市居愛さんに聞く「脳科学・心理学が証明するジャーナリング効果」自分で決断できる人生へ

文●源詩帆  編集/山野井春絵

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 前回の記事(シリーズ1/3)では、ジャーナリング(書く習慣)で「世界一周」「海外移住」を実現した市居愛さんの体験談をご紹介しました。
  では、なぜ「ジャーナリング」は、人生の決断を後押しできるほどの効果があるのでしょうか。今回は、脳科学・心理学の観点からジャーナリングの仕組みを解説します。さらに、「やりたいことがわからない」と悩むミドル世代女性に向けて、市居さんが実践してきた「自分の本音の見つけ方」のヒントもご紹介します。(シリーズ2/3)

情報過多の時代にこそ必要な「自分と向き合う時間」

 日記が事実の記録であるのに対し、ジャーナリングは感情や考えをノートに書き出す思考の整理法です。IT技術やスマートフォンなどが発展した現代になぜ、ジャーナリングが求められているのか、ジャーナリングでご自身の夢を叶えてきた市居さんに話を伺いました。

「情報が溢れるデジタル時代、SNSで他人と比較し、さまざまな情報に振り回され、現代人は疲れているといわれています。海外では瞑想やリトリート(休息の旅)が流行し、ジャーナリングを通じて考えを鎮める時間を大切にする人が増えました。

 何が正解かわからない多様な社会で、自分にとっての正解を見つけるには、自分に問いかけたり、気持ちを書き出したりすることが重要です。IT機器から離れる時間にもなるジャーナリングが海外でも再評価されています」

脳科学と心理学が証明する5つの書く効果

 パソコンやスマートフォンでもメモは可能です。それでもなぜ、手書きのジャーナリングが選ばれるのでしょうか。

1. 書いた内容に向かって脳が動き出す

 「目標や気持ちを『書く』と、頭の中にあった考えが外に出て、何を大事にしたいのかがはっきりしやすくなります。実際に、アメリカの心理学者ゲイル・マシューズ博士の研究では目標を書いた人のほうが、書かなかった人よりも達成に向かいやすかったといわれています。また『書く』動作で、脳の『網様体賦活系(RAS)』が働き始め、RASによって書いた内容を実現しようと意識が向き、GPSのようにその方向へ向かい始めるという考え方もあります」

2. 脳の暴走を止める「感情のラベリング」

 「脳には『扁桃体』という部分があり、不安や恐怖を感じると反応します。ストレスが溜まると扁桃体が暴走し、アラームが鳴りっぱなしのような状態になります。その時に『イライラする』『悲しい』と書き出すと感情にラベルが貼られ、『今、イライラしているんだな、悲しいんだな』と客観的に認識できるようになります。

 すると脳の『前頭前野』が動き出し、扁桃体の暴走が静まります。前頭前野は脳のコントロール機能を担っており、感情のラベルを認識することで、自分を鎮めようとしてくれます。『書くと落ち着く』という方が多いのはこのためですね」

3. 「一体化」から抜け出し、客観視できる

 「『私はダメだ』と思うと、『私はダメな人そのもの』と一体化してしまいます。書くことで『今調子が悪いだけで、私はダメな人ではない』と、その一体化を解き、自分を客観視できるようになります。心理学では、このように自分の経験や感情を少し引いた視点から見つめることを、自己距離化といいます」

4. 自己対話で「本音」に気づく

 「自己対話の習慣化も可能になります。『本当はどうしたい?』と問いかけても、初めはわからないこともありますよね。でもそれでいいんです。『全然わからない。何も出てこない。混乱していて嫌だ』と書いた後、『なんでそんなに混乱しているの? 何がそんなに混乱させているの?』と問うことで、悩みの輪郭がはっきりしてきます。

 ここで大事なポイント。書き始めたら手を止めずに書き続けてみてください。手を止めると頭で考え始め、綺麗に書こうとしたり、答えを出そうとしてしまいます。私も未だに『うーん』としか書けないこともあります。でもそうやって書き続けることで『あ、そっか、私こうしたいかも』と、直感的に答えが出てきます」

