第24回 and SORACOM

長寿時代に改めて気づくサービスの先進性と価値

高齢者をポットで見守る「みまもりほっとライン」 25年続く「サービスの温もり」とは?

大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: ソラコム

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「普通のポット」に見える3代目のiポットはどのように開発されたのか?

 みまもりほっとラインのサービスの肝となるのが、通信機能を持った象印のiポットである。2001年のサービス開始当時、組み込まれていたのは自動販売機に内蔵されていた通信機だった。3代目iポットの開発を手がけた象印マホービンの野村 忠司氏は、「当時はこれしかなかったんです。だから、ポットに通信機やアンテナを内蔵するために『下駄』を履かせた底上げ構造にせざるを得ず、見た目はスマートではなかったかもしれません」と語る。その後、2008年に2代目への移行を行ない、2023年に現行機種となる3代目が投入されることになった。

象印マホービン 生産開発本部 第三事業部 マスターエンジニア 野村 忠司氏

 3代目のiポットの開発構想はコロナ禍直前からスタートした。「ポットに下駄を履かせずに、通信機を電気ポットの中に組み込むというのが大前提」(野村氏)とのことで、普通のポットのフォルムで通信機能を内蔵する「組み込みIoT」の実現を目指した。しかも、電気ポットにおいて極力、新しい金型を起こさず、既存モデルを最大限に活かし、開発コストを抑える必要があった。

 この課題を解消するために実施したのが、電池で給湯する「コードレス給湯モデル」をベースとし、電池ケースのスペースを活用する方法だ。また、従来は底に配置されていた基板を製品側面に配置することにより、底にスペースを確保。それでも、通信機も基板もアンテナも小型化する必要があった。こうした課題を抱えつつ、3代目のiポットとシステムを含めた本格的な開発がスタートしたのは。2022年のことだった。

 3代目のiポットの通信に採用されたのが、IoTプラットフォーム「SORACOM」だ。野村氏は、「初代の開発担当者がIoTにも関心があるトップエンジニアで、以前からSORACOMは選択肢だったのですが、使う機会がなかなかなかった。3代目iポットの開発がスタートし、初代担当者から私に担当が替わりプロジェクトチームにジョインするタイミングで、SORACOMを使うことにしたんです」と語る。

 以前は、ありものの通信モジュールを使っていたが、今回は小型化したカスタム基板の開発にもチャレンジした。パートナーとして選んだのが、ソラコムの認定パートナーであるラトックシステムだ。また、「今ならクラウド活用も視野に入れたい」(野村氏)ということで、オンプレミスのバックエンドシステムをクラウド化する必要もあったため、クラウド開発のパートナーも参加。複数社での共同開発プロジェクトだった。

SORACOMコンソールでサービス稼働見守るのは朝のルーティン

 開発における苦労を聞くと、野村氏は「苦労しかなかった(笑)」と苦笑いする。これは基板やクラウドの開発を統合したシステムとして動かすための、IoTならではの産みの苦しみだ。「私としては、通信基板開発パートナーであるラトックシステムさんとも、社内の開発チームとも、クラウド開発やアプリのパートナーとも話さなければならない。この一気通貫をどのように実現していくかがプロジェクトの面白みであり、苦労でもありました」(野村氏)。

 もう1つの苦労は、圏外になって電波が入らないという事態を避けるためのアンテナ設計だ。「みまもりほっとラインはあくまでレンタルサービスなので、サービス利用者のiポットを旧モデルから新モデルに交換する必要があります。新モデルに切り替えたら、電波が入らないということを避けるため、電波強度を高める設計が必要でした」と野村氏は語る。

ポット内に見事に埋め込まれた基板

 SORACOMのサービスは、通信サービスの「SORACOM Air」とクラウド連携サービスの「SORACOM Beam」を利用している。SORACOM Beamはクラウドとして利用しているMicrosoft Azureの認証やプロトコル変換に利用している。「ソフトウェアもハードウェアも詳しく、SORACOMを熟知しているラトックシステムさんがきめ細やかに対応していただけたので助かりました」と野村氏は語る。

 苦労して開発した3代目のiポットは、見た目も、使い勝手も、普通の象印のポットだ。しかし、セルラー対応のSORACOMが入っているため、つねに通信可能だ。「私たちもSORACOMのユーザーコンソールを見て、通信を見守っています。朝のルーティンですね。みまもりほっとラインとSORACOMさんのコンソールって、なんだか似ていると思うんです」と別枝氏は語る。

左が通信機能を下部に取り付けた2代目、右が普通のポットと同じ3代目

 3代目のポットでは1対多で見守る機能が追加されている。今までは「両親の見守り」を前提として、見守り側と見守られ側が1対1だったが、1対多の通知が可能になったことで、マンションや介護事業者が複数の高齢者を見守るというB2Bビジネスも実現する。さまざまなビジネスプランが考えられそうだ。

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