職員自らがkintoneアプリを作成し業務改善、そのノウハウや成果を共有
1市で悩むより、3市で共有。合同でDXリーダー育成に取り組む三島市・伊豆の国市・伊豆市
2026年03月18日 08時00分更新
伊豆市(上下水道課、環境衛生課)の発表
○給水装置工事申請業務(上下水道課)
・課題:水道を新たに使い始める際の工事申請・設計審査業務では、申請書の内容を「受付簿」や「承認通知」など各様式に1つずつ転記入力したうえで、プリントアウトして紙ベースで審査/決裁フローに回していた。同じ内容を何度も入力する手間と時間がかかるほか、職員が現場に出ているケースが多く紙書類を回覧する決裁フローでは滞る、申請者から問い合わせがあっても担当者不在ならば処理状況が不明、といった課題があった。
・解決策:申請受付後の情報をkintoneに登録し、審査/決裁を行う職員にオンラインで情報を共有、複数人が並行して審査/決裁を進められるフローに変更。決裁時間の短縮につながった。また、kintone+PrintCreator(トヨクモ)を使って、承認通知などの様式でのPDF出力を可能にした。担当者が不在でも、ほかの職員が処理状況をkintone上で確認できる。
・効果検証:1件あたり合計150分の短縮が可能。年間90件=約225時間の時間削減(人件費換算で約30万円)が見込める。
○問い合わせ・苦情対応業務(環境衛生課)
・課題:ごみ、動物、公害、墓地などに関する処理指導や許可業務を行う環境衛生課では、電話対応だけでも毎月500~600件(年間で6000~7200件)に及ぶ問い合わせや苦情を受け付けている。しかし、受付から解決までに時間がかかる、事態を把握できている担当職員以外では対応しづらい、業務の引き継ぎや情報共有ができていないといった課題があった。
・解決策:すべての原因は「記録簿が一元化できていないこと」にあると考え、kintoneアプリで記録簿を開発し、受付内容を記録するようにした。これにより、過去の記録を容易に参照できるようになり、業務の引き継ぎや共有も効率化された。過去の記録が参照できるため、受付業務のマニュアル化が可能になり、苦手意識を持つ職員の心理的負担も軽減される。
・効果検証:1件あたり合計30分の短縮が可能。月70件=約35時間の短縮効果(人件費換算で5~6万円)が見込める。
発表の最後に、研修を通じて考えた伊豆市としての理想像は「紙からクラウドへ 一歩先の伊豆市へ」だとまとめた。業務の効率化を通じて、住民サービスの向上などに充てる新たな時間を生むことで「より魅力のある伊豆市に向かっていく」こと、そのために効率化の取り組みを市庁内へ少しずつ広げていきたいと語った。
伊豆の国市(農林課、長寿介護課)の発表
○猟友会報償費集計業務(農林課)
・課題:猟友会が行う有害鳥獣駆除活動に報償費を支払う業務において、猟友会から紙ベースで提出される月報を、支払いルールに基づいて手作業で「添削」し、Excelに転記したうえで決裁している。この作業には時間がかかるうえ、特定職員しか対応できない。また、報酬費の集計は猟友会/班/個人と階層構造になっており、複雑な集計の中で人的ミスが起きないように、というプレッシャーも強い。
・解決策:提出された月報の内容をkintoneに入力するだけで、ルールに基づく報償費が自動的に算出されるようにした。職員による添削/転記作業がなくなったことで、集計ミスがなくせたほか、支払いまでのスピードも向上。さらに、集計作業がどの職員でも対応できるようになったため、組織としての柔軟性が生まれた。
・効果検証:1カ月あたり135分の短縮が可能。年間12回=約27時間の短縮効果(人件費換算で4.5万円)が見込める。
・今後の改善案:現状では紙ベースでの月報提出を維持しているが、将来的には猟友会側でのモバイル入力も視野に入れていく。
○介護保険料還付の相続人調査業務(長寿介護課)
・課題:身寄りのない高齢者が亡くなり、介護保険料の還付を受ける親族(法定相続人)が不明の場合は、調査のため支所や他の自治体へ戸籍照会作業を行い、相続人に連絡を取る必要がある。この調査作業において、同じ内容の転記を何度も繰り返すことになり、記入漏れや誤記への不安、精神的負担が大きい。また、現在は月に4~5件の発生だが、これから親族と離れて暮らす高齢者が増えて調査件数が増加していくのは確実であり、対策が必要。
・解決策:kintone+PrintCreatorを使って「管理台帳」と「戸籍照会依頼書の入力フォーム」を作成。管理台帳に入力した内容が、全国共通の様式や市役所独自様式など、さまざまな様式で出力できる仕組みを作り、転記作業をほぼなくした。
・効果検証:照会作業1件あたり5分の短縮が可能。年間135件=約11.2時間の短縮効果(人件費換算で1.6万円)が見込める。
まとめとして、伊豆の国市が目指すものは「事務作業に追われるのではなく、職員が住民一人ひとりにしっかりと向き合える環境」だとコメントした。そのために「楽しく、無理せず、自分らしく、職員が笑顔で働き、住民により良いサービスを届けられるDXを、一歩ずつ進めていく」と未来への抱負を述べた。
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各市職員の発表に対する感想を聞いたところ、三島市 市長の豊岡氏は「受講生の皆さんが本当に意欲的に(アプリを)作り上げていて、プレゼンテーション力もすばらしいと感じた。こういう若い人たちが将来の市役所を背負って立つのはとても嬉しい」と語った。
伊豆の国市 市長の山下氏も「研修を受けた結果、実際に(現場業務で)使えるものが出来ている。今日の6つの発表、すべてが使えるものになっていること、それが本当にすばらしいと思う」と高く評価した。
また、伊豆市 CIO補佐官の中村氏は「技術は日進月歩で進化しており、kintoneもAIが取り込まれたり、他のサービスと連携したりすることで、より大きなことができるようになるはず。そうしたところも含めて、もっとみんなで切磋琢磨しながら、成長を続けていけるようにしたい」とコメントした。
3氏とも、今回の合同DX研修のような取り組みは、ほかの自治体では聞いたことがないと話す。「規模的には、3市というのがちょうどいい」(山下氏)。庁内デジタル化の推進、DX人材育成に悩む全国の自治体に、こうした取り組みもひとつのアイデアとして広まってほしい。