5. 1週間書き続けると、前向きになる

 「イライラしたり苦しかったりする時は、『もう本当に最悪、はぁ苦しい』のように、とにかく嫌なことだけ書いてもいいので、1週間は書き続けてみてください。

 アメリカの心理学者ジェームス・W.ペネベーカー博士の有名な研究である『エクスプレッシブ・ライティング』では、4日連続で20分間、ショックだったことを書き出すもので、数ヶ月後の追跡調査では、事実だけ書いていたグループより、感情を全て書いていたグループの方が、ストレスが減り免疫機能が向上していました。

 実際に私も、辛いことを全部書き出した後には『じゃあこれからどうしようか』という前向きな気持ちが生まれてきます。悩みの元凶は変わっていなくても、自分の思考は変えることができるんです」

ミドル世代女性が抱えやすい「やりたいことがわからない」という悩み

 願望実現とお金の専門家として、約1万人の女性の悩みに寄り添ってきた市居さん。多くのミドル世代女性の悩みには共通点があるといいます。

 「『自分のことを後回しにしてきた』というミドル世代女性がとても多いです。昭和に育ち、平成を生きてきた世代。母、妻、娘という複数の役割を担い、自分より子どもや親を優先してきた方が多く、それが当たり前になっています。

 ミドル世代後半になり、せっかく子どもの手が離れ時間に余裕が生まれても『私の人生、何がしたいんだっけ?』と悩んでしまう方も少なくありません。

 そんな時は、書きながら自分と話し始めてみる。すぐに答えが出なくていいんです。『今まで忙しかったね』『本当によく頑張ってきたね』と自分をねぎらうことから始めてもいい。そこから『仕事がしたいのか、旅行に行きたいのか』など、これからの人生をどう築いていきたいか自分と対話していくことが大切です。

 実際、やりたいこと100個を書き出すワークでは『そんなに出ません』と言われることも多い。でも小さなことでいいんです。『カフェでコーヒーが飲みたい』でも構いません。一個ずつ叶えていくと、自信がつき、さらにやりたいことも出てきますよ」

就職、家の売却を決断した女性。「自分で何でも決められるように」

 ジャーナリングを習慣化した市居さんのクライアントの変化について具体例を教えてもらいました。

 「あるクライアントは、子育てが落ち着いた頃、夫が急に会社を辞めて収入が半減しました。それまで主婦だった彼女は、不安でいっぱいの中、ジャーナリングを続けるうちに『ちゃんと自分で稼ぎたい』と思うようになり、正社員になることを決意。昔から好きだった洋服関係の仕事に就き、さらに大きなローンを抱えていた持ち家まで売却したんです。

 『ローンもなくなって、心がすごく軽くなった』と話す彼女。就職も家の売却も、想像すらしなかった選択肢でした。ジャーナリングで自分の気持ちがわかってきたことで、思考がアップデートされ、自分の道を選べるようになったんです。最終的に『市居さんに相談しなくても全部自分で決断できるようになってきた』といわれた時、これがジャーナリングの真の効果だと感じました」

 自分で考え、自分で決め、行動できるようになる。本質的な行動変容まで可能にするジャーナリングですが、具体的な進め方も気になるところ。次回はジャーナリングの具体的な手法について話を伺います。
 

Profile:市居愛

いちい・あい/株式会社マザーミー代表、作家、2児の母。

31歳のときに育児と仕事のストレスから身体を壊し、メニエール病を発症。 リーマンショックの影響で夫の会社も倒産。子どもを抱えながら、夫婦無職でお金がない恐怖を体験する。 「お金の通り道」を整えることで、ムダな出費が自然と減り、お金が貯まりだすことに気づき、その経験をもとに刊行した著書『お金を整える』(サンマーク出版)はベストセラーに。 現在は、ジャーナリングを活用した「人生を変える気づき」を届ける活動に力を入れている。 願望を現実にする考え方や、自分らしい生き方を見つける方法を伝え、これまでに1万人以上の女性が夢を叶えるサポートをしてきた。講演・セミナーも多数開催。 著書 『お金を整える』(サンマーク出版) 『「お金じょうずさん」の小さな習慣』(PHP研究所) 『ヒル先生、「思考は現実化する」って本当ですか?』(PHP研究所)など


市居さんのInstagramはこちら。

 

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