業務を変えるkintoneユーザー事例 第303回
事務作業の削減と業務の見える化で“本来の仕事”を取り戻す
市民の命につながる業務改善 舞鶴市・消防本部が“現場第一”のkintone活用で変えたもの
2026年03月24日 16時00分更新
コロナ禍を契機に“自治体”導入が加速した、ノーコード・ローコードツール「kintone」。現在では、約460自治体(2025年時点)が同ツールを活用し、職員主導の課題解決に取り組んでいる。
2025年に初開催された「kintone hive government」では、こうした自治体におけるkintone活用のノウハウが共有された。本記事では、参加者投票でAWARDを獲得した京都府の舞鶴市消防本部のプレゼンを紹介する。
消防本部16年目の塩田裕介氏と10年目の飯尾健太氏が登壇し、現場第一のアプリで事務作業を減らし、市民の命を守るための訓練時間を捻出したkintone事例について披露している。
システム崩壊の危機でDXは振り出しに
京都府の中北部に位置し、約7万5000人が暮らす自然豊かな街、舞鶴市。今回のkintone事例の舞台は、同市の消防本部である。128名の隊員が市民を災害から守るべく、日々、現場活動や訓練を行っている。
隊員がこうした活動以外の時間で向き合っているのが「事務作業」だ。消火から救急、救助、調査、訓練 ―― あらゆる活動の後には必ずデータ入力や報告書作成が待っている。
状況改善を目的に業務管理システムを導入した消防本部だが、 ある出来事をきっかけに「システム崩壊の危機」に見舞われる。それは、通信指令体制が広域化され、近隣の119受信や出動指令が集約されたことだ。この仕組みで、人的にも財政的にもスリム化が進み、出動の迅速化が図られている。
一方で、業者の切り替えに伴い、業務管理システムが使用不能になってしまう。塩田氏は、「これまで進めてきたDXが“振り出し”に戻り、まさに崖っぷちでした」と振り返る。
新しい業者は管理システムを扱っておらず、Excelでのシステム化も試すも、複雑な操作が現場には合わない。そこで、舞鶴市のデータベースを活用する方針となるが、こちらも利用終了が近いことが判明する。救いの手となったのが、舞鶴市の「kintone1年間無料キャンペーン」への参加であり、消防本部にも「どんどん試して欲しい」と声がかかった。
“できないで諦める”のではなく“できるやり方に変える”
消防本部の現場は当初、kintoneの活用に「なんでそんなことせなあかんのや」「電子決済やペーパーレスもやらんなんのに」と冷ややかだったという。それでも、所長によるトップダウンでアプリ開発はスタート。その結果、最初に生まれたのが「アルコールチェックアプリ」である。
これは、 法改正で義務化されたアルコールチェックを、スマホだけで登録できるシンプルなアプリだ。従来のPCを立ち上げ、データベースにアクセスし、測定結果を入力して、上司に報告するという手間は大幅に効率化され、入力ミスも減った。
「このアプリは、触ってもらうことに重視しました。『使いやすいね』『ええやないの』といった声が、今後のアプリ作成につながりました」と飯尾氏。
そして、本丸である業務管理システムのアプリ化に着手するも、開発は難航する。舞鶴市では、属人化を避けるため、プラグインの利用を控える方針があったからだ。「以前のシステムと同じようなものを作ろうとした結果、標準機能で再現するのは無理でした」(飯尾氏)
一方で、アルコールチェックアプリは、隊員の声を丁寧に拾い上げ、使い勝手の向上や操作の簡素化が進んでいった。こうした経験を通じて、「できないで諦めるより、できるやり方に変える」という意識が根付き、必要であればプラグインも活用するようになる。例えば、「車両運行データアプリ」では、関連レコードの最新データ(走行距離や燃料残量)を取得する仕組みを構築した。
そして、使い勝手が良く、操作を簡素化したアプリの集大成として、「業務管理データアプリ」を完成させた。同アプリを“入力作業の入口”に据え、他のアプリと連動させることで、活動後に発生するあらゆるデータ入力のプロセスをkintoneで一本化している。
例えば、訓練後に日誌を作成する場合は、同アプリに主要項目を入力後にボタンを押すだけで、必要な情報が訓練日誌アプリに転送される。
さらに、点在していた決裁を一本化する「業務日報アプリ」も作成した。このアプリは、アルコールチェックや訓練日誌、車両運行データなど、さまざまなアプリの情報がひとつの画面で把握できるよう設計されている。
これにより、上司による決裁確認がスムーズになり、業務全体の見える化も実現した。所属別の訓練実績も分析可能になり、出動数の調整といった労務管理にも寄与している。
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