小型モバイルガジェットというと、最近ではスマートフォンやタブレットをイメージする方が多いはずだが、 それらは何の前触れもなく突然生まれたわけではない。過去に名機と呼ばれる数々の小型製品が市場をにぎわし続け、現在につながっている。 この連載では、そんな話題・人気となった小型モバイル機器、また関連する往事のトピックなどを紹介していく。
強力な8bit CPUを搭載しMicrosoft BASICが動く「パソコン」
エプソンの「HC-20」は、1982年に発売された8bit CPUを搭載するモバイルコンピュータだ。ただし、当時の8bitコンピュータは、BASICによるプログラミングを行なって使うもの。このHC-20も、標準では機械語モニターとマイクロソフト製のBASICが動作するだけだ。ディスプレイは、文字表示として20文字×4行と小さいものの、プリンタを内蔵しているため、たとえばBASICのプログラムリストなどを全部印刷して見ることができた。この内蔵プリンタは、インクリボンを使うインパクト方式で、そもそもエプソンは、キャッシュレジスタなどに内蔵されている小型プリンタのメーカーとして有名だったのだ。このHC-20は海外ではHX-20として販売されており、今でもeBayなどに出品がある。
当時、CMOS版のプロセッサが利用できるようになり、バッテリ駆動が可能な8bitコンピュータがいくつも発表された。翌年の1983年には、キヤノン「X-07」、NEC「PC-8201」、カシオ「FP-200」、パナソニック(当時は松下電器産業)「JR-800」、ソード「IS-11(サクセス)」(1984年)などがあった。発売タイミングからいうと、HC-20が、バッテリ駆動可能なモバイル8bitパソコンの先陣を切ったことになる。もっとも、BASICが動くモバイルデバイスとしては、俗にポケコンと呼ばれるシャープ「PC-1211」が1980年に販売されていて、モバイル8bitパソコンが最初というわけではなかった。HC-20は、ポケコンの上位クラスとして当時としては強力な8bit CPUを搭載しMicrosoft BASICが動く「パソコン」という位置付けだった。
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