックする必要はなく、再生画面ではピント位置のタッチで指定すればいいのは簡単だ。
4K PHOTOで記録した画像は画像合成も可能で「比較明合成」をすれば打ち上げ花火などもキレイに合成が行なえる。このあたりはいままでは技術がなければできなかったことが簡単に行なえるようになるので便利に使える機能だ。
LUMIXシリーズではお馴染みのクリエイティブコントロールや同機能を利用したパノラマ、フルオートのおまかせiAはもちろん搭載されているので、気軽な撮影からちょっと凝った撮影まで幅広く対応でき、表現方法も多く用意されている。
LUMIXシリーズで培った基本的な機能を始め、4K PHOTOでの技術をカバーしてくれる機能、4K動画撮影など、コンパクトなボディーに数多くの機能を搭載した魅力的なコンデジだ。
これ以降のページ(アスキー倶楽部会員向け)では、リコーの「GR II」やソニー「DSC-RX10M3」、富士フイルム「X70」、キヤノン「PowerShot G7 X MarkII」を紹介していく。