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業務を変えるkintoneユーザー事例 第304回

ノーコードツールを“仕事道具”として定着させた会津美里町・DX推進部の歩み

「この町から逃げたい」と悩んだ職員が、地方役場の“閉塞感”をkintoneで打ち破るまで

2026年04月01日 11時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp 撮影● 大谷/TECH.ASCII.jp

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“謎運用”が生まれて実感した4つの方針の重さ

 最初のkintoneアプリには、全職員が使え、必ず便利と実感できるよう、鉄板の「公用車運転日報」アプリが選ばれた。距離を記憶して急いで自席に戻り、共有の激重Excelに入力するといったこれまでの作業は、車内からスマホで入力するだけで完結するようになっている。「目論見通り、大成功でした。『こういうのを待っていた』『便利になった』と私たちの株は爆上り。そこからどんどんアプリが実装されていきます」(秋山氏)

公用車運転日報アプリ

 基本的には成功続きだったものの、もちろん失敗もあった。2024年冬、会津は災害級の大雪に見舞われる。家や車は埋まり、道路が塞がれ、防災担当課から全職員に応援要請が下った。秋山氏は、「kintoneの活躍する絶好の機会がきた」と意気込んだという。

 秋山氏が描いた仕組みはこうだ。防災担当課が要支援者の情報を、現場の担当者が被害状況と支援内容をkintoneに入力する。これにより、ロスのない情報共有の体制が構築でき、対策の協議もしやすくなるはずだった。

 しかし、マニュアルまで用意したアプリは、「よく分からないから無理」と一蹴されてしまう。それでも食い下がり、何とか導入されるも、蓋を開けてみれば“謎運用”に陥った。情報共有はチャットツールで行われ、課長が報告された内容をkintoneに転記するだけ。蓄積されたデータは誰も目を通さない。よかれと思って作ったアプリが、便利ではなく混乱を生んでいた。

せっかく作ったアプリは謎運用に

 この結果は、課長の優しさによるものだった。業務改善ラボの「kintoneを使ってほしい」という理想も、防災担当課の「緊急時だから慣れた道具が使いたい」という現実も、どちらも切り捨てられず一人犠牲になった。そこで秋山氏は、「知らず知らずに、自身らが立てた方針を破っていた」ことに気づく。「なるべくアプリを作らない」はずが無理やり作り、「静かに導入する」はずが押し付けていた。

 そこで4つの方針を守ることの重みを再認識し、以降は方針を遵守して地道にアプリを実装してく。そして1年が経ち、ほぼすべての課にkintoneが導入される。「もはやkintoneを否定する声はありません。勝どきを上げる時がきたのです」(秋山氏)

この1年で生まれたkintoneアプリの数々

kintoneは町の仕事道具となり、役場には新たな風が吹く

 それから、業務改善ラボではこれまでの成果を一つの冊子としてまとめる。沢山のアプリを載せて、ビジュアルでも楽しめるよう工夫した。これを全職員に配布すると大反響で、kintoneに対する問い合わせも殺到した。「この瞬間、kintoneはこの町の仕事道具になりました」と秋山氏。

業務改善ラボではこれまでの成果を一つの冊子

 当初の目論見通り、kintoneが使われるたびに、業務が見直されるようになった。そして、職員からは前向きな話も増えてきた。

 秋山氏は、「たった1年でこれだけ文化や風土を変革できました。閉塞感も、少し壊せたかもしれません。本当に奇跡のような1年でした」と語り、「逃げたい気持ちはなくなり、この町がもっと好きになりました」と締めくくった。

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