第22回 シン・IoTの教室:ビジネスに活きる つながるモノの世界

導入におけるハードルを整理し、成果につなげるポイントを考える

「守り」から「攻め」のIoTへ 中小製造業が乗り越えるべき課題

大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 前回記事(「見える化」で終わらない産業IoT “攻めのIoT活用”実現への道のりとハードル)では、産業IoT、特に製造分野のIoTユースケースが、これまでの「見える化」から「予知保全」「自律制御」「自律最適化」へと進化していく道のりを説明しました。

 ただしその道のりには、中小製造業にとっては“難題”であるハードルも少なくありません。今回はそのハードルの乗り越え方について考えてみましょう。

 まずは「投資対効果(ROI)の不明瞭さ」です。現場担当者はしばしば「IoTを導入してデータを取得/分析すれば、業務改善や生産性向上につながるものが見えてくるはず」と、あいまいな期待をしてしまいます。しかし、会社の経営側は、導入コストの大きさ(金額)よりも「その投資によっていくらのリターンが期待できるのか」「投資は何年間で回収できる見込みか」を気にします。投資対効果がはっきりしていなければGOサインは出ず、IoT導入は進みません。

 「社内にIT/データ人材がいない」点も問題となります。現場課題を解決するためにどんなデータを収集/分析すれば効果的なのかを見いだすためには、ある程度のトライ&エラーが必要です。ここを外注するならば、成果が出る保証もなくコストがかさんでいくことになります。

 「現場からの抵抗」もしばしば生じる問題です。IoTの導入によって「業務の手順が変わる」「手間が増える」と現場の社員が感じる場合は、特に強い抵抗を受けることになるでしょう。

 IoT導入の担当者がこうしたハードルを乗り越えるには、正しい順序で、地道に取り組んでいくしかありません。

 まずは、経営層や現場が納得するような、具体的で明解な業務改善のストーリーを描くことです。これは「生産性を向上させる」「品質を改善する」といった抽象的な課題設定では不十分であり、具体的な現場課題から出発して、「○○の作業時間を月に△△時間短縮する」「○○のコストを年間△%以上削減する」といった具体的な目標を示す必要があります。

 そのためには、現場にどんな業務課題があるのかをヒアリングすること、その課題とIoT/データによる解決策を正しく結びつけることが大切です。後者については、同業種のIoT事例を参照することが大きなヒントになります。

 業務改善のストーリーを描くうえで、難しいのは「期待できる導入効果」の算定です。“やってみなければ分からない”面もありますが、それでは費用対効果を気にする経営層を説得できません。そこで、まずはPoC(概念実証)として小規模なトライアル導入を行い、効果測定をします。

 最初はスモールスタートできるよう、なるべく小規模な取り組みで済む課題を選びます。ここで挙げた成果が、そのままほかの課題解決にも「横展開」できるものが理想的です。小規模なトライアル導入でどの程度の成果が出たのかをきちんと数値化し、本格導入でどの程度の成果が見込めるのかまでをレポートできれば、経営層の説得材料になります。

 経営層と同様に、現場社員の理解と協力を得るうえでも「期待できる導入効果」を具体的に伝えることが大切です。IoT導入によって従来の業務プロセスが変わる、ひと手間増えることが避けられなくても、「月に○○時間の時間短縮が見込める」といったメリットが示せれば、説得材料になります。

 簡単にまとめると、IoTの導入担当者は現場、そして経営層と連携しながら、具体的な現場課題をひとつずつ解決し、そこで得られた成果や知見を横展開させながら、徐々に導入を拡大していくべし――ということになります。IoTは“魔法”ではありませんから、導入すれば何もかも一気に解決できることはありません。

 最近では、製造業向けに特化した、パッケージ化された産業IoTソリューションも多く登場しています。こうしたソリューションならば、導入実績もあるため効果の想定もしやすく、「IT/データ人材がいない」課題を抱える中小製造業にも適しているでしょう。

 政府としても“製造業DX”を支援する一環として、IT/IoT導入のための公的補助金を用意しています。これらもうまく活用しながら、IoTの取り組みを進めていくことをおすすめします。

■中小企業のIoT導入関連補助金施策(2026年4月現在)
・ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(中小企業庁)
・中小企業省力化投資補助金(中小企業基盤整備機構)
・デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)(中小企業基盤整備機構)

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